2020年1月26日日曜日

カーター・ディクスン作「第三の銃弾」(The Third Bullet by Carter Dickson)–その4

早川書房が出版するハヤカワ文庫「第三の銃弾〔完全版〕」に
掲載されているモートレイク元判事が射殺された
離れの書斎の平面図

ロンドン北西部のハムステッド地区(Hampstead→2018年8月26日付ブログで紹介済)内にあるチャールズ・モートレイク元判事邸の離れの書斎において発生した同判事の殺害現場に居合わせたロンドン警視庁(スコットランドヤード)のジョン・ペイジ警部が容疑者であるゲイブリエル・ホワイトを尋問すると、ホワイト本人は、「モートレイク元判事に対して、拳銃を一発しか撃っていない。」と主張する。

一方、ペイジ警部の部下であるボーデン部長刑事が、モートレイク元判事が射殺された書斎のうち、西側の窓際(大きな黄色い陶器の花瓶が二つ、その両側に置かれていた)を調べたところ、北西の隅にある花瓶の近くに使用済の薬莢が落ちていたのを見つける。ボーデン部長刑事は、一瞬、その薬莢がホワイトが所持していたアイヴァー・ジョンソン38口径リヴォルヴァーから発射されたものではないかと思ったが、一目見て、それはブローニング32口径オートマティックから発射されたものであることが判った。
そして、実際、近くにあった花瓶の底に、ブローニング32口径オートマティック拳銃が隠されているのが発見された。そのブローニング32口径オートマティックの銃身には、匂いが残っていて、発射まだ間もないことが明らかだった。その上、弾倉から一発だけ発射されていることが判った。

ペイジ警部は、マーキス大佐に対して、

(1)射殺されたモートレイク元判事の後ろの壁にめり込んでいた弾丸は、多少欠けているものの、ホワイトが所持していたアイヴァー・ジョンソン38口径リヴォルヴァーから発射されたものと思われること

(2)従って、射殺されたモートレイク元判事の体内にある弾丸は、花瓶の底から見つかったブローニング32口径オートマティックから発射されたものと予想されること

(3)ただし、問題のブローニング32口径オートマティックについて、ホワイトは「自分の拳銃ではなく、誰が撃ったのか判らない。」と主張していること

(4)書斎の西側にある二つの窓は、両方とも、内側から鍵がかけられた上に、分厚い木製の鎧戸が閉められていて、その鎧戸も内側から鍵がかけられていたこと

(5)書斎の南側にある二つの窓のうち、西側に近い窓も、内側から鍵がかけられた上に、鎧戸も閉められていたこと

(6)書斎の南側にある二つの窓のうち、もう一つの窓については、ペイジ警部が外からよじ登った場所で、常に彼の監視下にあったこと

(7)更に、書斎の出入口である廊下に面したドアに関しては、ホワイトが書斎内へ走り込んで、内側から鍵をかけた瞬間から、ボーデン部長刑事の監視下にあったこと

(8)つまり、書斎は「密閉された箱」のような状態にあり、射殺されたモートレイク元判事を除くと、ホワイト以外の第三者が書斎内に居たとは考えられないこと

が報告される。

それにもかかわらず、司法解剖を終えた警察医であるギャラティン医師から、驚くべき報告が入ったのである。射殺されたモートレイク元判事の体内から取り出された弾丸は、ホワイトが所持していたアイヴァー・ジョンソン38口径リヴォルヴァーから発射されたものでも、また、花瓶の底から見つかったブローニング32口径オートマティックから発射されたものでもなかった。その弾丸は、何と、エルクマンの空気銃から発射されたことが判明したのである。

ここに、「第三の銃弾(The Third Bullet)」が登場したのであった。「密閉された箱」のような状態にあった書斎内で、「第三の銃弾」を発射したエルクマンの空気銃は、誰がどのように撃って、モートレイク元判事を殺害した後、どこへ消え失せたのだろうか?

この非常に不可思議かつ不可解な謎に対して、マーキス大佐が挑むことになる。

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