2022年2月20日日曜日

アラン・メルヴィル作「スラックリー屋敷での週末」(Weekend at Thrackley by Alan Melville)

大英図書館(British Library)から2018年に出版された
アラン・メルヴィル作「スラックリー屋敷での週末」の表紙


「スラックリー屋敷での週末(Weekend at Thrackley)」は、英国の推理作家で、プロデューサー、劇作家や脚本家でもあったアラン・メルヴィル(Alan Merville:1910年-1983年)が、1934年に発表した推理小説である。


アラン・メルヴィル(本名:ウィリアム・メルヴィル・カヴァーヒル(William Merville Caverhile))は、イングランド北部のノーサンバーランド州(Northumberland)内を流れるツイード川(River Tweed)の河口に位置するベリック・アポン・ツイード(Berwick-upon-Tweed)に出生。

学校を出た後、彼は家族が経営する材木会社に入るが、仕事が合わなかったため、独立するべく、自宅を出ると、ベリック・アポン・ツイード内のホテルに居を構えた。そして、彼は、材木会社で勤務する一方、夜間、タイプライターを使って、小説を書き続けた。

まもなく、子供向けの短編が BBC によって採用され、その後、詩や小説等も続き、1934年に発表した本作が商業的な成功を収めたので、彼は、材木会社を辞めて、作家業に専念することになった。


大英図書館から2018年に出版された
アラン・メルヴィル作「スラックリー屋敷での週末」の裏表紙

「スラックリー屋敷での週末」の主人公であるジェイムズ・ヘンダースン(James Henderson - 愛称:ジム(Jim))は、バートラム夫人(Mrs. Bertram)が営む下宿に住んでいた。

ジムは、学校を出た後、(第一次世界大戦(1914年-1918年)に)従軍した。彼は、大尉(Captain)まで昇進し、無傷で戦争から戻って来たが、不幸なことに、従軍中に、彼の母は死去していた。残念ながら、従軍経験は、孤族になった彼にとって、日常生活を送る上で、何のプラスにもならず、なかなか仕事が見つからず、仮に見つかっても、長くは続かないという状況が続いていた。


そんなある日、ジムは、サリー州(Surrey)ノースアダリー(North Adderly)に所在するカントリーハウスのスラックリー(Thrackley)屋敷に住むエドウィン・カースン(Edwin Carson)から手紙を受け取る。

ジムは、エドウィン・カースンという名前には心当たりはなかったが、手紙によると、エドウィン・カースンは、ジムの父親と親友で、ジムの父親エドワード・ヘンダースン(Edward Henderson)が亡くなるまで、南アフリカで一緒に住んでいたとのこと。また、エドウィン・カースンは、イングランドに来た際に、ジム本人にも、1-2回会ったことがあると言う。

エドウィン・カースンは、最近、海外からイングランドに戻って来たところで、暫くの間、サリー州の屋敷に滞在する予定なので、ジムに対して、次の週末、サリー州の屋敷に遊びに来るよう、打診してきたのである。

エドウィン・カースンのことを思い出せないジムであったが、何も予定がない彼は、エドウィン・カースンの招待を受けることにした。


ジムが、ストランド通り(Strand)にある紳士クラブ「グラハムズ(Graham’s)」に行くと、そこで親友のフレディー・アッシャー(Freddie Usher)に会った。

フレディーによると、驚くことに、エドウィン・カースンは、宝石の蒐集家として、世界的に非常に有名な人物だ、とのことだった。ジムの話に興味を覚えたフレディーは、自分の車で、ジムをサリー州のスラックリー屋敷まで送っていく、と申し出る。


スラックリー屋敷に到着したジムとフレディーの二人は、執事のジェイコブスン(Jacobson)の出迎えを受ける。招待主であるエドウィン・カースンと会ったジムは、自分と父親とエドウィン・カースンは、南アフリカの刑務所において、知り合いになったという衝撃の事実を聞かされる。

また、ジムとフレディー以外に、その週末、スラックリー屋敷には、数名のゲストが招待されており、彼ら全員が宝石を蒐集する裕福な人物であることが判る。

ジムは、何故、そういったゲストと一緒に、自分が招待されたのか、大きな疑問を感じるのであった。


そして、その週末、ある事件が発生し、最終的に、ジムは、自分の過去と向き合うことになる。


ジムとフレディーの掛け合いを含めて、読みやすくなっているが、内容的には、推理小説と言うよりは、どちらかと言うと、推理的な要素を伴ったドラマに近いのではないかと思う。本作は、英国における「推理小説の黄金時代」と言われる1920年代から1940年代にかけて登場した作品の一つではあるが、黄金時代の主流となった本格推理小説を期待して読むと、若干、期待外れに終わる可能性がある。


0 件のコメント:

コメントを投稿