2020年3月15日日曜日

ジョン・ディクスン・カー作「魔女の隠れ家」(Hag’s Nook by John Dickson Carr)–その2

Polygon Books 社から2019年に出版された「魔女の隠れ家」の表紙
(イラスト:  Abigail Salvesen)

万が一の場合に備えて、ギディオン・フェル博士(Dr. Gideon Fell)、タッド・ランポール(Tad Rampole)と村の牧師であるトーマス・サンダース(Thomas Saunders)の三人が、「水松荘(いちいそうーYew Cottage)」から、マーティン・スタバース(Martin Starberth)一人で一夜を過ごすチャターハム監獄(Chatterham)の長官室(Governor’s Room)を監視することになった。
チャターハムへとやって来る列車の中で、マーティン・スタバースの妹であるドロシー・スタバース(Dorothy Starberth)と知り合ったタッド・ランポールは、「自分達がしっかりと監視するから、大丈夫だ。」と、彼女を元気付けるのだった。

午後10時半過ぎ、「水松荘」の電話がなった。フェル夫人(Mrs. Fell)からタッド・ランポールが受話器を受け取ると、電話の相手はドロシー・スタバースだった。「兄のマーティンが、屋敷からチャターハム監獄へと歩いて向かった。」と言う。スタバース家の屋敷からチャターハム監獄までの距離は、約500mだった。
ドロシー・スタバースからの電話連絡があって間もなく、ランプを手にし、チャターハム監獄へと向かって坂を登っていく人影が遠方に見えた。そして、チャターハム監獄の長官室に、明かりが灯った。生憎と、雷鳴が轟き、雨が降り始めた。
マーティン・スタバースは、長官室へ行った証拠として、同室の金庫内に保管してある書類を持って返る必要があった。

ギディオン・フェル博士とトーマス・サンダースの二人は、「水松荘」の庭にある椅子に座り、ビールを飲みながら、チャターハム監獄の長官室の監視に付いた。一方、タッド・ランポールは、落ち着かないため、「水松荘」の二階にある自室へと戻り、チャターハム監獄の代々の長官が記した記録を読みながら、雨に濡れる窓越しに、チャターハム監獄の長官室へと何度も視線を向けた。

後10分程で12時になろうとした時、タッド・ランポールが、読んでいた記録からふと目を上げると、チャターハム監獄の長官室から見えていた明かりが消えていることに気付く。階下の庭に居たギディオン・フェル博士とトーマス・サンダースの二人も、明かりが消えたことに気付いたようだった。
マーティン・スタバースの身に何か異変が起きたのではないかと心配になったタッド・ランポールは、直ぐに階下へと駆け下りた。早く走れないギディオン・フェル博士とトーマス・サンダースの二人を後に残して、タッド・ランポールはチャターハム監獄へと走り出す。

雷雨の最中、チャターハム監獄へと駆け付けたタッド・ランポールであったが、彼の不安は的中した。「魔女の隠れ家(Hag’s Nook)」と呼ばれる絞首台の近くの崖下で、首の骨を折って死んでいるマーティン・スタバースを発見したのである。

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