2022年5月18日水曜日

ジュリアン・シモンズ作「ベルティング屋敷の相続」(The Belting Inheritance by Julian Symons)

大英図書館(British Library)から2018年に出版された
ジュリアン・シモンズ作「ベルティング屋敷の相続」の表紙
(Front cover : NRM / Pictorial Collection / Science Picture Library)

「ベルティング屋敷の相続(The Belting Inheritance)」は、英国の推理作家 / 詩人であるジュリアン・シモンズ(Julian Symons:1912年ー1994年)が1965年に発表した推理小説で、彼の長編では、第13作目に該る。


ジュリアン・シモンズは、1912年5月30日、ロンドンに出生。

彼は、1937年に詩の雑誌「Twentieth Century Verse」を創刊して、2年間その編集に携わった後、広告のコピーライターを経て、1945年に「非実体主義殺人事件(The Immaterial Murder Case)」を以って推理作家としてデビューし、1947年に専業作家となった。

1945年から亡くなる1994年までの間に、彼は30を超える長編 / 短編集を発表。米国探偵作家クラブ(Mystery Writers of America)から2度の「エドガー賞長編賞」を受賞するとともに、1982年には「エドガー賞巨匠賞」を授与された。また、1976年から1985年までの間、英国探偵作家クラブ(Detection Club)の会長も務めた。

1994年11月23日、ケント州(Kent)で死去、82歳だった。

大英図書館から2018年に出版された
ジュリアン・シモンズ作「ベルティング屋敷の相続」の裏表紙
(Front cover : NRM / Pictorial Collection / Science Picture Library)

主人公のクリストファー・バリントン(Christopher Barrington)は、12歳の時に両親を亡くし、レディー・ジェシカ・ウェインライト(Lady Jessica Wainwright)に引き取られて、ベルティング屋敷(Belting)で暮らしていた。


クリストファーの母親であるサラ・ウェインライト(Sarah Wainwright)は、父であるジョナサン・ウェインライト(Jonathan Wainwright)の意向に背いて、ジェイムズ・バリントン(James Barrington)と駆け落ち婚をした。ジェイムズ・バリントンは、映画監督(film director)と称していたが、息子であるクリストファーとしては、本当に、父親が映画監督をしていたかどうか、非常に疑問だった。また、ジェイムズ・バリントンは、飲酒癖が酷く、サラ・ウェインライトの伯母に該り、ジェイムズ・バリントンと一度会ったことがあるレディー・ジェシカ・ウェインライトは、彼のことを全く評価に値しないと見做し、結婚自体を全く認めようとせず、クリスマスカードのやりとりだけに終始した。

第二次世界大戦が勃発すると、映画の制作が困難になったため、ジェイムズ・バリントンは軍に入隊して、記録映画を撮る部隊に入り込み、変わり身が速かった。戦争の間、サラ・ウェインライトは、教師の仕事を始めた。

戦争が終わると、ジェイムズ・バリントンは除隊し、映画撮影のため、撮影場所の事前調査をすべく、サラ・ウェインライトを連れて、スペインへと向かった。不幸なことに、ジェイムズ・バリントンとサラ・ウェインライトを乗せた飛行機が墜落し、二人は帰らぬ人となった。クリストファーが12歳の時だった。


そして、時が流れ、クリストファー・バリントンは18歳となり、高校を卒業し、大学へと進む時期を迎えていた。


レディー・ジェシカ・ウェインライトには、4人の息子が居たが、第二次世界大戦でヒュー・ウェインライト(Hugh Wainwright)とデイヴィッド・ウェインライト(David Wainwright)の二人を亡くしていた。他の二人の息子であるマイルズ・ウェインライト(Miles Wainwright)とステファン・ウェインライト(Stephen Wainwright)は、レディー・ジェシカ・ウェインライトと一緒に、ベルティング屋敷で暮らしていたが、ヒューとデイヴィッドを亡くしたことで、レディー・ジェシカ・ウェインライトの体調は次第に悪くなっており、死期は遠くなかった。


そんな最中、ある手紙がベルティング屋敷に届く。それは、デイヴィッドからで、彼は、戦死しておらず、ソビエト連邦(現在のロシア)の収容所に入れられていたと言うのだ。

その手紙を受け取ったレディー・ジェシカ・ウェインライトは、デイヴィッドが生きていたことに非常に喜び、悪くなっていた体調がやや上向くが、マイルズとステファンの二人は、非常に懐疑的だった。二人は、当初の通り、デイヴィッドは戦死しており、この手紙は、デイヴィッドの名前を使って、母親の遺産を横取りしようとする偽者ではないかと疑っていたのである。


そして、デイヴィッドと名乗る人物が、ベルティング屋敷に姿を現わすと、続いて、最初の死体が発見されることになる。


「ベルティング屋敷の相続」の発表は1965年であるが、探偵小説の黄金時代(第一次世界大戦(1914年-1918年)と第二次世界大戦(1939年-1945年)の間)を思い起こさせるようなカントリーハウスで起きる殺人事件を扱う伝統的な推理小説である。


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