2023年8月2日水曜日

ハーバート・ジェイムズ・ドレイパー作「イカロスへの哀悼」(The Lament for Icarus painted by Herbert James Draper)

テイト・ブリテン美術館に展示されている
ハーバート・ジェイムズ・ドレイパー作
「イカロスへの哀悼」

(1898年)
Oil paint on canvas
182.9 cm x 155.6 cm
Presented by the Trustees of the Chantrey Bequest in 1898


英国のヨーク(York)出身の作家で、フリーランスの編集者でもあるティム・メージャー(Tim Major)が2021年に発表した「シャーロック・ホームズ / 背中合わせの殺人(Sherlock Holmes / The Back to Front Murder)」において、ロナルド・バイザウッド(Ronald Bythewood)と言う60代の男性が、National Gallery of British Art <テイト・ブリテン美術館(Tate Britain → 2018年2月18日付ブログで紹介済)>の南側の入口の前にある水飲み場から水を飲んだところ、不可解な死を遂げる。そして、推理作家で、次回作のために、空のカプセルで彼を毒殺する実験を実行したアビゲイル・ムーン(Miss Abigail Moone)が、殺人犯として、スコットランドヤードに疑われたため、シャーロック・ホームズに対して、助けを求める。

ロナルド・バイザウッド殺害の容疑者となったアビゲイル・ムーンは、ホームズとジョン・H・ワトスンを連れて、National Gallery of British Art 内を案内しながら、毒殺されたロナルド・バイザウッドの当日の行動を説明する。その際、彼ら3人が通り抜けて行く部屋の壁に掛かっている絵画の一つについて、「a fallen Icarus」と言う記述が見られる。


この絵画は、実在のもので、英国の古典主義の画家であるハーバート・ジェイムズ・ドレイパー(Herbert James Draper:1863年ー1920年)が描いた油絵の「イカロスへの哀悼(The Lament for Icarus)」(1898年)である。

なお、ハーバート・ジェイムズ・ドレイパーは、ヴィクトリア朝時代から20世紀最初の20年間にかけて、活動している。


1890年代、ハーバート・ジェイムズ・ドレイパーは、ギリシア神話に題材を求め、1898年、イカロス(Icarus)をテーマにして、「イカロスへの哀悼」を描いた。

イカロスは、蜜蝋で固めた翼を使って、自由自在に空を飛翔する能力を得るものの、太陽に接近し過ぎたために、蜜蝋が溶けて、翼が外れた結果、空から墜落して、死を迎えてしまう。そして、海の中から突き出ている岩の上に落下して亡くなったイカロスを囲むようにして、嘆き悲しんでいる妖精達が描かれている。

このイカロスの神話は、人間の傲慢さやテクノロジーを批判する物語として、有名である。


「イカロスへの哀悼」は、制作年である1898年に、英国の彫刻家だったサー・フランシス・レガット・チャントリー(Sir Francis Leggatt Chantrey:1781年ー1841年)の遺言により、ロイヤルアカデミー(Royal Academy)に寄付された財産で設立された財団(目的:毎年、英国内で制作された最も優れた絵画 / 彫刻を購入の上、国へ寄付)が購入して、テイト・ブリテン美術館へ寄贈している。

その後、1900年に開催されたパリ万国博覧会において、金賞を獲得。


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