2025年9月3日水曜日

<第1900回> コナン・ドイル作「花婿失踪事件」<小説版>(A Case of Identity by Conan Doyle )- その1

1891年9月号に掲載された挿絵(その1) -
数週間ぶりにベイカーストリート221B を訪れた
ジョン・H・ワトスンに対して、
「今手掛けている事件は、10件か、12件位あるが、
面白い事件は、一つもない。」と愚痴をこぼすシャーロック・ホームズの元を
事件の依頼人であるメアリー・サザーランドが訪れた。
画面左側から、シャーロック・ホームズ、給仕の少年、
そして、
メアリー・サザーランド


英国の新古典主義を代表する建築家となり、1788年10月16日に、英国の建築家 / 彫刻家であるサー・ロバート・テイラー(Sir Robert Taylor:1714年ー1788年)の後を継いで、イングランド銀行(Bank of England → 2015年6月21日 / 6月28日付ブログで紹介済)の建築家に就任し、その後、1833年まで45年間にわたり、その任を務めたサー・ジョン・ソーン(Sir John Soane:1753年ー1837年 → 2025年6月24日 / 6月28日 / 7月9日付ブログで紹介済)は、風邪を拗らせて、1837年1月20日に亡くなり、妻のエリザベス・ソーン(Elizabeth Soane:1760年ー1815年 /  旧姓 - スミス(Smith)/ 通称:エリザ(Eliza))と長男のジョン・ソーン(John Soane:1786年ー1823年)が永眠するセントパンクラス オールド教会(St. Pancras Old Church → 2014年10月11日付ブログで紹介済)のセントパンクラスガーデンズ(St. Pancras Gardens → 2025年7月11日付ブログで紹介済)に埋葬された。


英国の肖像画家であるサー・トマス・ローレンス
(Sir Thomas Lawrence:1769年ー1830年)が描いた
「サー・ジョン・ソーン(76歳)の肖像画 (Portrait of Sir John Soane, aged 76)」
(1828年ー1829年)
の絵葉書
Oil on canvas 
<筆者がサー・ジョン・ソーンズ博物館
(Sir John Soane's Museum → 2025年5月22日 / 5月30日 /
6月3日 / 6月13日付ブログで紹介済)で購入>


サー・ジョン・ソーンが埋葬されているセントパンクラス オールド教会は、サー・アーサー・イグナティウス・コナン・ドイル(Sir Arthur Ignatius Conan Doyle:1859年ー1930年)作シャーロック・ホームズシリーズの短編第3作目に該る「花婿失踪事件(A Case of Identity)」に出てくるセントサヴィオール教会(St. Saviour's (Church))のモデルになった教会である。


セントパンクラス ガーデンズ内にあるサー・ジョン・ソーンの霊廟
<筆者撮影>


「花婿失踪事件」は、シャーロック・ホームズシリーズの短編小説56作のうち、3番目に発表した作品で、英国の「ストランドマガジン」の1891年9月号に掲載された。

同作品は、1892年に発行されたホームズシリーズの第1短編集「シャーロック・ホームズの冒険(The Adventures of Sherlock Holmes)」に収録されている。


セントパンクラス オールド教会の建物正面
<筆者撮影>


今回の事件の依頼人であるメアリー・サザーランド(Mary Sutherland)とホズマー・エンジェル(Hosmer Angel)が結婚式を行う予定だった教会は、彼女によると、キングスクロス(King's Cross)の近くにあるセントサヴィオール教会であった。

確かに、セントサヴィオール教会は実在しているが、それはキングスクロスから北北東の方向にかなり離れたクラウチエンド(Crouch End)と言う地区内にある。

キングスクロス駅(King's Cross Station)のすぐ西側にあるセントパンクラス駅(St. Pancras Station)を南側から見て左手のミッドランドロード(Midland Road)をやや北上したところに、セントパンクラス ガーデンズがある。この庭園に面して、セントパンクラス オールド教会が建っている。現在の地図上、キングスクロス駅近辺には、このセントパンクラス オールド教会しか、教会は存在していない。ということは、コナン・ドイルの原作で言及されているセントサヴィオール教会は、このセントパンクラス オールド教会をモデルにしたものと思われる。


セントパンクラスホテルの建物正面を見上げたところ。
<筆者撮影>


コナン・ドイルの原作によれば、予定通り、教会での結婚式が行われていれば、メアリーとホズマーはセントパンクラスホテル(St. Pancras Hotel → 2014年10月12日付ブログで紹介済)で結婚披露朝食会をする予定であった。セントサヴィオール教会のモデルとなったのが、セントパンクラス オールド教会であれば、セントパンクラスホテルも近かったので、簡単に移動できた筈である。


セントパンクラス オールド教会の建物側面
<筆者撮影>


「花婿失踪事件」の場合、ジョン・H・ワトスンが、数週間ぶりに、ベイカーストリート221B(221B Baker Street → 2014年6月22日 / 6月29日付ブログで紹介済)のシャーロック・ホームズの元を訪れたところから、その物語が始まる。

「今、手掛けている事件はあるのかい?(’And have you any on hand just now?7)」と尋ねるワトスンに対して、ホームズは、「10件か、12件位かな。だけど、面白い事件は、一つもないね。面白くはないんだが、重要な事件ではあるんだ。実際、僕は判ったんだ。観察、素早い原因分析や捜査に魅力を与える趣き、こうした場を提供してくれるのは、大抵、些細な事件なのさ。大きな犯罪は、単純になる傾向がある。大きな犯罪になればなる程、概して、その動機が明白になるからさ。(’Some ten or twelve, but none which present any feature of interest. They are important, you understand, without being interesting. Indeed, I have found that it is usually in unimportant matters that there is a field for the observation and for the quick analysis of cause and effect which give the charm to an investigation. The larger crimes are apt to be the simpler, for the bigger the crime the more obvious, as a rule, is the motive.)」と答えた。


ホームズとワトスンの2人がそんな会話を交わしている最中、事件の依頼人であるメアリー・サザーランドが、給仕の少年に案内されて、部屋へと入って来たのである。


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