2018年4月22日日曜日

<第400回> ロンドン ロンドン塔(Tower of London)-その3

2012年ロンドンオリンピック / パラリンピックのマスコットとして、
ロンドン塔近くに設置されたウェンロック(Wenlock)–
ロンドン塔内で飼育されているワタリガラス(Raven)をテーマにしており、
「レイヴンズ・ウェンロック(Ravens Wenlock)」と命名されている。

ロンドン塔に幽閉されたものの、無事生き残った例としては、テューダー朝第5代にして最後の君主であるエリザベス1世(Elizabeth I:1533年ー1603年 在位期間:1558年ー1603年)が有名である。
彼女の異母姉に該り、カトリック教徒であるテューダー朝第4代のイングランド王メアリー1世(Mary I:1516年ー1558年 在位期間:1553年ー1558年)が同じカトリック教徒であるスペイン王子と結婚することに対する宗教的反発として、1554年にトマス・ワイアット(Sir Thomas wyatt:1521年ー1554年)によるワイアットの乱が勃発したが、後のエリザベス1世はこの反乱に加担したと疑われ、1554年3月18日にロンドン塔に収監された。1558年にメアリー1世が死去したことに伴い、彼女はイングランド女王として即位する。1588年に、エリザベス1世は、アルマダの海戦(Battle of Armada)において、英国侵攻をしてきたスペイン無敵艦隊(Spanish Armada)を撃退し、イングランド繁栄の基礎を築くのである。なお、エリザベス1世は、テューダー朝第2代のイングランド王であるヘンリー8世(Henry VIII:1491年ー1547年 在位期間:1509年ー1547年)と彼の2番目の王妃で、ロンドン塔で処刑されたアン・ブーリン(Anne Boleyn:1507年ー1536年)の娘である。

右側の人物が、
異母姉であるメアリー1世によってロンドン塔に収監された後、
イングランド王として即位し、
1588年にスペイン無敵艦隊を撃退して、
イングランド繁栄の基礎を築いたエリザベス1世

ナショナルポートレートギャラリー
(National Portrait Gallery)で販売されている
エリザベス1世の肖像画の葉書
(Unknown English artist / 1600年頃 / Oil on panel
1273 mm x 997 mm) 

その後、第二次世界大戦(1939年ー1945年)中も、1941年から1944年にかけて、対英和平交渉を結ぶべく、ドイツから単独で飛来して、英国の捕虜となったドイツの政治家 / 国家社会主義ドイツ労働党副総裁であるルドルス・ヴァルター・リヒャルト・ヘス(Rudolf Walter Richard Hess:1894年ー1987年)が収監されている。

ロンドン塔は、現在も、英国王室が使用する宮殿で、正式には、「女王陛下の宮殿にして要塞(Her Majesty’s Royal Palace and Fortress)」と呼ばれている。また、儀礼的な武器等の保管庫や礼拝所等としても使用されている。
1988年にユネスコの世界遺産(文化遺産)に登録され、ロンドン観光の目玉の一つとして、いつも多くの観光客で賑わっている。

ソーホースクエア(Soho Square)内に設置されている
チャールズ2世像

ロンドン塔には、現在、ワタリガラス(Ravenー大型で雑食の鳥)が一定数飼育されている。
王政復古期ステュアート朝のイングランド、スコットランドおよびアイルランドの王であるチャールズ2世(Charles II:1630年ー1685年 在位期間:1660年ー1685年)が、ロンドン塔に多数住み着いていたワタリガラスの駆除を考えていたところ、占い師から「ロンドン塔からワタリガラスがいなくなると、ロンドン塔が崩壊して、ロンドン塔を失った英国が滅びる。」という予言を告げられたため、それ以来、ロンドン塔では、一定数のワタリガラスを飼育する風習が始まったと言われている。

一方で、英国人に非常に人気があるアーサー王(King Arthur)伝説において、アーサー王が魔法によりワタリガラスに姿を変えられたという言い伝えもあり、ワタリガラスを殺すことは、アーサー王への反逆行為に該り、不吉なことが起こると、古くから言われている。

ロンドン塔を背景にした「レイヴンズ・ウェンロック」

現在、ロンドン塔のワタリガラスは、「レイヴンマスター(Ravenmaster)」と呼ばれる役職の英国王室衛士によって飼育されている。当初は、風切り羽を切られて逃げないようにされたワタリガラスが、半ば放し飼いで飼育されていたが、近年、鳥インフルエンザ罹患の恐れから、飼育舎内での飼育へと切り替えられている。

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