2023年12月9日土曜日

コナン・ドイル作「まだらの紐」<グラフィックノベル版>(The Speckled Band by Conan Doyle )- その7

米国の作家である Mr. Murray Shaw / Ms. M. J. Cosson が構成を、そして、フランスのイラストレーターである Ms. Sophie Rohrbach がイラストを担当したグラフィックノベル版「まだらの紐(The Speckled Band)」の場合、サー・アーサー・イグナティウス・コナン・ドイル(Sir Arthur Ignatius Conan Doyle:1859年ー1930年)の原作に比べると、物語の展開上、以下の違いが見受けられる。


(1)

<原作>

原作の場合、事件の発生年月日について、「1883年4月の初め(It was early in April in the year 1883)」と語られているだけで、具体的な日付に関しては、言及されていない。

<グラフィックノベル版>

グラフィックノベル版の場合、事件の発生年月日について、「1883年4月7日」と、具体的な日付が設定されている。


原作の場合、事件の発生年月日は、1883年の4月初めとなっているが、
グラフィックノベル版の場合、1883年4月7日と言う具体的な日付が設定されている。

(2)

<原作>

原作の場合、早朝(午前7時15分)に、ジョン・H・ワトスンを起こしたことを詫びるシャーロック・ホームズは、ワトスンに対して、「いつものことだが、今朝、事件の依頼人があって、ハドスン夫人が起こされ、僕のところへ連絡があったので、君を起こしに来た。(it’s the common lot this morning. Mrs Hudson has been knocked up, she retorted upon me, and I on you.)」と説明している。

<グラフィックノベル版>

グラフィックノベル版の場合、ホームズは、ワトスンに対して、早朝、事件の依頼人が訪ねて来たことは話しているもの、ハドスン夫人(Mrs. Hudson)のことは言及していない。


原作の場合、シャーロック・ホームズが、まだ眠っているジョン・H・ワトスンを起こした際、
早朝の依頼人にまず最初に起こされたハドスン夫人のことに言及しているが、

グラフィックノベル版の場合、ホームズは、ハドスン夫人のことに全く触れていない。


(3)

<原作>

原作の場合、事件の依頼人であるヘレン・ストーナー(Helen Stoner)が、今朝、列車でロンドンまで来たことを見抜いた理由として、シャーロック・ホームズは、「手袋をはめた彼女の左手の中に、往復切符の半券がある(I observe the second half of a return ticket in the palm of your left glove.)」ことを指摘した。


英国で出版された「ストランドマガジン」
1892年2月号に掲載された挿絵 -

1883年の4月初め、ヘレン・ストーナーが、
双子の姉ジュリア・ストーナーが2年前に遂げた謎の死、
そして、自分に現在ふりかかっている不安と恐怖について相談するため、
サリー州にあるストークモラン屋敷を早朝に出て、レザーヘッド駅から一番列車に乗り、
ウォータールー駅に到着、ベーカーストリート221Bのシャーロック・ホームズの元を訪れる。
挿絵:シドニー・エドワード・パジェット
(Sidney Edward Paget:1860年 - 1908年)
彼の挿絵は、コナン・ドイルの原作通り、
ヘレン・ストーナーは、黒いレースの手袋を両手にはめている。


<グラフィックノベル版>

グラフィックノベル版の場合、ヘレン・ストーナーは、原作通り、往復切符の半券を左手に持っているが、手袋をはめておらず、素手のままである。


原作の場合、ベーカーストリート221Bのシャーロック・ホームズの元を訪れた
ヘレン・ストーナーは、黒いレースの手袋をはめていたが、

グラフィックノベル版の場合、ヘレン・ストーナーは、素手のままである。

(4)

<原作>

原作の場合、ヘレン・ストーナーが、駅まで二輪馬車に乗って、泥濘んだ道を通って来たことを見抜いた理由として、シャーロック・ホームズは、「上着の左腕に、数箇所の泥跳ねが付いている(The left arm of your jacket is spattered with mud in no less than seven places.)」ことを指摘した。

更に、ホームズは、彼女が御者の左側に座っていたことまで見抜いている。

<グラフィックノベル版>

グラフィックノベル版の場合、泥跳ねは、ヘレン・ストーナーの上着の右腕に付いている。

また、ホームズは、彼女が御者の右側に座っていたことについて、特に言及していないが、グラフィックノベル版では、彼女が御者の右側に座っている場面が、後で挿入されている。


原作の場合、泥跳ねが付いていたのは、
ヘレン・ストーナーの上着の左腕であるが、

グラフィックノベル版の場合、ヘレン・ストーナーの上着の右腕になっている。


グラフィックノベル版の場合、ヘレン・ストーナーが、二輪馬車の御者の右側に座っている場面がある。

(5)

<原作>

原作の場合、ヘレン・ストーナーとジュリア・ストーナー(Julia Stoner - 双子の姉)の母であるストーナー夫人(Mrs. Stoner)が、インドのカルカッタ(Calcutta)で診療所を開いていたグリムズビー・ロイロット博士(Dr. Grimesby Roylott)と再婚した際、ジュリアとヘレンの双子姉妹は、2歳だった。

<グラフィックノベル版>

グラフィックノベル版の場合、ストーナー夫人がグリムズビー・ロイロット博士と再婚した際、ジュリアとヘレンの双子姉妹は、5歳だったと言う内容に変更されている。


原作の場合、ストーナー夫人がグリムズビー・ロイロット博士と再婚した際、
ジュリアとヘレンの双子姉妹は2歳となっているが、

グラフィックノベル版の場合、2人は5歳と言う設定に変更されている。

(6)

<原作>

原作の場合、インド在住時、家に泥棒が数回入ったことに怒り狂ったグリムズビー・ロイロット博士が、インド人の執事(his native butler)を殴り殺してしまったため、なんとか死刑は免れたものの、長い懲役刑に処せられている。

<グラフィックノベル版>

グラフィックノベル版の場合、グリムズビー・ロイロット博士が殴り殺した人物は、インド人の使用人となっており、若干の変更が見受けられる。


原作の場合、インド在住中、グリムズビー・ロイロット博士が殴り殺してしまったのは、
インド人の執事と記述されているが、

グラフィックノベル版の場合、インド人の使用人と、微妙な変更が為されている。

(7)

<原作>

原作の場合、「ストークモラン(Stoke Moran)において、グリムズビー・ロイロット博士が鍛冶屋(blacksmith)を橋の手摺り越しに川に投げ込んだのは、先週(last week)です。」と、ヘレン・ストーナーは、ホームズに対して、語っている。

<グラフィックノベル版>

グラフィックノベル版の場合、グリムズビー・ロイロット博士が鍛冶屋を橋の手摺り越しに川に投げ込んだのは、2-3週間前と言う内容に変更されている。


原作の場合、ストークモランにおいて、グリムズビー・ロイロット博士が鍛冶屋を川に投げ込んだのは、
先週のことと、ヘレン・ストーナーは、シャーロック・ホームズに対して、説明しているが、

グラフィックノベル版の場合、2−3週間前のことに変更されている。


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