2022年6月29日水曜日

ステュアート・ダグラス作「シャーロック・ホームズの更なる冒険 / アルビノの財宝」(The further adventures of Sherlock Holmes / The Albino’s Treasure by Stuart Douglas) - その1

英国の Titan Publishing Group Ltd. の Titan Books 部門から
2015年に出版された
ステュアート・ダグラス作
「シャーロック・ホームズの更なる冒険 / アルビノの財宝」の表紙

本作品「アルビノの財宝(The Albino’s Treasure)」は、英国出身の推理作家であるステュアート・ダグラス(Stuart Douglas)によって、2015年に発表された。


1896年のある日の朝5時過ぎに、シャーロック・ホームズとジョン・H・ワトスンは、スコットランドヤードのレストレード警部(Inspector Lestrade)の不意な訪問を受け、ベッドから起こされる破目になった。レストレード警部は、二人に対して、早朝の急な訪問を詫びるとともに、事件の概要を説明するのであった。


彼によると、トラファルガースクエア(Trafalgar Square)の近くにあるセントマーティンズプレイス(St. Martin’s Place)に新しく建設されたナショナルポートレートギャラリー(National Portrait Gallery)において、午前2時過ぎに、警備員が館内を巡回していた際、政治家の肖像画が展示されている部屋で、英国首相を務めたソールズベリー卿(Lord Sailsbury)の肖像画をナイフで傷つけている男を発見し、警備員二人がかりで、その男を取り押さえた、とのこと。その男は、近くの壁に赤ペンキで「BOI」という謎の言葉を書いていた。


レストレード警部は、逮捕時に犯人の男が発した「次は、肖像画では済まないぞ!(Next time it wo’nt just a painting.)」という言葉に、共犯者の存在と次なる行動に危機感を抱いていた。話を聞いたホームズは、レストレード警部に対して、「直ぐに着替えて、1時間以内にスコットランドヤードに駆け付けるよ。」と告げるのであった。


ホームズとワトスンがスコットランドヤードに到着すると、レストレード警部は、部下の巡査に指示して、犯人を取調室に連れて来させた。容疑者は、背が高く、痩せた30代の男で、口ひげを生やしていたが、左目の下から顎の辺りまで、傷跡があった。3人は、容疑者に対して、逮捕時の真意を尋ねるが、彼は一言も発しようとしなかった。

そうこうするうちに、ホームズが、容疑者に対して、「チャールズ・オドネル伍長(Corporal Charles O’Donnell)」と呼びかけると、彼は驚いてホームズに摑みかかろうとするが、ホームズはすんでのところで身を躱し、彼の手首を折って、事無きを得る。


巡査に連れられて、容疑者が取調室を後にすると、レストレード警部は、ホームズに対して、「どうやって、容疑者の身元が判ったのか?」と尋ねる。レストレード警部の求めに応じて、ホームズが種明かしをする。

ホームズ曰く、ベーカーストリート221B(221B Baker Street)を出る段階で、今回の事件の性格上、犯人はアイルランド人で、かつ、カトリック教徒だと考えていた、とのこと。また、彼が保管している事件の記録によると、9年前、チャールズ・オドネルは、プロテスタント教会の破壊と牧師の殺害への関与を疑われていて、当時、彼の似顔絵が新聞に載っていたと、ホームズは言う。ただ、チャールズ・オドネルは、アイルランドの官憲の手を逃れて、米国へと逃亡していたようである。ホームズは、この件をよく覚えていて、犯人がチャールズ・オドネルだと、直ぐに判ったのだと説明した。


ホームズによる説明の後、レストレード警部が、「チャールズ・オドネルのような小物に、時間をとられている暇はない。」とぼやくので、ホームズが「何か他に心配事があるのか?」と尋ねる。

レストレード警部によると、「アルビノ(Albino)」と呼ばれる外国人がロンドン内に潜伏しているらしい。この「アルビノ」は、欧州大陸中の犯罪に関係しており、「犯罪界のナポレオン(Napoleon of crime)」と呼ばれたジェイムズ・モリアーティー教授(Professor James Moriarty)の再来と言われている、とのこと。「アルビノ」がロンドンにやって来たのは、「イングランドの財宝」と呼ばれるものを狙っているようだが、この「イングランドの財宝」が何なのかは、全く判らないのだと、レストレード警部は、ホームズに対して、心配事を開示するのであった。


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