2021年7月29日木曜日

コナン・ドイル作「三破風館」<小説版>(The Three Gables by Conan Doyle

「ストランドマガジン」の1926年10月号 に掲載された
コナン・ドイル作「三破風館」の挿絵
<ハワード・ケッピー・エルコック(Howard Keppie Elcock:1886年ー1952年)によるイラスト> -
物語の冒頭、親分であるバーニー・ストックデイルの指示を受けて、
ボクサーのスティーヴ・ディクシーがベーカーストリート221Bに押しかけて来て、
シャーロック・ホームズに対して凄む場面が描かれている。
画面手前に、ジョン・H・ワトスンが、
画面奥の左側にスティーヴ・ディクシー、そして、画面奥右側にホームズが描かれている。


英国の作家であるガイ・アダムス(Guy Adams:1976年ー)が2011年に発表した「シャーロック・ホームズ / 神の息吹(Sherlock Holmes / The Breath of God → 2021年6月23日 / 6月30日 / 7月10日付ブログで紹介済)」に登場するゴシップ屋のラングデイル・パイク(Langdale Pike → 2021年7月17日付ブログで紹介済)は、元々、シャーロック・ホームズシリーズの作者であるサー・アーサー・イグナティウス・コナン・ドイル(Sir Arthur Ignatius Conan Doyle:1859年ー1930年)が発表した短編小説「三破風館(The Three Gables)」に登場する人物である。


「三破風館」は、ホームズシリーズの56ある短編小説のうち、51番目に発表された作品で、米国では、「リバティー(Liberty)」の1926年9月18日号に、また、英国では、「ストランドマガジン(The Strand Magazine)」の1926年10月号に掲載された。そして、ホームズシリーズの第5短編集である「シャーロック・ホームズの事件簿(The Casebook of Sherlock Holmes)」(1927年)に収録された。


ジョン・H・ワトスンは、数日振りにベーカーストリート221B(221B Baker Street)のホームズの元を訪れた。朝から珍しく機嫌のよいシャーロック・ホームズが、ワトスンに対して、現在自分のところに来ている依頼のことを話そうとした際、大柄で、黒人のボクサーであるスティーヴ・ディクシー(Steve Dixie)が、ホームズの元へいきなり押しかけて来るという場面で、「三破風」の幕が開ける。

スティーヴは、ホームズに対して、「ハロー(Harrow)の件からは、手を引け!」と凄む。ホームズが推測するところ、スティーヴが押しかけて来ているのは、彼の親分であるバーニー・ストックデイル(Barney Stockdale)による差し金のようである。


ハローウィールド(Harrow Weald)の「三破風館(The Three Gables)」に住む年配のメアリー・メイバリー夫人(Mrs. Mary Maberley)は、夫のモーティマー(Mortimer Maberley)を既に亡くしている上に、1ヶ月程前に、息子のダグラス(Douglas Maberley)が、肺炎のため、ローマで世を去っていた。

メイバリー夫人が三破風館に住み始めた以降、1年以上、近所との付き合いはなかったが、最近、屋敷を高く買い取りたいという申し出を突然に受ける。彼女が弁護士のスートロ氏(Mr. Sutro)に相談したところ、この申し出は、「彼女の身の回りのものを含めた全て」という条件付きであり、彼女が大事にしている宝石も、屋敷から全く持ち出せないことになっていたため、彼女としては納得できなかった。


ホームズとワトスンの二人がメイバリー夫人の話を聞いていたが、ホームズは急に立ち上がると、ドアの外で立ち聞きしていたメイドのスーザン(Susan)を捕まえる。メイドのスーザンは、バーニー・ストックデイルの手先として、メイバリー夫人の屋敷の中に入り込んでいたのである。どうやら、バーニー・ストックデイルの背後には、更に、黒幕が潜んでいるらしい。


メイバリー夫人の話を聞いたホームズは、最近屋敷に届いたものが怪しいと考え、ローマで亡くなった夫人の息子ダグラスの荷物に注目した。更に、ホームズは、「世間の醜聞全般についての生き字引」と呼ばれるラングデイル・パイクを、彼がメンバーとなっているセントジェイムズストリート(St. James’s Street → 2021年7月24日付ブログで紹介済)にあるクラブに訪ねて、最新の情報を得る。


ホームズが次の行動を起こす前に、三破風館に強盗達が侵入して、メイバリー夫人が襲われる。幸いにして、メイバリー夫人に大きな怪我はなく、高価なものは何も盗まれなかったが、強盗達は、夫人の息子ダグラスがローマから送ってきた荷物を持ち去ってしまった。

その際、強盗達がメイバリー夫人と揉み合った拍子に、小説の最後の1ページと思われるものを、彼らは落としていた。これを読んだホームズは、事件の内容を全て理解したのである。


物語の冒頭、ベーカーストリート221Bにいきなり現れて、脅しをかけてきた黒人のボクサーであるスティーヴに対して、また、物語の中盤、三破風館の近くで再度出会ったスティーヴに対して、ホームズが人種差別的な発言をする描写がある。ここに、当時の英国や作者であるコナン・ドイルの価値観が見え隠れするが、ホームズによるこの発言は、未だに、ファンの間では、論議の的となっている


物語の終盤、ホームズは、事件の黒幕の人物との間で、ある取引を行うが、結果として、ホームズは、示談により黒幕の犯罪を見逃してしまう。実際、ホームズシリーズの中では、こういったケースが、いくつか散見される。


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