2025年9月2日火曜日

ロンドン ダリッジピクチャーギャラリー(Dulwich Picture Gallery)- その1

サー・ジョン・ソーンが設計した
ダリッジピクチャーギャラリーの建物外観
<筆者撮影>


今回は、英国の新古典主義を代表する建築家となり、1788年10月16日に、英国の建築家 / 彫刻家であるサー・ロバート・テイラー(Sir Robert Taylor:1714年ー1788年)の後を継いで、イングランド銀行(Bank of England → 2015年6月21日 / 6月28日付ブログで紹介済)の建築家に就任し、その後、1833年まで45年間にわたり、その任を務めたサー・ジョン・ソーン(Sir John Soane:1753年ー1837年 → 2025年6月24日 / 6月28日 / 7月9日付ブログで紹介済)が設計したダリッジピクチャーギャラリー(Dulwich Picture Gallery)について、紹介したい。


英国の肖像画家であるサー・トマス・ローレンス
(Sir Thomas Lawrence:1769年ー1830年)が描いた
「サー・ジョン・ソーン(76歳)の肖像画 (Portrait of Sir John Soane, aged 76)」
(1828年ー1829年)
の絵葉書
Oil on canvas 
<筆者がサー・ジョン・ソーンズ博物館で購入>

ダリッジピクチャーギャラリーの入口
<筆者撮影>


ダリッジピクチャーギャラリーは、テムズ河(River Thames)の南岸にあるロンドンの特別区の一つであるサザーク区(London Borough of Southwark)ダリッジ地区(Dulwich)内に所在する美術館である。


ナショナルポートレートギャラリー
(National Portrait Gallery)で販売されている
エリザベス1世の肖像画の葉書
(Unknown English artist / 1600年頃 / Oil on panel
1273 mm x 997 mm) -
エリザベス1世は、王族しか着れない
イタチ科オコジョの毛皮をその身に纏っている。
オコジョの白い冬毛は、「純血」を意味しており、
実際、エリザベス1世は、英国の安定のために、
生涯、誰とも結婚しなかったので、「処女女王」と呼ばれた。
エリザベス1世の」赤毛」と「白塗りの化粧」は、
当時流行したものである。


まず最初に、歴史は、イングランドとアイルランドの女王で、テューダー朝(House of Tudor)の第5代かつ最後の君主であるエリザベス1世(Elizabeth I:1533年ー1603年 在位期間:1558年-1603年)の統治時代まで遡る。


2012年のロンドンオリンピック / パラリンピックの際、
ロンドンの観光名所約60箇所に、
その場所をテーマにしたマスコットのウェンロック(Wenlock) / 
マンデヴィル(Mandeville)が設置された。
写真は、ビショップスゲート通り沿いに設置された
ビショップスゲートウェンロック(Bishopsgate Wenlock)
<筆者撮影>


ロンドンのビショップスゲート地区(Bishopsgate → 2017年9月24日 / 10月14日付ブログで紹介済)に出生したエドワード・アレン(Edward Alleyn:1566年ー1626年)は、エリザベス朝時代の演劇界において、俳優(活動期間:1583年ー1604年)として活躍し、重要人物となる。


ダリッジ村(Dulwich Village)内のダリッジビレッジ通りの標識
<筆者撮影>

ダリッジ村内の環状交差点 -
画面左の方向にあるカレッジロード(College Road)へ進むと、
ダリッジピクチャーギャラリーへと至る。
<筆者撮影>


また、彼は、1592年に結婚したジョーン・ウッドワード(Joan Woodward:1592年ー1623年)の義父で、劇場経営主であるフィリップ・ヘンズロー(Philip Henslowe:1550年ー1616年)と一緒に事業を始め、ローズ劇場(Rose Theatre)やフォーチュン劇場(Fortune Theatre)等を所有。


ダリッジビレッジ通り沿いに設置されている「神の賜物カレッジ」の説明板
<筆者撮影>

カレッジロード沿いに建てられている行き先表示用標識
<筆者撮影>


エドワード・アレンは、事業で得た富を使い、1605年にフランシス・カルトン卿からダリッジの荘園を購入して、「神の賜物カレッジ(College of God’s Gift)」を創設した。また、同カレッジの隣りに、社会的弱者のための私設救貧院(almshouse)も開設。

同カレッジは、当初、男子専科であったが、後に、「ダリッジカレッジ(Dulwich College)」、「アレン学校(Alleyn’s School)」と「ジェイムズ・アレン女学校(James Allen’s Girls’ School)」の3つに分かれた。

エドワード・アレンは、イングランドの国王 / 女王の肖像画を含む美術品をダリッジカレッジに遺贈している。


ダリッジ村内に設置されている
エドワード・アレン記念碑(Memorial to Edward Alleyn)(その1)
<筆者撮影>

エドワード・アレン記念碑は、
エドワード・アレンがダリッジの荘園を購入して、
1605年に「神の賜物カレッジ」を創設した400周年を記念して、
彫刻家のルイーズ・シムスン(Louise Simson)が2005年に制作したもの。
<筆者撮影>


上記に加えて、17世紀に活躍した俳優であるウィリアム・カートライト(William Cartwright:1606年-1686年)も、1686年に200点を超える絵画をダリッジカレッジに遺贈した結果、ダリッジカレッジは膨大な絵画コレクションを保有することになった。


