2021年7月4日日曜日

コナン・ドイル作「ソア橋の謎」<英国 TV ドラマ版>(The Problem of Thor Bridge by Conan Doyle

英国の俳優であるジェレミー・ブレットが主人公のシャーロック・ホームズを演じた
英国のグラナダテレビジョン制作の「シャーロック・ホームズの冒険」の
「ソア橋の謎」における1場面 -
シャーロック・ホームズ博物館(Sherlock Holmes Museum)において、絵葉書として販売されていた。
ホームズが活躍した当時、馬車が主流であったが、本作品では、シリーズ初の自動車が画面上に登場する。
画面左端の人物は、ダニエル・マッシーが演じる米国の元上院議員で、金鉱王のニール・ギブスンで、
左から2番目の人物が、ジェレミー・ブレットが演じるホームズである。
なお、厳密に言うと、映像上、このような場面は存在していない。

サー・アーサー・イグナティウス・コナン・ドイル(Sir Arthur Ignatius Conan Doyle:1859年ー1930年)作「ソア橋の謎(The Problem of Thor Bridge)」は、シャーロック・ホームズシリーズの短編小説56作のうち、46番目に発表された作品で、英国では、「ストランドマガジン(The Strand Magazine)」の1922年2月号 / 3月号に、また、米国では、「ハースイ インターナショナル」の1922年2月号 / 3月号に掲載された。

また、同作品は、1927年に発行されたホームズシリーズの第5短編集「シャーロック・ホームズの事件簿(The Casebook of Sherlock Holmes)」に収録された。


本作品は、英国のグラナダテレビ(Granada Television Limited)が制作した「シャーロック・ホームズの冒険(The Adventures of Sherlock Holmes)」(1984年ー1994年)において、TV ドラマとして映像化された。具体的には、第5シリーズ(The Casebook of Sherlock Holmes)の第2エピソード(通算では第28話)として、1990年に撮影の上、英国では、1991年2月28日に放送されている。


配役は、以下の通り。


(1)シャーロック・ホームズ → ジェレミー・ブレット(Jeremy Brett:1933年ー1995年)

(2)ジョン・ワトスン → エドワード・ハードウィック(Edward Hardwicke:1932年ー2011年)

(3)ビリー(Billy) → Dean Magri


(4)ニール・ギブスン(Neil Gibson:米国の元上院議員で、金鉱王) → Daniel Massy

(5)マリア・ギブスン(Maria Gibson:ニールの妻) → Celia Gregory

(6)グレイス・ダンバー(Grace Dunbar:ギブスン夫妻の子供達の家庭教師) → Catherine Russell

(7)ファーガスン氏(Mr. Ferguson:ニールの秘書) → Stephen Macdonald

(8)マーロウ・ベイツ(Marlow Bates:ギブスン夫妻の屋敷の管理人) → Niven Boyd

(9)ジョイス・カミングス(Joyce Cummings, Q.C.:ダンバー嬢の弁護士) → Philip Bretherton

(10)コヴェントリー巡査部長(Sergeant Coventry:地元の警察官) → Andrew Wilde


TV ドラマ版のストーリーは、概ね、コナン・ドイルによる原作と同様であるが、以下のような相違点がある。


(1)

本作品の事件発生年月は、原作上、ある年(識者の間では、1900年と言われている)の10月になっており、馬車が移動手段の主流であったが、TV ドラマ版の場合、ニール・ギブスンは、米国の大富豪らしく、馬車ではなく、運転手付きの自動車(シリーズ初)を、移動手段として用いている。運転手付きの自動車は、ロンドンでも、なお、彼の地元であるハンプシャー州(Hampshire)でも、登場している。なお、コナン・ドイルの原作において、ニール・ギブスンの移動手段は、特に明記されていない。


(2)

コナン・ドイルの原作において、ホームズから「あなたは、真実を話していない。」と言われて、激怒したニール・ギブスンは、一旦、ベーカーストリート221Bを出て行ってしまうが、頭を冷やすと、暫くして、ホームズの元に戻って来る。TV ドラマの場合、午前11時にホームズを訪問したニール・ギブスンは、原作と同様に、ホームズの態度に激怒して、部屋を去ってしまう。ホームズは、「He’s sure to come back. He must come back.」と言って、午後4時までニールの戻りを待つものの、ホームズの予想に反して、結局、彼は戻って来なかった。「I fear I have made a serious misjudgement.」と言って、落ち込むホームズであったが、ワトスンは、「The senator may not have returned, but surely his letter has engaged you on behalf of Miss Dunbar. She’s the one in need. Might we not pay her a visit ?」と言って、ホームズを励まし、二人で独自に事件の捜査を開始することになる。


(3)

コナン・ドイルの原作において、ホームズとワトスンの二人は、以下のように移動する。


<当日>

ロンドン:ベーカーストリート221B(ニール・ギブスンは、ここで物語から退場してしまい、これ以降、全く登場しない。)

ハンプシャー州:ソアプレイス(Thor Place)

・地元の警察署兼コヴェントリー巡査部長の自宅

・ソア橋(Thor Bridge)

・ギブスン夫妻の屋敷


<翌日>

ハンプシャー州:ソアプレイス

ハンプシャー州:ウィンチェスター(Winchester - カミングス弁護士と一緒に、ダンバー嬢と面会する。)

ハンプシャー州:ソアプレイス

・地元の警察署兼コヴェントリー巡査部長の自宅

・村の売店(ここで、ホームズは、あるものを購入する。)

・ソア橋

・村の宿(ホームズは、ワトスンに対して、事件の種明かしを行う。)


TV ドラマ版の場合、ホームズとワトスンの二人は、以下のように移動する。


ロンドン:ベーカーストリート221B

ハンプシャー州:ウィンチェスター(カミングス弁護士と一緒に、ダンバー嬢と面会するが、ロンドンから自動車で地元に戻って来たニール・ギブスンとファーガスン秘書が邪魔に入る。)

ハンプシャー州:ソアプレイス

・ソア橋(ホームズ、ワトスンとコヴェントリー巡査部長の3人は、現場まで自転車でやって来る。)

・ギブスン夫妻の屋敷(管理人のベイツに屋敷内を案内してもらうが、またもや、ニール・ギブスンが介入してくる。その後、庭に出て、ホームズとニール・ギブスンの二人が、アーチェリーの腕前を競うという原作にはない場面も挿入されている。ニール・ギブスンは、右腕で矢を2回放ち、一方、ホームズは、左腕で矢を2回放つが、二人の腕前はほぼ同じであった。)

・ソア橋(ホームズとワトスンの二人は、再度、自転車で現場まで戻って来る。)

ハンプシャー州:ウィンチェスター(再度、ダンバー嬢と面会する。)

ハンプシャー州:ソアプレイス

・ソア橋(上記とは異なり、ホームズ、ワトスンとコヴェントリー巡査部長の3人は、現場まで馬車でやって来る。途中、運転手付きの自動車に乗ったニール・ギブスンと行き交う。そして、現場において、ホームズは、ワトスンとコヴェントリー巡査部長に対して、事件の種明かしを全て行う。)


最後は、釈放されたダンバー嬢を乗せて、ニール・ギブスンが、ウィンチェスターから自分の屋敷へと帰る場面が描かれ、物語は終わりを迎えている。


なお、ホームズとワトスンの二人は、いろいろと動き回っているが、1日で済んでいるのか、それとも、原作のように、2日間にわたっているのかは、ハッキリしていない。


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