2023年12月16日土曜日

コナン・ドイル作「まだらの紐」<グラフィックノベル版>(The Speckled Band by Conan Doyle )- その9

米国の作家である Mr. Murray Shaw / Ms. M. J. Cosson が構成を、そして、フランスのイラストレーターである Ms. Sophie Rohrbach がイラストを担当したグラフィックノベル版「まだらの紐(The Speckled Band)」の場合、サー・アーサー・イグナティウス・コナン・ドイル(Sir Arthur Ignatius Conan Doyle:1859年ー1930年)の原作に比べると、物語の展開上、以下の違いが見受けられる。


(15)

<原作>

原作の場合、シャーロック・ホームズとジョン・H・ワトスンは、ロンドンのウォータールー駅(Waterloo Station → 2014年10月19日付ブログで紹介済)から列車に乗り、レザーヘッド駅(Leatherhead Station)へと向かった。

レザーヘッド駅に到着した2人は、駅の宿屋で二輪馬車を手配して、ストークモラン村(Stoke Moran)へと進んだ。

ストークモラン村に着いたホームズとワトスンを待っていたヘレン・ストーナー(Helen Stoner)は、2人を屋敷へと案内する。

屋敷の建物は、背が高い中央部から、蟹のハサミが2本のように、湾曲した棟が両側に広がっていた。(The building was … with a high central portion and two curving wings, like the claws of a crab, thrown out on each side.)

<グラフィックノベル版>

グラフィックノベル版の場合、ヘレン・ストーナーがホームズとワトスンを案内した屋敷は、原作とは異なり、中央に高い建物があり、両側に湾曲した棟が広がっているようには、描かれていない。


原作の場合、グリムズビー・ロイロット博士達が住む屋敷は、
中央に高い建物があり、両側に湾曲した棟が広がっている設定になっているが、
グラフィックノベル版の場合、そのような建物構造にはなっていない。

(16)

<原作>

原作の場合、シャーロック・ホームズとジョン・H・ワトスンは、ヘレン・ストーナーが現在使用している部屋(=双子の姉ジュリア・ストーナー(Julia Stoner)が使用していた部屋)の中を調査した。

ホームズは、ベッドの横に垂れ下がっている呼び鈴用の太いロープに注意を向けた。そのロープの飾り房は、枕の上に乗っていた。(he asked at last pointing to a thick bell-rope which hung down beside the bed, the tassel actually lying upon the pillow.)

<グラフィックノベル版>

グラフィックノベル版の場合、ベッドの横に垂れ下がっている呼び鈴用の太いロープの飾り房は、枕の上に乗っていない。


原作の場合、ベッドの横に垂れ下がっている呼び鈴用の太いロープの飾り房は、
枕の上に乗っていると記述されているが、
グラフィックノベル版の場合、枕の上に乗っているようには、描かれていない。

(17)

<原作>

原作の場合、ヘレン・ストーナーが現在使用している部屋(=双子の姉ジュリア・ストーナー(Julia Stoner)が使用していた部屋)を調査した後、シャーロック・ホームズとジョン・H・ワトスンは、義父グリムズビー・ロイロット博士(Dr. Grimesby Roylott)の部屋も調べた。

その際、ホームズは、金庫の上に置かれたミルクの皿が気になった。(He took up a small saucer of milk which stood on the top of it.)


英国で出版された「ストランドマガジン」
1892年2月号に掲載された挿絵 -

シャーロック・ホームズが注意を向けたミルク皿は、金庫の上に置かれている。
挿絵:シドニー・エドワード・パジェット
(Sidney Edward Paget:1860年 - 1908年)


<グラフィックノベル版>

グラフィックノベル版の場合、ミルクの皿は、金庫の前の床の上に置かれている。


原作の場合、グリムズビー・ロイロット博士の部屋において、
ミルク皿は金庫の上に置かれていたが、
グラフィックノベル版の場合、
ミルク皿は金庫の前の床の上に置かれている。

(18)

<原作>

原作の場合、屋敷の近くに建つ宿屋「Crown Inn」において、シャーロック・ホームズとジョン・H・ワトスンは待機して、ヘレン・ストーナーによるランプの合図を待った。

