2024年4月21日日曜日

高木彬光作「刺青殺人事件」(The Tattoo Murder by Akimitsu Takagi)- その1

英国のプーシキン出版(Pushkin Press)から
2022年に刊行されている
 Pushkin Vertigo シリーズの一つである

高木彬光作「刺青殺人事件」の表紙
(Cover design by Jo Walker)


「刺青殺人事件(The Tattoo Murder)」は、日本の推理作家である高木彬光(Akimitsu Takagi:1920年ー1995年)によるデビュー長編推理小説で、神津恭介(Kyosuke Kamizu)シリーズの第1作目に該る。


青森県青森市の4代続いた医者の家系に生まれた高木彬光(本名:高木誠一)は、幼少時に母親と死別。その後、旧制青森中学校を経て、第一高等学校理科乙類に入学した。ところが、第一高等学校入学の年に父親が亡くなったため、家が破産の上、一家は離散したので、親族の援助で学業を続けた。

東京帝国大学理学部化学科の受験に失敗したため、京都帝国大学へ進み、工学部治金学科を卒業。

卒業後、高木彬光は、中島飛行機に就職したものの、第二次世界大戦(1939年ー1945年)/ 太平洋戦争(1941年ー1945年)の終結により、職を失ってしまう。


職を失った高木彬光は、骨相師の勧めを受け、小説家を志して、「刺青殺人事件」を執筆。


高木彬光は、日本の推理作家である横溝正史(Seishi Yokomizo:1902年ー1981年)による長編推理小説で、金田一耕助(Kosuke Kindaichi)シリーズの第1作目に該る「本陣殺人事件(The Honjin Murders → 2024年3月16日 / 3月21日 / 3月26日 / 3月30日付ブログで紹介済)」(1946年)を読んで、同作において使用されている密室トリックに大きな感銘を受けた一方で、犯行現場となった離れが純日本的構造を必要としていないことに不満を感じた、とのこと。そこで、高木彬光は、純日本的な建築家屋の中で唯一完全に閉鎖的な空間である上に、鍵がかかる浴室を使って、密室トリックを完成させることに挑んだのである。


こうして出来上がった「刺青殺人事件」は、第二次世界大戦 / 太平洋戦争後間もない戦後混乱期の社会情勢を背景としており、妖艶な刺青である自雷也 / 大蛇丸 / 綱出姫の三すくみによる呪い、日本家屋の浴室内における密室殺人や胴体のない死体等、怪奇趣味に彩られた本格推理小説となっている。


その後、「刺青殺人事件」は、1947年に、明智小五郎シリーズ等で有名な日本の推理作家である江戸川乱歩(1894年ー1965年)に激賞されて、出版の運びとなり、翌年の1948年に、岩谷書店から「宝石選書」の第1篇として刊行され、高木彬光は、推理作家としてデビューした。


「刺青殺人事件」は、1953年に日本探偵全集(春陽堂書店)に収録される際に、作者による大幅な改稿が加えられて、約2倍の分量となる大作となっている。

また、その際に、東京帝国大学医学部法医学教室の研究員で、物語の約 2/3 の辺りまで主人公となる松下研三(Kenzo Matsushita)による一人称形式から現在の三人称形式に改められている。


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