2022年6月3日金曜日

ボニー・マクバード作「シャーロック・ホームズの冒険 / 不穏な蒸留酒」(A Sherlock Holmes Adventure / Unquiet Spirits by Bonnie MacBird) - その3

英国の HarperCollinsPublishers 社から
Collins Crime Club シリーズの1冊として
2018年に出版されたボニー・マクバード作
「シャーロック・ホームズの冒険 / 不穏な蒸留酒」(ペーパーバック版)の裏表紙の一部
Cover Design : HarperCollinsPublishers Ltd.
Cover Images (Figures) : Bonnie MacBird
Cover Images (Map) : Antiqua Print Gallery / Alamy Stock Photo
Cover Images (Textures) : Shutterstock.com


1889年12月、ベーカーストリート221B(221B Baker Street)を訪れたイスラ・マクラーレン(Isla McLaren)と名乗る28歳位の女性が、彼女が居住するスコットランドのブレーデルン城(Braedern Castle - 彼女の義理の父であるサー・ロバート・マクラーレン(Sir Robert McLaren)が所有)において発生した事情(サー・ロバート・マクラーレンの亡くなった妻であるレディーマクラーレン(Lady McLaren)の幽霊出没+メイドのフィオナ・ペイズリー(Fiona Paisley)の失踪)の詳細を調べてほしいと、シャーロック・ホームズに依頼する。ところが、不思議なことに、彼女の訪問当初から、何が気に入らないのか、不機嫌な態度を貫いていたホームズは、彼女の依頼をアッサリと拒絶してしまう。彼としては、翌朝の兄マイクロフト・ホームズ(Mycroft Holmes)との約束の方が、遥かに気にかかっているようだった。


その翌日の午前9時半、シャーロック・ホームズは、ジョン・H・ワトスンを伴って、約束通り、パル・マル通り(Pall Mall → 2016年4月30日付ブログで紹介済)にあるディオゲネスクラブ(Diogenes Club)へと赴き、兄マイクロフトに会った。


マイクロフトによると、南フランスのブドウ園に寄生虫がばら撒かれたため、フランスにおけるワインの生産が75%落ち込んでおり、関係者の間では、密かに、「ネアブラムシ醜聞(Phylloxera Scandal)」と呼ばれている、とのこと。また、南フランスのブドウ園に、寄生虫をばら撒いた容疑者として、フランス農業省の政務次官(Le Sous Secretaire d’Etat a L’Agriculture)であるフィリッペ・レノー(Philippe Reynaud)は、スコットランドのウイスキー蒸留元3箇所を挙げられており、その中には、イスラ・マクラーレンの義理の父であるサー・ロバート・マクラーレンが経営するウイスキー蒸留所も含まれていたのである。

マイクロフトとしては、南フランスのブドウ園に、寄生虫がばら撒き、フランスにおけるワインの生産を落ち込ませることにより、スコットランドのウイスキー蒸留元が、ウイスキーの販売網を拡大させようと暗躍している、と推測していた。このことが公になれば、英国政府としては、フランスとの関係が一気に緊張に陥るため、一大事であった。


よって、マイクロフトは、シャーロックに対して、以下の3点につき、依頼した。


(1)フランス側のポール=エドゥアール・ジャンヴィエ博士(Dr. Paul-Edouard Janvier)と面会の上、南フランスのブドウ園にばら撒かれた寄生虫に関する調査の進展状況を確認して、マイクロフトに連絡すること


(2)博士自身に危害を加えようとする者、あるいは、博士の調査を妨害しようとする者が居るかどうかを調査の上、発見した場合、その計画を阻止すること(実際に、博士自身に危害を加えようとする者、あるいは、博士の調査を妨害しようとする者が居る場合、かつ、その人物が英国人である場合、直ちにその人物を拘束の上、マイクロフトに連絡すること → そこからの対応は、マイクロフトと英国の外務省が、これを引き継ぐ)


(3)本件には、フランス人探偵のジャン・ヴィドック(Jean Vidocq)が関与しているが、極力、早急に彼を排除すること


なお、ジャン・ヴィドックは、ボニー・マクバード(Bonnie MacBird)の第1作目である「シャーロック・ホームズの冒険 / 芸術家の血」(A Sherlock Holmes Adventure / Art in the Blood → 2022年4月17日 / 4月23日 / 4月30日付ブログで紹介済)に登場済。


その2日後、シャーロック・ホームズとワトスンの二人は、ウォータールー駅(Waterloo Station → 2014年10月19日付ブログで紹介済)から、ドーヴァー(Dover)経由、南フランスへと向かった。

一方、マクラーレン一家は、その時期、寒いスコットランドを避けて、ニース(Nice)近辺のホテル「Grand Hotel du Cap」に滞在していた。


ホームズの指示を受けて、ニースの街中で、偶然を装い、イスラ・マクラーレンと再会したワトスンは、ホームズと一緒に、ホテルでの夕食会へと招待される。

ホームズとワトスンが招待されたマクラーレン一家との夕食会が進み、最後に、デザートのプレートが、テーブルの中央へと運ばれてきた。プレートのカバーが開けられると、そこには、デザートではなく、先日、スコットランドのブレーデルン城から姿を消したメイドのフィオナ・ペイズリーの冷凍された首が供されていたのである。


そして、事件の舞台は、南フランスからマクラーレン一家が住むスコットランドのブレーデルン城へと移り、そこで、ホームズは、彼の過去の悪夢と対峙することになる。


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