2022年4月13日水曜日

チャールズ・キングストン作「ピカデリーの殺人」(Murder in Piccadilly by Charles Kingston)

大英図書館(British Library)から2015年に出版された
チャールズ・キングストン作「ピカデリーの殺人」の表紙
(Front cover : NRM / Pictorial Collection / Science Picture Library)


「ピカデリーの殺人(Murder in Piccadilly)は、アイルランドのコーク州(County Cork)ミッチェルズタウン(Mitchelstown)出身のジャーナリスト兼作家であるチャールズ・キングストン・オマホニー(Charles Kingston O’Mahony:1884年ー1944年)が1936年に発表した推理小説である。

チャールズ・キングストン・オマホニーは、1912年にチャールズ・オマホニー(Charles O’Mahony)名義で「アイルランドの総督達(The Viceroys of Ireland)」を発表した後、執筆名義をチャールズ・キングストン(Charles Kingston)に変えて、ノンフィクションの作品を数多く世に出した。

その後、彼は推理作家へと転じて、1921年から亡くなる1944年までの約四半世紀の間に、20作を超える推理小説を発表している。


「ピカデリーの殺人」には、スコットランドヤードのハリー・ウェイク主任警部(Chief Inspector Harry Wake)が初登場し、以降、本作品を含めて、7作で活躍する。


大英図書館から2015年に出版された
チャールズ・キングストン作「ピカデリーの殺人」の裏表紙

若きロバート・チェルドン(Robert Cheldon  通称:ボビー(Bobbie))は、母親のルビー・チェルドン(Ruby Cheldon)と二人暮らしで、亡くなった父方の伯父である大富豪のマッシー・チェルドン(Massy Cheldon)から生活の援助を受けていた。


怠惰で、あまり聡明でもないボビーは、ソーホー地区(Soho)にある行きつけのナイトクラブ「Frosen Fang」のダンサーであるナンシー・カーゾン(Nancy Curzon)に首ったけとなり、生活の糧がないにもかかわらず、彼女との結婚を夢見るようになる。ナンシーも、ボビーに対して興味を示すが、彼女が本当に興味があったのは、ボビー本人ではなく、ボビーが伯父から相続する遺産の方だった。


ボビーからナンシーの話を聞いた伯父のマッシー・チェルドンは、ボビーとナンシーの結婚に、大反対の意を表明した。ボビーがナンシーと結婚するのであれば、「生活の援助を打ち切る上に、自分の遺産相続人からも外す。」と、マッシー・チェルドンは、ボビーに対して、通告する。

一方、ボビー経由、マッシー・シェルドンの話を聞いたナンシーとしては、伯父から遺産を相続できないボビーには、全く興味がなかった。

ナンシーと伯父のマッシー・シェルドンの間で、ボビーは膠着状態に陥ってしまった。

そんなボビーに対して、ナイトクラブ「Frosen Fang」を取り仕切る強欲なノーシー・ルスリン(Nosey Ruslin)は、自分の懐を肥やすべく、ある計画を吹き込むのであった。


そして、ある日、大富豪のマッシー・チェルドンが、地下鉄の構内において、心臓を刺されて死亡しているのが発見された。

捜査のため、スコットランドヤードのハリー・ウェイク主任警部が派遣される。


本作品は、全体で300ページ強であるが、ボビーの伯父で、大富豪であるマッシー・シェルドンが心臓を刺されて死亡するのが、半分を過ぎた辺りである。話自体は割合と読みやすいものの、前半の約150ページの間、ナンシーと伯父のマッシー・シェルドンの間で膠着状態に陥ってしまったボビーが、ナイトクラブ「Frosen Fang」のノーシー・ルスリンからある計画を吹き込まれ、どうするべきか迷う話がずーっと続く。物語のプロセスとして必要なことは分かるが、正直ベース、やや長過ぎるように感じた。


また、マッシー・チェルドンが心臓を刺されて死亡しているのが発見された後、スコットランドヤードのハリー・ウェイク主任警部が派遣され、捜査が始まるが、具体的な決め手に欠けて、捜査があまり進展しない。

物語の終盤、急転直下、事件は解決するが、事件の真相としては、こちらも、正直ベース、本格推理小説ファンには、今一つという感じである。


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