2023年10月20日金曜日

アガサ・クリスティー作「パディントン発4時50分」<英国 TV ドラマ版>(4:50 from Paddington by Agatha Christie )- その3

Harper Collins Publishers 社から出版されている

「パディントン駅発4時50分」のペーパーバック版の表紙には、

ビル・ブラッグ氏(Mr. Bill Bragg)によるイラストが、

列車の乗車券の形に切り取られているものが使用されている。


英国の TV 会社 ITV 社が制作したアガサ・メアリー・クラリッサ・クリスティー(Agatha Mary Clarissa Christie:1890年ー1976年)作「パディントン発4時50分(4:50 from Paddington → 2022年12月20日付ブログで紹介済)」(1957年)の TV ドラマ版である「Agatha Christie’s Miss Marple」の第3話(第1シリーズ)「パディントン発4時50分」の場合、アガサ・クリスティーの原作に比べると、物語の展開上、以下の違いが見受けられる。


パディントン駅の屋根(その3)
<筆者撮影>

(4)

<原作>

ミス・ジェーン・マープルの依頼に基づいて、ラザフォードホール(Rutherford Hall)に住むクラッケンソープ家(Crackenthorpe family)の家政婦として潜入した若いベテラン料理人であるルーシー・アイルズバロウ(Lucy Eyelesbarrow)が、数日後、ラザフォードホールの納屋の中にある石棺内に、エルスペス・マギリカディー夫人(Mrs. Elspeth McGillicuddy)によって目撃された女性の死体を発見した後、


*ルーシー・アイルズバロウが料理したカレー内に投入されていた毒によって、アルフレッド・クラッケンソープ(Alfred Crackenthorpe - クラッケンソープ家の四男 / 無職で、裏社会の仕事に従事)が死亡


*ロンドンに戻ったハロルド・クラッケンソープ(Harold Crackenthorpe - クラッケンソープ家の三男 / 会社重役)が、デイヴィッド・クィンパー医師(Dr. David Quimper - クラッケンソープ家の主治医)から送られてきたと思われる錠剤に混入していた毒により死亡


と言う事件が、立て続けに発生する。

<TV ドラマ版>

基本的に、原作と同じ展開をしている。


(5)

<原作>

ルーシー・アイルズバロウが、ミス・マープルとセイロン島から戻って来たエルスペス・マギリカディー夫人の2人をラザフォードホールへ招待して、アフタヌーンティーを振る舞おうとする。

ラザフォードホールに到着すると直ぐに、ミス・マープルは、エルスペス・マギリカディー夫人に対して、洗面所へ行くように指示した。ミス・マープルは、魚のペーストのサンドウィッチを食べている際、魚の骨が喉に引っかかったような振りをする。同席していたデイヴィッド・クィンパー医師が、ミス・マープルの様子を診ようとしたところへ、エルスペス・マギリカディー夫人が、洗面所から戻って来た。

そして、デイヴィッド・クィンパー医師の両手が、ミス・マープルの喉のところにかかっている現場を見たエルスペス・マギリカディー夫人は、思わず、叫び声を上げる。

「この人が、あの列車に乗っていた犯人です!(But that’s him - that’s the man on the train.)」と。

このように、ミス・マープルが、デイヴィッド・クィンパー医師を犯人として指摘するのは、「ラザフォードホール」においてである。

<TV ドラマ版>

ミス・マープルが、デイヴィッド・クィンパー医師を犯人として指摘する場所が、「ラザフォードホール」から「パディントン駅午後4時50分発の列車内(エルスペス・マギリカディー夫人が乗車した列車と同じ)」へと変更されている。


英国 TV ドラマ版の物語終盤、

ミス・マープルが、パディントン駅から午後4時50分に出発する列車内で、

犯人を指摘する場面の座席配置図


*クラッケンソープ家の次女イーディス・クラッケンソープ(Edith Crackenthorpe / 故人)の夫で、元戦闘機パイロットであるブライアン・イーストリー(Bryan Eastley)

*クラッケンソープ家の長女エマ・クラッケンソープ(Emma Crackenthorpe)

*デイヴィッド・クィンパー医師


の3人が、列車の進行方向に背を向けて、腰掛ける。


*ミス・マープル

*ルーシー・アイルズバロウ

*クラッケンソープ家の次男で、画家であるセドリック・クラッケンソープ(Cedric Crackenthorpe)


の3人が、列車の進行方向に向かって、腰掛ける。


その列車内において、ミス・マープルは、サンドウィッチを食べている際、喉に詰まったような振りをする。同乗していたデイヴィッド・クィンパー医師が、ミス・マープルの様子を診ようとしたところ、ミス・マープル達が乗っている列車に並走する列車に乗っていたエルスペス・マギリカディー夫人が、デイヴィッド・クィンパー医師を犯人として指摘するのである。


パパディントン駅のプラットフォームに設置されている大時計(その4)
<筆者撮影>

(6)

<原作>

原作の場合、ブライアン・イーストリーとルーシー・アイルズバロウの2人が、恋愛関係に発展していく。

<TV ドラマ版>

一方、英国 TV ドラマ版の場合、ブライアン・イーストリーは、ルーシー・アイルズバロウに対して、何度も好意を見せるが、最終的に、恋愛関係に発展して行くのは、ミス・マープルの甥であるトム・キャンベル警部(Inspector Tom Campbell - ミス・マープルは、彼の家に捜査拠点を構えて、ルーシー・アイルズバロウに対して、捜査の指示を行う)とルーシー・アイルズバロウの2人である。

物語は、ミス・マープル、ルーシー・アイルズバロウとトム・キャンベル警部の3人が、一緒にクリスマスを祝う場面を以って、終わりを迎える。


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