2020年1月11日土曜日

北原尚彦編訳「シャーロック・ホームズの栄冠」(’The Glories of Sherlock Holmes’ edited by Naohiko Kitahara)–その2



東京創元社から出版されている創元推理文庫
「シャーロック・ホームズの栄冠」の表紙
カバーイラスト: 鈴木 康士 氏
カバーデザイン: 柳川 貴代 氏 + Fragment

第Ⅲ部:語られざる事件編
(15)アラン・ウィルスン(1923年ー?)作「疲弊した船長の事件(The Adventure of the Tired Captain)」(1958年 / 1959年)
(16)オーガスト・ダーレス(1909年-1971年)作「調教された鵜の事件(The Adventure of the Trained Cormorant)」(1953年)
(17)ギャヴィン・ブレンド作「コンク - シングルトン偽造事件(The Conk-Singleton Forgery Case)」(1953年)
(18)S・C・ロバーツ(1887年ー1966年)作「トスカ枢機卿事件(The Death of Cardinal Tosca)」

第Ⅳ部:対決編
(19)アーサー・チャップマン(1873年ー1935年)作「シャーロック・ホームズ対デュパン(The Unmasking of Sherlock Holmes)」(1905年)
(20)作者不詳「シャーロック・ホームズ対勇者ジェラール(Sherlock Holmes and Brigadier Gerard)」(1903年)
(21)ドナルド・スタンリー(1925年ー?)作「シャーロック・ホームズ対007(Holmes Meets 007)」(1964年)

第Ⅴ部:異色編
(22)キャロリン・ウェルズ(1869年ー1942年)作「犯罪者捕獲法奇譚(Sure Way to Catch Every Criminal. Ha! Ha!)」(1912年)
(23)ロバート・ブロック(1917年ー1994年)作「小惑星の力学(The Dynamics of an Asteroid)」(1953年)
(24)ベイジル・ラスボーン(1892年ー1967年)作「サセックスの白日夢(Daydream)」(1947年)
(25)ビル・プロンジーニ(1943年ー)作「シャーロック・ホームズなんか恐くない(Who’s Afraid of Sherlock Holmes)」(1968年)

「シャーロック・ホームズの栄冠(The Glories of Sherlock Holmes)」の編訳者で、日本のミステリー/SF/ホラー小説家、翻訳家で、古書研究家でもある北原尚彦氏(1962年ー)によると、本作品に収録されている全25篇のうち、19篇が本邦初訳で、残りの6篇についても、雑誌やムック等に一度訳されただけで、日本では単行本化されていないもの、とのこと。

2007年に論創社から刊行された際、「シャーロック・ホームズの栄冠」には全部で24篇が収録されていたが、2017年11月に東京創元社から創元推理文庫として出版された際に、「シャーロック・ホームズと<ボーダーの橋>バザー(”Sherlock Holmes.” Discovering the Border Burghs, and, by Deduction, the Brig Bazaar)」が追加されている。2015年2月に発掘された時、「サー・アーサー・イグナティウス・コナン・ドイル(Sir Arthur Ignatius Conan Doyle:1859年ー1930年)作の未発表のシャーロック・ホームズ短編ではないか?」と言われたが、最終的には、コナン・ドイル作であるとは確認されなかった。

「シャーロック・ホームズの栄冠」には、「陸橋殺人事件(The Viaduct Murder)」(1925年)や「密室の行者(Solved by Ivspection)」(1931年)等の著者であるロナルド・ノックス(Ronald Knox:1888年ー1957年)、「トレント最後の事件(Trent’s Last Case)」(1913年)等の著者であるエドマンド・クレリヒュー・ベントリー(Edmund Clerihew Bentley:1875年ー1956年)、「ピカデリーの殺人(The Piccadilly Murder)」(1929年)、「毒入りチョコレート事件(The Poisoned Chocolate)」(1929年)や「第二の銃声(The Second Shot)」(1930年)等の著者であるアントニイ・バークリー(Anthony Berkley:1893年ー1971年)および「赤い館の秘密(The Red House Mystery)」(1921年)や「クマのプーさん(Winnie the Pooh)」(1926年)等の著者であるアラン・アレクサンダー・ミルン(Alan Alexander Milne:1882年-1956年)といった英国を代表する推理作家による作品が含まれているが、5つのカテゴリーに分かれているものの、全体的にパロディー作品が非常に多い上に、内容的に今日一つで、正直ベース、個人的な趣味にはあまり合わなかった。また、楽しみにしていた「第Ⅲ部:語られざる事件編」についても、「調教された鵜の事件」を覗くと、あまり大したことはなく、残念ながら、期待外れに終わってしまった。

「シャーロック・ホームズの栄冠」に収録されている全25篇の後に、編訳者の北原尚彦氏が、「註 七パーセントの注釈」と「解説 編訳者最後の挨拶」を、創元推理文庫版で約60ページ分付け加えているが、申し訳ないものの、全25篇よりも、こちらの方が遥かに興味深かった。


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