2024年4月19日金曜日

江戸川乱歩作「三角館の恐怖」- その3


イヴリン・ペイジ(Evelyn Page:1902年ー1977年)とドロシー・ブレア(Drothy Blair:1903年ー1976年)と言う女性2人のペンネームである米国の推理作家ロジャー・スカーレット(Roger Scarlett)による第4作目の長編推理小説「エンジェル家の殺人(Murder Among the Angells → 2024年4月2日 / 4月5日 / 4月8日付ブログで紹介済)」(1932年)を、明智小五郎シリーズ等で有名な日本の推理作家である江戸川乱歩(Rampo Edogawa:1894年ー1965年)が翻案した「三角館の恐怖」(1951年)の場合、基本的に、「エンジェル家の殺人」と同じように、物語が展開する。



「三角館の恐怖」は、大きく分けると、


*森川 五郎弁護士による右三角館に住む蛭峰 健作の訪問

*亡き父が残した遺言の変更を巡る双子の兄である蛭峰 健作と双子の弟である蛭峰 康造の話し合い

*第1の殺人(被害者:蛭峰 康造)

*第2の殺人(被害者:蛭峰 健作)- エレベーター内の不可能犯罪

*深夜の犯人待ち伏せ


と続いていく。





「エンジェル家の殺人」と同様に、「三角館の恐怖」は、


*物語最後の深夜の犯人待ち伏せ場面のサスペンス

*明かされる犯人の意外性

*犯人による蛭峰 康造 / 蛭峰 健作の殺害動機の設定

*犯人を推理するための鍵となるトリック


等、長所は多い。




江戸川乱歩は、「エンジェル家の殺人」にかなり惚れ込んだようで、推理作家として、


(1)正攻法での物語展開

(2)邸の見取図の使用

(3)蛭峰 健作が被害者となる邸に設置されているエレベーター内の不可能犯罪

(4)読者に対する必要なデータの開示

(5)読者への挑戦状


を行なっている。

「エンジェル家の殺人」の場合、見取図が出てくるのは、かなり後であるが、「三角館の恐怖」の場合、物語の展開に沿う形で、物語の冒頭から、効果的に挿入されている。


ただ、警視庁捜査一課の名探偵と呼ばれる篠警部を初めとする登場人物達には、やや生彩がなく、迫力に欠けている。

筆者が小学生の時、学校の図書館で借りて読んだポプラ社が刊行した少年探偵団シリーズの最終巻に該る「三角館の恐怖」では、シリーズ探偵の明智小五郎が、篠警部に代わって、探偵役を務めており、明智小五郎が登場すると、やはり、物語全体が活気を呈してくると言える。


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