2022年5月4日水曜日

デイヴィッド・ステュアート・デイヴィーズ作「シャーロック・ホームズの更なる冒険 / 墓場からの復讐」(The further adventures of Sherlock Holmes / Revenge from the Grave by David Stuart Davies) - その1

英国の Titan Publishing Group Ltd. の Titan Books 部門から
2022年に出版された
デイヴィッド・ステュアート・デイヴィーズ作
「シャーロック・ホームズの更なる冒険 / 墓場からの復讐」の表紙

「墓場からの復讐(Revenge from the Grave)」は、英国の作家であるデイヴィッド・ステュアート・デイヴィーズ(David Stuart Davies:1946年ー)が、Titan Publishing Group Ltd. から、「シャーロック・ホームズの更なる冒険(The further adventures of Sherlock Holmes)」シリーズの一つとして、2022年に発表した作品である。

作者のデイヴィッド・ステュアート・デイヴィーズは、英語の教師を経て、フルタイムの編集者、作家かつ劇作家に転身している。


デイヴィッド・ステュアート・デイヴィーズは、ホームズシリーズとして、2004年に「欺かれた探偵(The Veiled Detective → 2021年4月21日 / 4月28日 / 5月5日付ブログで紹介済)」を、また、2014年に「悪魔との契約(The Devil’s Promise → 2022年3月5日 / 3月12日 / 3月19日付ブログで紹介済)」を発表している。


「墓場からの復讐」は、次のようにして始まる。


1891年1月、パリの郊外にある邸宅において、シャルル・オベール(Charles Aubert)は、窓越しに月に照らされた庭を見つめながら、書斎である人物を待っていた。彼は、その人物から脅迫を受けていたのである。

彼が室内の物音に気付いて振り返ると、燃え盛る暖炉の向こう、部屋の暗がりの中から、彼が待っていた人物であるデファージュ夫人(Madame Defarge → 英国の小説家であるチャールズ・ジョン・ハファム・ディケンズ(Charles John Huffam Dickens:1812年ー1870年)作「二都物語(A Tale of Two Cities)」(1859年)に登場する架空の人物と同じ名前)がその姿を現した。シャルル・オベールは、要求されていた金貨を渡す代わりに、脅迫を受ける元となった手紙を返すように告げるが、デファージュ夫人は、短剣を取り出すと、彼の喉を搔き切ると、その場を立ち去ってしまう。

パリへと戻ったデファージュ夫人は、ある計画を考えていた。彼女は、パリにおいて、強盗、脅迫や殺人等を実行する、小規模ながらも非常に有能な犯罪集団を組織していたが、次のステージへと進もうとしていたのである。


1891年5月4日、シャーロック・ホームズと彼の宿敵で、「犯罪界のナポレオン(Napoleon of crime)」と呼ばれるジェイムズ・モリアーティー教授(Professor James Moriarty)の2人がスイスのマイリンゲン(Meiringen)にあるライヘンバッハの滝(Reichenbach Falls)にその姿を消して、彼らは死亡したものと思われていた。更に、その約6ヶ月後、ジョン・H・ワトスンは、最愛の妻であるメアリー(Mary)を亡くし、友人と妻を失った彼は悲しみのどん底に居た。


幸いなことに、3年後の1894年4月、ホームズは、無事にロンドンへと帰還し、「空き家の冒険(The Empty House)」事件において、ワトスンやスコットランドヤードのレストレード警部(Inspector Lestrade)と協力の上、モリアーティー教授の片腕であるセバスチャン・モラン大佐(Colonel Sebastian Moran)の捕縛に成功した。

そして、ワトスンは、古巣のベーカーストリート221B(221B Baker Street)へと戻ると、ホームズと一緒に、祝杯を挙げたのである。


ところが、事件の翌々日の朝、ホームズとワトスンが一緒に朝食の席に着いていると、そこへレストレード警部が駆け込んで来る。なんと、折角、捕縛したモラン大佐が、牢屋から逃亡したのである。

レストレード警部によると、昨夜、ピアソン警部(Inspector Pearson)と名乗る人物が、2人の警官を帯同の上、ワンズワース刑務所(Wandsworth Prison)へとモラン大佐を護送するために、スコットランドヤードにやって来た、とのこと。当直の警官は、それを信じて、モラン大佐の身柄を彼らに引き渡してしまったが、後で調べてみると、彼らは偽者である上に、渡された書類は偽造されたものだった。つまり、モラン大佐の仲間による手助けにより、モラン大佐は自由の身となってしまったのである。


ピアソン警部と名乗る人物は、ホームズ宛の手紙も残していた。

ホームズは、レストレード警部から受け取った封筒から手紙を取り出すと、ショックを受けたような顔で読んだ後、一言も言わないで、ワトスンに手紙を渡した。その手紙には、次のように書かれていた。


‘Just to let you know, Mr Holmes, that I have returned and I am ready to exact my revenge. Take care. Take very great care. Yours sincerely, Professor James Moriarty.’


ホームズと同様に、モリアーティー教授自身も、ライヘンバッハの滝から無事に生還して、ホームズに対する復讐に着手しようとしているのだろうか?


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