ダリッジ村内に設置されているエドワード・アレン記念碑(その2)
<筆者撮影>

ダリッジ村内に設置されているエドワード・アレン記念碑(その3)
<筆者撮影>


そして、時代は、18世紀後半 / 19世紀前半へと下る。


2025年9月1日月曜日

コナン・ドイル作「技師の親指」<グラフィックノベル版>(The Engineer’s Thumb by Conan Doyle )- その1

コナン・ドイル作「技師の親指」のグラフィックノベル版のタイトル


サー・アーサー・イグナティウス・コナン・ドイル(Sir Arthur Ignatius Conan Doyle:1859年ー1930年)作「技師の親指(The Engineer’s Thumb → 2025年8月22日 / 8月24日 / 8月27日 / 8月28日 / 8月29日付ブログで紹介済)」は、シャーロック・ホームズシリーズの短編小説56作のうち、9番目に発表した作品で、英国の「ストランドマガジン(The Strand Magazine)」の1892年3月号に掲載された。

同作品は、1892年に発行されたホームズシリーズの第1短編集「シャーロック・ホームズの冒険(The Adventures of Sherlock Holmes)」に収録されている。


米国ウィスコンシン州の Eureka Productions 社が2005年に発行した
「Graphic Classics : Arthur Conan Doyle (Revised Second Edition)」の表紙
挿画:
米国の漫画家 / イラストレーターのリック・ギアリー(1946年ー)

「技師の親指」には、グラフィックノベル版が存在している。「技師の親指」のグラフィックノベル版は、米国ウィスコンシン州の Eureka Productions 社が2005年に発行した「Graphic Classics : Arthur Conan Doyle (Revised Second Edition)」の中に収録されている。


「Graphic Classics : Arthur Conan Doyle」に収録されている「技師の親指」のグラフィックノベル版については、米国オクラホマ州(State of Oklahoma)オクラホマシティー(Oklahoma City)にベースを置くフリーランスの作家であるロッド・ロット(Rod Lott)が構成を、そして、e英国のバース(Bath)ベースを置くイラストレーターであるサイモン・ゲイン(Simon Gane)が作画を担当している。


英国のロイヤルメール(Royal Mail)から
2012年4月10日に発行された記念切手「UK A-Z PART 2」のうち、
バースにあるローマ風呂(Roman Baths)の切手


ロッド・ロット構成 / サイモン・ゲイン作画による「技師の親指」のグラフィックノベル版は、「Graphic Classics : Arthur Conan Doyle」の末尾近くにあり、全部で27ページである。

「技師の親指」のグラフィックノベル版は、ロッド・ロット構成 / サイモン・ゲイン作画によって、コナン・ドイルの原作通り、27ページの中に、非常に手堅くまとめられている。


画面左側から、水力工学技師(hydraulic engineer)のヴィクター・ハザリー(Victor Hatherley)、
ジョン・H・ワトスン、そして、シャーロック・ホームズが描かれている。

ライサンダー・スターク大佐(Colonel Lysander Stark)が、

ヴィクター・ハザリーの事務所を訪れた場面が描かれている。

ライサンダー・スターク大佐は、エリーゼと呼ばれる謎の女性からは、

「フリッツ(Fritz)」と呼ばれていた。

画面左側の人物が、ヴィクター・ハザリーで、

画面右側の人物が、ライサンダー・スターク大佐。


ライサンダー・スターク大佐に案内された部屋で、ヴィクター・ハザリーが一人で待っていると、
美しい女性が突然部屋に入って来て、此処から直ぐに帰るよう、片言の英語で警告した
ライサンダー・スターク大佐から、エリーゼ(Elise)と呼ばれていた。

ライサンダー・スターク大佐が、ヴィクター・ハザリーに対して、
自分の秘書兼マネージャーであるファーガスン氏(Mr Ferguson)を紹介する場面が描かれている。
画面左側から、ヴィクター・ハザリー、ライサンダー・スターク大佐、そして、ファーガスン氏。
バークシャー州(Berkshire)アイフォード(Eyford)の地元において、
ファーガスン氏は、「ベッカー医師(Dr. Becher)」と呼ばれていた。

シャーロック・ホームズ、ジョン・H・ワトスン、ヴィクター・ハザリーと
スコットランドヤードのブラッドストリート警部(Inspector Bradstreet)の4人が、
汽車で、レディング(Reading)経由、アイフォード駅へと向かう場面が描かれている。
画面左側から、ホームズ、ワトスン、ヴィクター・ハザリー、そして、ブラッドストリート警部。
コナン・ドイルの原作の場合、上記の4人に加えて、
スコットランドの私服警官(a plain-clothes man)が1名帯同している。

なお、「Graphic Classics : Arthur Conan Doyle」には、米国の漫画家でイラストレーターでもあるリック・ギアリー(Rick Geary:1946年ー)が構成と作画の両方を担当した「ぶな屋敷(The Copper Beeches → 2022年7月31日 / 8月15日 / 8月21日 / 8月25日付ブログで紹介済)」のグラフィックノベル版(→ 2022年8月31日付ブログで紹介済)も収録されている。

リック・ギアリーは、米国ミズーリ州(State of Missouri)カンサスシティー(Kansas City)の出身で、全米漫画家協会(National Cartoonist Society)から、1994年に「Magazine and Book Illustration Award」を、そして、2017年に「Graphic Novel Award」を受賞している。