椅子に座ったホームズは、ワトスンに対して、「今夜、君を連れて行っても良いかどうか、悩んでいる。非常に危険な要素があるんだ。(’I have really some scruples as to taking you tonight. There is a distinct element of danger.’)」と話し始めて、2人の間の会話が進む。

そして、暫くして、「午後9時頃、樹々の間の光は消えて、屋敷の方向は、完全な闇となった。(About nine o’clock the light among the trees was extinguished, and all was dark in the direction of the Manor House.)」と言う表現が入る。

<グラフィックノベル版>

グラフィックノベル版の場合、午後9時の時点で、椅子に座ったホームズは、ワトスンに対して、「ワトスン、今晩、君は僕と一緒に来るべきではない。非常に危険なんだ。(’Watson, I think you should not come with me this evening. There will be great danger.’)」と話し始めて、2人の間の会話が進む。


原作の場合、ストークモラン村の宿や「Crown Inn」で待機しつつ、
ヘレン・ストーナーによるランプの合図を待つ
シャーロック・ホームズとジョン・H・ワトスンが会話を交わした後、
暫くして、午後9時となるが、
グラフィックノベル版の場合、午後9時の時点で、
ホームズとワトスンは、会話を始めている。


(19)

<原作>

原作の場合、ヘレン・ストーナーからランプの合図を受けたシャーロック・ホームズとジョン・H・ワトスンは、屋敷の敷地内へと侵入した。

樹々の間を抜けて、更に、芝生を通り抜けた後、2人が窓から屋敷の中に入ろうとしたところ(Making our way among the trees, we reached the lawn, crossed it, and were about to enter through the window)、月桂樹の茂みの中から、ヒヒが飛び出して来る。

<グラフィックノベル版>

グラフィックノベル版の場合、ホームズとワトスンが屋敷に近付き、窓から屋敷の中に入ろうと言う動作を行う前の段階で、ヒヒが飛び出して来る。


原作の場合、シャーロック・ホームズとジョン・H・ワトスンが、
敷地内に侵入して、窓から屋敷の中に入ろうとしたところ、
月桂樹の茂みから、グリムズビー・ロイロット博士が飼っているヒヒが飛び出して来るが、
グラフィックノベル版の場合、
ホームズとワトスンの2人が屋敷に近付き、
窓から屋敷の中に入ろうとする動作を起こす前に、ヒヒが飛び出して来る。

(20)

<原作>

原作の場合、月桂樹の茂みの中から、ヒヒが飛び出して来た時、驚いたジョン・H・ワトスンは、シャーロック・ホームズに対して、「あれを見たか?」と囁いた。一方、ホームズの方が、ワトスンよりも驚いていたようで、ワトスンの手首を万力のように握り締めていたからである。

<グラフィックノベル版>

グラフィックノベル版の場合、ホームズよりもワトスンの方が驚いたようで、ワトスンは本能的に懐からピストルを取り出すが、ホームズに止められている。


グラフィックノベル版の場合、
突然飛び出して来たヒヒに驚いたジョン・H・ワトスンが、
思わず、懐からピストルを取り出したため、
シャーロック・ホームズに止められているが、
原作の場合、このような展開はない。


(21)

<原作>

原作の場合、シャーロック・ホームズとジョン・H・ワトスンは、ヘレン・ストーナーが現在使用している部屋(=双子の姉ジュリア・ストーナーが使用していた部屋)へ窓から入る際に、靴を脱いでいる。(I confess that I felt easier in my mind when, after following Holmes’s example and slipping off my shoes, I found myself inside the bedroom.)

靴を履いたままだと、ちょっとした動きでも、隣室に居るグリムズビー・ロイロット博士に、足音が聞こえてしまうことを、ホームズが警戒したためだと思われる。

<グラフィックノベル版>

グラフィックノベル版の場合、ホームズとワトスンは、ヘレン・ストーナーが現在使用している部屋へ窓から入る際に、特に靴を脱ぐようなことはしていない。


原作の場合、シャーロック・ホームズとジョン・H・ワトスンは、靴を脱いで、
窓から
ヘレン・ストーナーが現在使用している部屋
(=双子の姉ジュリア・ストーナーが使用していた部屋)の中に入るが、
グラフィックノベル版の場合、2人とも、土足のままである。


0 件のコメント:

コメントを投稿