2020年1月1日水曜日

山本周五郎作「シャーロック・ホームズ」–その4

ヴィクトリア女王の生誕200周年を記念して、
昨年(2019年)、ロイヤルメール(Royal Mail)から発行された切手(その1)

シャーロック・ホームズが、相棒のジョン・H・ワトスンと一緒に、ロンドンで活躍したヴィクトリア朝時代(「緋色の研究(A Study in Scarlet)」<事件発生年月;1881年3月>ー「這う男(The Creeping Man)」<事件発生年月:1903年9月>)、即ち、原作者のサー・アーサー・イグナティウス・コナン・ドイル(Sir Arthur Ignatius Conan Doyle:1859年ー1930年)がホームズシリーズを発表した期間(「緋色の研究(A Study in Scarlet)」<1887年11月>ー「ショスコム・オールド・プレイス(Shoscombe Old Place)」<1927年4月>)は、ヴィクトリア女王(Queen Victoria:1819年ー1901年 在位期間:1837年ー1901年)の統治下、英国の帝国主義が最盛期に達した時期である。

ヴィクトリア女王の生誕200周年を記念して、
昨年(2019年)、ロイヤルメール(Royal Mail)から発行された切手(その2)

あくまでも、個人的な感想ではあるが、「樅の木は残った」(1954年ー1958年)、「赤ひげ診療譚」(1958年)、「五辯の椿」(1959年)、「青べか物語」(1960年)や「季節のない街」(1962年)等の作品(特に、時代小説ー市井に生きる庶民や名もなき流れ者を書いた作品)で知られる日本の小説家である山本周五郎(本名:清水三十六 1903年ー1967年)が、「新少年」の1935年12月別冊附録に発表したホームズのパスティーシュである「シャーロック・ホームズ」を読んでいると、意図的なのか、それとも、無意識なのかは分らないものの、所々、国粋主義的な雰囲気が若干漂っているように感じられる。

勿論、本作品は、少年向けに執筆されているため、本作品を読む少年達の気持ちを高揚させる / 物語を楽しませる目的しかないのかもしれないが、ストーリー的に、また、時代背景的に、そう思えてしまう部分がある。

ヴィクトリア女王の生誕200周年を記念して、
昨年(2019年)、ロイヤルメール(Royal Mail)から発行された切手(その3)

本作品が発表されたのは、1935年12月であるが、当時、日本は、

・1931年ー満州事変勃発
・1932年ー傀儡政権である満州国の建国
・1933年ー国際連盟(League of Nations)からの脱退

というように、第二次世界大戦(1939年ー1945年) / 太平洋戦争(1941年ー1945年)へと向かって、帝国主義的な野望を露わにしていた時期であり、無意識に、そういった時代背景が本作品の雰囲気に影響を与えているのかもしれない。あるいは、作者の山本周五郎が、そういった時代背景を踏まえて、意図的に切り取り、本作品へ反映させているのかもしれない。

ヴィクトリア朝時代の1891年に発行された切手–
ヴィクトリア女王の横顔が描かれている

ちなみに、本作品のラストには、ホームズファン全員が衝撃を受ける驚愕の展開が待ち受けている。

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