2020年3月8日日曜日

ジョン・ディクスン・カー作「魔女の隠れ家」(Hag’s Nook by John Dickson Carr)–その1

東京創元社から出版された創元推理文庫「魔女の隠れ家」の表紙
(現在は在庫なし)

「魔女の隠れ家(Hag’s Nook by John Dickson Carr)」は、米国のペンシルヴェニア州(Pennsylvania)に出生して、英国人のクラリス・クルーヴス(Clarice Cleaves)との結婚後、1932年から1946年にかけて英国のブリストル(Bristol)に居を構えていた米国の推理作家で、「不可能犯罪の巨匠」とも呼ばれているジョン・ディクスン・カー(John Dickson Carr:1906年ー1977年)が1933年に発表した推理小説で、ギディオン・フェル博士(Dr. Gideon Fell)が登場するシリーズ第1作目に該る。

大学を卒業したばかりの米国人の青年であるタッド・ランポール(Tad Rampole)は、恩師のメルソン教授(Professor Melson)に紹介され、英国リンカーンシャー州(Lincolinshire)の片田舎チャターハム(Chatterhamー架空の村であるが、ロンドンから約120マイルのところに所在)にある「水松荘(いちいそうーYew Cottage)」に住む辞書編纂家(lexicographer)のギディオン・フェル博士の元を訪れる。

「水松荘」に到着したタッド・ランポールは、そこでギディオン・フェル博士から非常に不気味な伝説を聞かされるのであった。
ギディオン・フェル博士が住む「水松荘」の近くには、「魔女の隠れ家(Hag’s Nook)」と呼ばれる絞首台とチャターハム監獄(Chatterham Prison)が建っていた。チャターハム監獄は、今は住む人もなく、荒れ果てた状態だった。
チャターハムの名士であるスタバース家(Starberth)の当主は、チャターハム監獄の長官(Governor)を代々務めてきたが、初代長官(1797年ー1820年)のアンソニー・スタバース(Anthony Starberth)も、2代目長官(1821年ー1837年)のマーティン・スタバース(Martin Starberth)も、深夜、チャターハム監獄の長官室(Governor’s Room)から転落し、首の骨を折って亡くなるという事故が続いていた。
1837年以降、そういった事故は起きていなかったが、先代の当主であるティモシー・スタバース(Timothy Starberth)は、馬に乗っている際、落馬し、首の骨を折って亡くなるという事故が起きていたのである。

ティモシー・スタバースの息子(長男)であるマーティン・スタバース(Martin Starberthーチャターハム監獄の2代目長官だった人物とは別人)は、スタバース家の家督を継ぐことになり、米国から帰国して、スタバース家に代々伝わる相続の儀式のため、25歳の誕生日の夜を、たった一人でスタバース監獄の長官室で過ごすことになった。
マーティン・スタバースは、この儀式に対して、非常に神経質となり、酒や煙草等で不安をごまかしていた。

兄マーティン・スタバースの渡米中、彼に代わって、従兄弟のハーバート・スタバース(Herbert Starberth)と一緒に、スタバース家の屋敷を管理してきた妹のドロシー・スタバース(Dorothy Starberth)は、そんな兄の言動を心配していた。

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