2023年8月22日火曜日

アガサ・クリスティー作「死者のあやまち」<小説版(愛蔵版)>(Dead Man’s Folly by Agatha Christie )- その2

2023年に英国の HarperCollinsPublishers 社から出版された
アガサ・クリスティー作「死者のあやまち」の
愛蔵版(ハードカバー版)の裏表紙
(Cover design by HarperCollinsPublishers Ltd. /
Cover illustration by Becky Bettesworth) -
アガサ・クリスティーの夏期の住まいである
デヴォン州のグリーンウェイが、ナス屋敷として描かれている。
また、物語の終盤に、エルキュール・ポワロが、
フォリアット夫人に対して語ったセリフが、刻印されている。


アガサ・メアリー・クラリッサ・クリスティー(Agatha Mary Clarissa Christie:1890年ー1976年)作「死者のあやまち(Dead Man’s Folly)」(1956年)のストーリーは、以下の通り。


ある日、ロンドン市内にあるエルキュール・ポワロのオフィスにおいて、電話が鳴り、ポワロの秘書であるミス・レモン(Miss Lemon)が、受話器をとる。ポワロに電話をかけてきたのは、人気推理作家で、昔なじみのアリアドニ・オリヴァー夫人(Mrs. Ariadne Oliver)であった。電話はデヴォン州(Devon)からで、オリヴァー夫人は、ポワロに対して、「直ぐこちらに来てほしい。」と頼み込む。そこで、ポワロは、早速、ロンドン発の列車でデヴォン州へと向かう。


ナスコム駅(Nassecombe Station)からオリヴァー夫人が滞在しているナス屋敷(Nasse House)へ迎えの車で向かう途中、ポワロは、外国人旅行者の女性二人(オランダ人とイタリア人)を車に乗せて、近くのユースホステルまで送ってあげる。この辺り一帯は、外国人ハイカー達に人気の場所で、後でも、彼女達はナス屋敷の地所を勝手に横切ろうとして、ナス屋敷の主であるサー・ジョージ・スタッブス(Sir George Stubbs)から厳重な注意を受けている。


ナス屋敷に到着したポワロに対して、オリヴァー夫人は、次のように説明する。ナス屋敷で催される慈善パーティーのために、(殺人)犯人探しゲーム(Murder Hunt)の段取りをしているところだが、このゲーム自体に何かおかしな点があるものの、それが何なのか、よく判らない。オリヴァー夫人は、そんな不安を口にする。彼女としては、それをポワロに明らかにしてほしいと頼むのであった。


2023年に英国の HarperCollinsPublishers 社から出版された
アガサ・クリスティー作「死者のあやまち」の
愛蔵版(ハードカバー版)の扉絵 -
アガサ・クリスティーの夏期の住まいである
デヴォン州のグリーンウェイが、ナス屋敷として描かれている。

ナス屋敷では、次の人達が慈善パーティーの準備をしていた。

(1)サー・ジョージ・スタッブス:ナス屋敷の主

(2)レデイー・スタッブス ハティー(Lady Stubbs, Hattie Stubbs):サー・ジョージ・スタッブスの年若い妻

(3)アマンダ・ブレウィス(Amanda Brewis):サー・ジョージ・スタッブスの秘書

(4)マイケル・ウェイマン(Michael Weyman):サー・ジョージ・スタッブスに雇われて、ナス屋敷の改装を行っている建築家

(5)原子科学者のアレック・レッグ(Alec Legge):原子科学者 / サリー・レッグ(Sally Legge):アレック・レッグの妻

→「エルキュール・ポワロとグリーンショア屋敷の阿房宮(Hercule Poirot and the Greenshore Folly → 2014年9月27日付ブログで紹介済)」の場合、近所のコテージに住むアレックとペギーのレッグ若夫婦(Alec Legge + Peggy Legge)となっている。

(6)マスタートン夫人(Mrs. Masterton):慈善パーティー全体のとりまとめ役

(7)ワーバートン大尉(Captain Warburton):マスタートン夫人の手助けをしている人物

→「エルキュール・ポワロとグリーンショア屋敷の阿房宮」の場合、ワーボロー大尉(Captain Warborough)となっている。

(8)フォリアット夫人(Mrs. Folliat):ハティー・スタッブスの庇護者で、ナス屋敷の前の持ち主でもある。フォリアット家は1598年から何代にもわたってこの地所を所有していたが、第二次世界大戦前に、彼女の夫が亡くなってしまった。また、彼女の長男であるヘンリー・フォリアット(Henry Folliat)は海軍で出征した後、乗っていた艦が沈められ、彼女の次男であるジェイムズ・フォリアット(James Folliat)は陸軍に入隊したが、イタリアで戦死したようである。財政上の窮地に陥ったフォリアット夫人は、サー・ジョージ・スタッブスに対して、屋敷を売却し、その代わりに、園丁が住んでいたコテージを貸し与えられて住んでいる。


オリヴァー夫人によると、犯人探しゲームのアイデアを出したのはマスタートン夫人だが、何か腑に落ちないところがあるという言う。ある誰かが何らかの意図をもって、他の人達の背後で彼らを操りながら、何かを計画しているような気がしてならない、と...


犯人探しゲームの被害者は、原子科学者の先妻のユーゴスラビア人女性で、ボート小屋で殺される筋書きになっていた。当初、サリー・レッグが被害者役を務める筈だったが、慈善パーティーで占い師の役を担当することになり、この村に住む少女マーリン・タッカー(Marlene Tucker)が被害者役を代わった。パーティー当日、ポワロとオリヴァー夫人がボート小屋へ様子を見に行くと、マーリンはスカーフで本当に絞殺されていたのであった!


一方、慈善パーティー会場に、(9)ハティーの従兄弟と称するエティエンヌ・ド・スーザ(Etienne da Sousa→「エルキュール・ポワロとグリーンショア屋敷の阿房宮」の場合、ポール・ロペス(Paul Lopez)となっている)が姿を現す。西インド諸島から到着したばかりで、ダートマス(Dartmouth)にヨットを係留し、ダート河をボートで上がって、屋敷にやって来たのである。ハティー・スタッブスに久しぶりに会いたいと言う。ところが、従兄弟を忌み嫌うハティー・スタッブスは、エティエンヌ・ド・スーザの到着前に姿を消してしまい、その後、その行方が杳として知れない。


その後、また一人犠牲者が出る。この村に住むマーデル老人(Old Merdel)で、ある晩、乗っていた船から船着場に飛び移ろうとして、ダート河に落ちて溺死したのである。彼は、絞殺された少女の祖父だったことが判明する。警察当局は老人の死を事故死として処理しようとするが、ポワロは、以前マーデル老人に会った際、彼が発した思わせ振りな言葉が非常に気になった。「フォリアット家が、ナス屋敷からは離れることはない。('Always be Folliats at Nasse.')」と...


果たして、マーデル老人の溺死は事故死なのか?彼女の孫であるマーリン・タッカーを殺害したのは誰なのか?そして、その理由は?更に、ハティー・スタッブスは何処に行ってしまったのか?


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