2022年5月15日日曜日

コナン・ドイル作「最後の事件」<英国 TV 版>(The Final Problem by Conan Doyle

英国の俳優であるジェレミー・ブレットが主人公のシャーロック・ホームズを演じた
英国のグラナダテレビ制作の「シャーロック・ホームズの冒険」の
「最後の事件」における1場面
(ホームズの宿敵で、「犯罪界のナポレオン」と呼ばれる
ジェイムズ・モリアーティー教授が、
フランスでの絵画贋作計画を阻止されたため、
ベーカーストリート221Bのホームズの元を訪れる場面)  -

シャーロック・ホームズ博物館(Sherlock Holmes Museum)において、
絵葉書として販売されていた。
画面右手前の人物が、エリック・ポーターが演じるモリアーティー教授で、
画面左手奥の人物が、ジェレミー・ブレットが演じるホームズである。

サー・アーサー・イグナティウス・コナン・ドイル(Sir Arthur Ignatius Conan Doyle:1859年ー1930年)作「最後の事件(The Final Problem → 2022年5月1日 / 5月8日 / 5月11日付ブログで紹介済)」は、シャーロック・ホームズシリーズの短編小説56作のうち、24番目に発表された作品で、英国では、「ストランドマガジン(The Strand Magazine)」の1893年12月号に、また、米国では、「マクルーアマガジン(McClure’s Magazine)」の1893年12月号に掲載された。

そして、同作品は、ホームズシリーズの第2短編集「シャーロック・ホームズの回答(The Memoirs of Sherlock Holmes)」(1893年)に収録された。


本作品は、英国のグラナダテレビ(Granada Television Limited)が制作した「シャーロック・ホームズの冒険(The Adventures of Sherlock Holmes)」(1984年ー1994年)において、TV ドラマとして映像化された。具体的には、第2シリーズ(The Adventures of Sherlock Holmes)の第6エピソード(通算では第13話)として、英国では、1985年9月29日に放映されている。


配役は、以下の通り。


(1)シャーロック・ホームズ → ジェレミー・ブレット(Jeremy Brett:1933年ー1995年)

(2)ジョン・ワトスン → デイヴィッド・バーク(David Burke:1934年ー)


(3)ジェイムズ・モリアーティー教授(Professor James Moriarty)→ Eric Porter

(4)ハドスン夫人(Mrs. Hudson)→ Rosalie Williams

(5)ルーヴル美術館長(Director of The Louvre)→ Oliver Pierre

(6)フランス内務大臣(Minister of the Interior)→ Claude Le Sache

(7)画家(The Artist)→ Michael Goldie

(8)米国人の富豪(American Millionaire:モリアーティー教授から「モナ・リザ(伊:La Gioconda / 仏:La Joconde)」の贋作を購入しようとした美術愛好家)→ Robert Henderson

(9)若い美術専門家(Young Art Expert:モリアーティー教授の指示を受けて、米国の富豪に対して、「モナ・リザ」の贋作を売りつけようとした部下)→ Paul Sirr

(10)ヴィクトリア駅のポーター(Porter at Victoria)→ Jim Dunk

(11)ピーター・ステイラー(Herr Peter Steiler:ホームズとワトスンが宿泊したマイリンゲン(Meiringen)の宿の主人)→ Paul Humpoletz

(12)スイス人の若者(Swiss Youth:モリアーティー教授が書いた偽の手紙を使って、ワトスンをライヘンバッハの滝(Reichenbach Falls)からマイリンゲンの宿へと呼び戻そうとした部下) → Simon Adams)



グラナダテレビ版のストーリーは、概ね、コナン・ドイルの原作と同様であるが、以下のような相違点がある。


(1)

物語の冒頭、ホームズが、モリアーティー教授からの指示を受けた部下達から、馬車で追われたり、教会の上からレンガを落とされたり、また、教会の庭 / 墓地において襲われたりと、3度も襲撃を受ける場面から始まる。

コナン・ドイルの原作では、オックスフォードストリート(Oxford Street → 2016年5月28日付ブログで紹介済)へ出かけたホームズが、最初は、ベンティンクストリート(Bentinck Street → 2015年5月16日付ブログで紹介済)とウェルベックストリート(Welbeck Street → 2015年5月16日付ブログで紹介済)の角で、突然暴走して来た二頭立て馬車に轢き殺されそうになり、その次には、ヴェアストリート(Vere Street → 2015年5月23日付ブログで紹介済)を歩いている際、ある家の屋根からレンガが落ちてきて、ホームズの足下で粉々に砕け散るという襲撃を受けている。

コナン・ドイルの原作において、ホームズがモリアーティー教授の部下から襲撃を受けるのは、2回であるが、グラナダテレビ版では、合計で3回である。つまり、グラナダテレビ版における3回目の襲撃(教会の庭 / 墓地において、2人の部下に襲われる場面)は、創作と言える。また、2回目の襲撃(レンガを落とされる場面)について、コナン・ドイルの原作では、普通の家の屋根から落とされているが、グラナダテレビ版では、教会の上から落とされるという差異がある。


(2)

ホームズがワトスンに、モリアーティー教授のことを語る場所について、コナン・ドイルの原作では、既に結婚して、別に暮らしているワトスンの自宅であるが、グラナダテレビ版では、ベーカーストリート221B(221B Baker Street)においてである。


(3)

コナン・ドイルの原作において、1891年の春、ホームズは、フランス政府からの依頼を受けて、ある非常に重要な任務のため、フランスに滞在しているという記述が見られる。ワトスンは、新聞記事から、そのことを知るのみで、ホームズ自身から、そのことにかかる説明を全く受けていない。従って、ホームズがフランス政府から受けた依頼が、モリアーティー教授と関係しているかどうかは不明である。

一方、グラナダテレビ版では、ホームズがフランスに滞在していたのは、モリアーティー教授がルーヴル美術館から「モナ・リザ」を盗み出して、それを美術愛好家にそのまま売却するのではなく、贋作を大量に作成の上、本物と偽って売り捌くことを計画しており、それを防ぐためという脚色が追加されている。グラナダテレビ版の「最後の事件」において、フランスでの話が、物語の前半を占めている。


(4)

グラナダテレビ版において、モリアーティー教授が、ベーカーストリート221Bのホームズの元を訪れるのは、フランスでの絵画贋作計画をホームズに阻止された後で、つまり、物語の中間辺りで、物語の後半は、ホームズとワトスンの二人が英国から欧州大陸へと逃避行する話へと移る。


(5)

グラナダテレビ版では、コナン・ドイルの原作対比、ホームズとワトスンが、カンタベリー(Cantebury)から欧州大陸へと向かうルートについて、次のように、より詳細となっている。


Ashford Junction →(午後1時発 slow train)→ Hastings → Brighton →(south coast line)→  Bexhill →(non-stop train)→ Lewis → Newhaven →(evening boat)→ Dieppe → Brussels(2泊) → Luxembourg → Basle


逆に、コナン・ドイルの原作において、ホームズとワトスンは、ブリュッセルで2泊した後、3日目にストラスブール(Strasbourg)へと移動しているが、グラナダテレビ版では、ストラスブールにかかる説明は出てこない。 


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