2021年7月17日土曜日

ラングデイル・パイク(Langdale Pike)

「ストランドマガジン」の1926年10月号 に掲載された
コナン・ドイル作「三破風館」の挿絵
<ハワード・ケッピー・エルコック(Howard Keppie Elcock:1886年ー1952年)によるイラスト> -
画面左側から、ボクサーのスティーヴ・ディクシー(Steve Dixie)、
シャーロック・ホームズ、そして、ジョン・H・ワトスンが描かれている。
残念ながら、ラングデイル・パイク自身は、「ストランドマガジン」誌上、描かれていない


英国の作家であるガイ・アダムス(Guy Adams:1976年ー)が2011年に発表した「シャーロック・ホームズ / 神の息吹(Sherlock Holmes / The Breath of God → 2021年6月23日 / 6月30日 / 7月10日付ブログで紹介済)」に登場するゴシップ屋のラングデイル・パイク(Langdale Pike)は、元々、シャーロック・ホームズシリーズの作者であるサー・アーサー・イグナティウス・コナン・ドイル(Sir Arthur Ignatius Conan Doyle:1859年ー1930年)が発表した短編小説「三破風館(The Three Gables)」に登場する人物である。


「三破風館」は、ホームズシリーズの56ある短編小説のうち、51番目に発表された作品で、米国では、「リバティー(Liberty)」の1926年9月18日号に、また、英国では、「ストランドマガジン(The Strand Magazine)」の1926年10月号に掲載された。そして、ホームズシリーズの第5短編集である「シャーロック・ホームズの事件簿(The Casebook of Sherlock Holmes)」(1927年)に収録された。


ラングデイル・パイクは、以下の通り、「三破風館」の中盤に登場する。


‘… Now, Watson, this is a case for Langdale Pike, and I am going to see him now. When I get back I may be clearer in the matter.’

I saw no more of Holmes during the day, but I could well imagine how he spent it, for Langdale Pike was his human book of reference upon all matters of social scandal. This strange, languid creature spent his waking hours in the bow window of a St James’s Street club, and was the receiving-station, as well as the transmitter, for all the gossip of the Metropolis. He made, it was said, a four-figure income by the paragraphs which he contributed every week to the garbage papers whcih cater for an inquisitive public. If ever, far down in the turbid depths of London life, there was some strange swirl or eddy, it was marked with automatic exactness by this human dial upon the surface. Holmes discreetly helped Langdale to knowledge, and on occasion was helped in turn.

When I met my friend in his room early next morning, I was conscious from his bearing that all was well, …


「それはそうと、ワトスン、この事件は、ラングデイル・パイク向けの案件だな。そこで、これから彼に会いに行くつもりだ。彼のところから戻って来れば、事件の詳細は、もっと明確になっている筈だ。」

この日、それ以上はホームズを見かけなかったが、彼がどうしたのかは、十分に想像できた。と言うのも、ラングデイル・パイクは、全ての社会的醜聞に関する生き字引だったからだ。この奇妙で無気力な人物は、一日中、セントジェイムズストリートにあるクラブの張り出し窓の中で過ごし、ロンドン中のあらゆるゴシップの受信局であるとともに、送信局にもなっていた。噂によると、彼は、詮索好きな読者を対象にした三流紙に毎週記事を寄稿することで、4桁の収入を稼いでいた。もしロンドンにおける生活の濁った深みのずっと底の方で、何か奇妙な渦が発生すると、水面に居るこの人間羅針盤によって、自動的に、かつ、正確に察知されるのであった。ホームズは、ラングデイル(・パイク)に対して、慎重に情報を与える一方、時々、その見返りとして、彼に協力してもらっていた。

翌日の早朝、ホームズの部屋で彼に会った時、彼の態度から、全てが上手く行ったのだと判った。


ガイ・アダムス作「シャーロック・ホームズ / 神の息吹」において、ゴシップ屋のラングデイル・パイクは、「ホームズの大学時代の友人」という記述があるが、コナン・ドイルの原作上、そこまでの言及はなされていない。


なお、イングランド北西部にあるカンブリア山地(Cumbrian Mountains)中に、Harrison Stickle(733m)と Pile o’-Stickle(709m)という2つの峰があり、「ラングデイル=パイクス(Langdale Pikes)」と呼ばれている。もしかすると、コナン・ドイルは、ゴシップ屋の名前を、上記の峰々から名付けたのかもしれない。


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