2023年8月3日木曜日

ジョン・シンガー・サージェント作「マクベス夫人を演じるエレン・テリー」(Ellen Terry as Lady Macbeth painted by John Singer Sargent)- その2

テイト・ブリテン美術館に展示されている
ジョン・シンガー・サージェント作「マクベス夫人を演じるエレン・テリー」
<筆者が撮影>


1888年12月29日に、ライシアム劇場(Lyceum Theatre → 2014年7月12日付ブログで紹介済)において初演されたイングランドの劇作家 / 詩人であるウィリアム・シェイクスピア(William Shakespeare:1564年ー1616年 → 2023年5月19日付ブログで紹介済)作の悲劇「マクベス(Macbeth → 2023年7月30日付ブログで紹介済)」(1606年)を観劇して、感銘を受けた米国人の画家であるジョン・シンガー・サージェント(John Singer Sargent:1856年ー1925年 → 2023年7月28日付ブログで紹介済)は、早速、絵画の制作に取り掛かった。

なお、その際、主役のマクベス(Macbeth)を演じたのは、シェイクスピア俳優のサー・ヘンリー・アーヴィング(Sir Henry Irving:1838年ー1905年)で、マクベス夫人(Lady Macbeth)を演じたのが、英国の舞台女優であるアリス・エレン・テリー(Alice Ellen Terry:1847年ー1928年)であった。

ジョン・シンガー・サージェントは、アリス・エレン・テリーをモデルにして制作した油絵が、「マクベス夫人を演じるエレン・テリー(Ellen Terry as Lady Macbeth)」(1889年)である。



アリス・エレン・テリーは、絵画「希望(Hope → 2023年6月4日付ブログで紹介済)」(1886年)を描いた英国ヴィクトリア朝時代の画家 / 彫刻家であるジョージ・フレデリック・ワッツ(George Frederic Watts:1817年ー1904年 → 2023年6月12日 / 6月16日付ブログで紹介済)の妻だった人物である。


テイト・ブリテン美術館に展示されている
ジョージ・フレデリック・ワッツ作「希望」
<筆者が撮影>


1864年(2月20日)に、ジョージ・フレデリック・ワッツは、アリス・エレン・テリーと結婚する。結婚後、彼は、若き妻の肖像画を描いている。

アリス・エレン・テリーの誕生日は、1847年2月27日で、結婚当時、彼女は、17歳の誕生日の7日前だったため、ジョージ・フレデリック・ワッツとは、30歳近い年の差があった。また、彼女は、演劇一家の生まれで、後に英国演劇を代表する女優の一人となり、「Dame」の称号を受ける。

しかし、結婚後1年も経たないうちに、妻のアリス・エレン・テリーは、別の男性と駆け落ちをしまった結果、ジョージ・フレデリック・ワッツは、彼女と離婚できるのに、10年以上先の1877年までの期間を要したのである。


ナショナルポートレートギャラリー
(National Portrait Gallery)で販売されている
アリス・エレン・テリーの肖像画
(Oil on strawboard mounted on Gatorfoam
472 mm x 352 mm) -
ジョージ・フレデリック・ワッツが
1864年の結婚後に描いた若き妻の肖像画である。


ジョン・シンガー・サージェント作「マクベス夫人を演じるエレン・テリー」が、制作年である1889年に、ロンドンで展覧された。続いて、1890年にパリで、1893年にシカゴで、そして、1896年にリヴァプールで展覧が行われた。


シェイクスピア俳優のサー・ヘンリー・アーヴィングは、ライシアム劇場で展示するために、ジョン・シンガー・サージェントから「マクベス夫人を演じるエレン・テリー」を買い取った。


ライシアム劇場の建物正面を見上げたところ
<筆者が撮影>


サー・ヘンリー・アーヴィングが1905年に亡くなった後、「マクベス夫人を演じるエレン・テリー」は、オークションハウス(=競売会社)であるクリスティーズ(Christie’s → 2014年12月14日付ブログで紹介済)へ売却された。


キングストリート(King Street)沿いにあるクリスティーズ入口脇にある銘板
<筆者が撮影>


オークションを経て、「マクベス夫人を演じるエレン・テリー」を購入した美術商であるジョーゼフ・ジョエル・ドゥヴィーン(Joseph Joel Duveen:1843年ー1908年)が、1906年にテイト・ブリテン美術館(Tate Britain → 2018年2月18日付ブログで紹介済)へ寄贈している。


テイト・ブリテン美術館の建物正面を階段下から見上げたところ
<筆者が撮影>


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