2022年11月14日月曜日

アガサ・クリスティー作「ゴルフ場殺人事件」<小説版>(The Murder on the Links by Agatha Christie

英国の Harper Collins Publishers 社から出版されている
アガサ・クリスティー作「ゴルフ場殺人事件」のペーパーバック版の表紙


アガサ・メアリー・クラリッサ・クリスティー(Agatha Mary Clarissa Christie:1890年ー1976年)が1923年に発表した「ゴルフ場殺人事件(The Murder on the Links)」は、彼女が執筆した長編としては第3作目に、そして、エルキュール・ポワロシリーズの長編としては第2作目に該っている。

なお、アガサ・クリスティーは、「ゴルフ場殺人事件」の前に、


(1)長編「スタイルズ荘の怪事件(The Mysterious Affairs at Styles)」(1920年):エルキュール・ポワロシリーズ第1作目

(2)長編「秘密機関(The Secret Adversary)」(1922年):トーマス・ベレズフォード(Thomas Beresford - 愛称:トミー(Tommy))/ プルーデンス・カウリー(Prudence Cowley - 愛称:タペンス(Tuppence)シリーズ第1作目


を発表している。


1923年のある日、エルキュール・ポワロは、朝食の席で郵便物に目を通していたが、名探偵としての彼の興味を引くものは皆無で、残念ながら、取るに足らない陳腐な依頼ばかりであった。その結果、次から次へと、届いた手紙は、彼によって放り投げられることとなった。

その時、ある手紙に、ポワロは手をとめた。それは、フランス、ノルマンディー海岸のメルランヴィル(Merlinville-sur-Mer)にあるジュネヴィエーヴ荘(Villa Genevieve)に住むポール・ルノー(Paul Renauld)からで、「急ぎのお越しを請う!」という内容だった。手紙によると、彼には、命の危険が迫っているようだったが、絶対に明らかにはできない重大な秘密があるため、フランスの地元警察へは行けず、「ベルギー警察に、その人あり。」と言われたポワロに対して、助けを求めてきたのである。


ポール・ルノーからの手紙に興味を覚えたポワロは、急いで出発の準備を整えると、友人で、かつ、相棒でもあるアーサー・ヘイスティングス大尉(Captain Arthur Hastings)を伴い、英仏海峡を渡り、英国(ドーヴァー(Dover))からフランス(カレー(Calais))へと向かった。


翌日、ポワロとヘイスティングス大尉の二人は、メルランヴィルのジュヌヴィエーヴ荘に到着するが、別荘の門のところで、地元警察の巡査によって、行く手を遮られる。

驚いたことに、ジュヌヴィエーヴ荘の主人で、南米で富を築いた富豪であるポール・ルノーは、今朝、既に殺害されていたのである。残念なことに、ポワロは間に合わなかったのだ。


ポール・ルノーの妻であるエロイーズ・ルノー(Eloise Renauld)によると、前の晩、二人組の暴漢が夫妻の寝室に侵入して来て、ルノー夫人は、縛り上げられた上に、猿轡(さるぐつわ)をかまされた。そして、彼女の夫(ポール・ルノー)は、下着の上にコートを羽織っただけという格好で、犯人達によって、無理やり戸外へと連れ出された、とのこと。

翌日の早朝、彼女の夫は、短剣で背中を刺されて、ジュネヴィエーヴ荘のすぐ隣りにあるゴルフ場予定地に掘られた墓穴に倒れているのを、ルノー家の使用人達が発見したのである。二人組の暴漢は、わざわざ、墓穴を掘りながらも、ポール・ルノーの死体を埋めずに、そのまま放置するという非常に不可解な行動をとっていた。


間に合わなかったものの、英国からフランスまで遥々やって来たポワロは、自らの手で犯人達を見つけ出すことを誓った。幸いなことに、地元警察のリュシアン・ベー署長(Lucien Bex / Commissionary of Police for Merlinville-sur-Mer)は、彼の到着を歓迎してくれたので、早速、ポワロは捜査を開始する。

まもなく、オート予審判事(Monsieur Hautet / Examining Magistrate)による要請に基づき、パリ警察から名刑事としての呼び声が高いジロー刑事(Monsieur Giraud / Detective of the Paris Surete)が現場に派遣されることになり、ポワロとジロー刑事による推理合戦の火蓋が切って落とされることとなった。


アガサ・クリスティーは、彼女の自伝の中で、本作品について、次のように述べている。


「ゴルフ場殺人事件」は、この種におけるまずまずの実例だと思っている。

もっとも、少しばかりメロドラマ的であるが。

今回は、ヘイスティングス(大尉)に対して、恋愛事件を用意してあげた。

正直に言うと、私は、少しばかり、彼(ヘイスティングス大尉)にウンザリしていたのである。


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