2023年12月28日木曜日

ボニー・マクバード作「シャーロック・ホームズのクリスマス冒険 / 御使いうたいて」(A Sherlock Holmes Christmas / What Child Is This? by Bonnie MacBird) - その1

2023年に英国の HarperCollinsPublishers 社から出版された
ボニー・マクバード作「御使いうたいて」の
ペーパーバック版の表紙
(Cover design by 
HarperCollinsPublishers Ltd. /
Cover images by Bonnie MacBird <figure, front cover>
Cover images by Shutterstock.com <all other images>) 


本作品「シャーロック・ホームズのクリスマス冒険 / 御使いうたいて(A Sherlock Holmes Christmas / What Child Is This?)」は、米国の小説家であるボニー・マクバード(Bonnie MacBird)が2022年に発表したものである。


サンフランシスコ(San Francisco)出身のボニー・マクバードは、スタンフォード大学(Stanford University)において、音楽の学士号と映画の修士号を取得した後、ハリウッド(Hollywood)において、脚本家およびプロデューサーとして、長らく活躍し、エミー賞(Emmy Awards)を3回、そしてmCine Golden Eagles 賞を11回受賞。また、彼女は、SF 映画「トロン(TRON)」(1982年)の原案・原作者としても知られている。

なお、本作品は、小説家としての処女作に該る「シャーロック・ホームズの冒険 / 芸術家の血(A Sherlock Holmes Adventure / Art in the Blood → 2022年4月17日 / 4月23日 / 4月30日付ブログで紹介済)」(2015年)や第2作目に該る「シャーロック・ホームズの冒険 / 不穏な蒸留酒(A Sherlock Holmes Adventure / Unquiet Spirits → 2022年5月22日 / 5月28日 / 6月3日 / 11月29日付ブログで紹介済)」(2017年)等に続く第5作目である。


本作品のタイトルに該る「御使いうたいて(What Child Is This?)」とは、イングランドの伝統的な民謡「グリーンスリーヴス(Greensleeves)」の旋律に合わせて、英国の作詞家であるウィリアム・チャタート・ディックス(William Chatterton Dix:1837年ー1898年)が歌詞を付したクリスマスキャロルのことである。


イングランドの伝統的な民謡「グリーンスリーヴス」の旋律に合わせて、
英国の作詞家ウィリアム・チャタート・ディックスが付した
「御使いうたいて」の歌詞
(Illustrations by Frank Cho /
1971年に韓国のソウル生まれのイラストレーター)

1890年の12月13日、ジョン・H・ワトスンは、ベーカーストリート221B(221B Baker Street → 2014年6月22日 / 6月29日付ブログで紹介済)に居た。

彼の妻メアリー(Mary)は、夫を最近亡くした友人を慰めるために、チェスター(Chester)へ絵かけていたので、妻が不在の間、ワトスンは、シャーロック・ホームズの元に滞在していたのである。


クリスマス休暇が近いロンドンの雰囲気に全く馴染めず、また、面白い事件がないホームズは、非常に不機嫌の上、苛立っていた。

そんなホームズを、ワトスンは、ローストビーフサンドウィッチを食べに、外へ連れ出す。


ローストビーフサンドウィッチを食べて、ベーカーストリート221Bへ戻る途中、
シャーロック・ホームズとジョン・H・ワトスンの2人は、
オックスフォードストリートにおいて、子供の誘拐現場に遭遇する。
(Illustrations by Frank Cho)

食事を終えたホームズとワトスンの2人が、オックスフォードストリート(Oxford Street → 2016年5月28日付ブログで紹介済)からベーカーストリート(Baker Street → 2016年10月1日付ブログで紹介済)へと戻る途中、子供の誘拐現場に遭遇する。

2人は、誘拐犯から子供を助けると、ホームズは、逃走する犯人の後を追った。一方、ワトスンは、母親、子供とメイドの3人を馬車に乗せると、母親にホームズのカードを渡した。生憎と、ワトスンが母親に名前を尋ねる前に、馬車が走り出してしまった。ホームズは、ワトスンの元へ戻って来たが、残念ながら、犯人には逃げられてしまったようだ。


ベーカーストリート221Bに戻ったホームズとワトスンの元を、ブランベリー侯爵(Marquis of Blanbury)のヘンリー・ウェザーリング(Henry Weathering)が訪れた。

ウェザーリング家には、長男のロバート(Robert)、次男のランドルフ(Randolf)と三男のレジナルド(Reginald - 21歳)が居たが、芸術や音楽に造詣が深く、スポーツをあまり好まないレジナルドが、父母のお気に入りだった。

ブランベリー侯爵は、レジナルドに、昨年のクリスマスプレゼントとして、ロンドンのメイフェア地区(Mayfair)にフラットを買い与え、レジナルドが13歳の時から仕えているジョージ・パーキンス(George Perkins)を執事(valet)に据えた。

彼によると、10月からレジナルドとの連絡がとれなくなった上に、その後、レジナルドとジョージの2人は、行方不明になった、とのこと。更に、現在、同フラットには、別のカップルが住んでいるようで、彼がフラットを訪れても、中にはいれてもらえなかった、と言う。

そのため、ブランベリー侯爵は、ホームズに対して、三男レジナルドの行方を調べてほしいと依頼した。


ブランベリー侯爵からの話を聞いたホームズは、調査費用として、200ポンドを請求した。

ブランベリー侯爵は、直ぐに、前金として、100ポンドの小切手をホームズに渡す。

高額な費用に驚くワトスンに対して、ホームズは、「引越費用に困っているへフィー(Heffie - Miss Hephzibah O’Malley / 第3作目の「Devil’s Due」に登場した人物で、探偵としての能力が高い少女)に、ブランベリー侯爵の三男レジナルドの行方を調べる仕事を任せ、その報酬として、200ポンド全額を渡すつもりだ。」と告げた。


シャーロック・ホームズは、探偵としての能力が高いへフィーに対して、
ブランベリー侯爵の三男レジナルドの行方を調べる仕事を任せることにした。
(Illustrations by Frank Cho

ホームズは、どうやら、ブランベリー侯爵の三男レジナルドの行方よりも、先程、オックスフォードストリートで遭遇した誘拐未遂事件のことが、非常に気になるようだった。


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