2019年12月29日日曜日

カーター・ディクスン作「第三の銃弾」(The Third Bullet by Carter Dickson)–その2

ハムステッドヒース(Hampstead Heath)の入口近辺から、
池越しにハムステッド地区内の住宅街を望む

ゲイブリエル・ホワイトは、6週間前の9月24日、刑務所から仮釈放されたが、判決時にチャールズ・モートレイク(元)判事を脅迫していたため、ジョン・ペイジ警部と彼の部下であるボーデン部長刑事は、ホワイトの動向に眼を光らせていた。


そして、昨日の夕方(午後4時頃)、彼らがよく知っている質屋から、ホワイトが拳銃(アイヴァー・ジョンソン38口径リヴォルヴァー)を買っていったという電話連絡が入った。更に、モートレイク元判事の次女で、ホワイトとも面識のあったアイダ・モートレイクからも、「ホワイトが、自分の父親を殺そうとしている。」という電話があった、そのため、ペイジ警部とボーデン部長刑事の二人は、警察車に飛び乗って、ハムステッド地区(Hampstead→2018年8月26日付ブログで紹介済)内にあるモートレイク元判事邸へと大急ぎで向かったのである。


二人がモートレイク元判事邸に到着したのは、午後5時頃で、既に辺りは暗くなりかけていた。外は11月らしい荒れ模様の天候で、風雨が強かった。門番のロビンスンに教えられて、二人は母屋から200ヤード程離れた木立の中にある四阿(離れ)へと小径を進んだ。


二人が進む前方に四阿が見えてきた時、右手の木立から背の高い男が背を屈め出て来て、四阿の正面中央にあるドアの方へと走って行くのが見えた。雷が小止みなく鳴る中、その男が正面玄関のドアに手をかける直前、稲妻が閃き、その男が居る辺りを皓々と照らし出した。稲妻に照らし出された男は、二人が予想した通り、ホワイトで、ボーデン部長刑事の大声に呼ばれ、振り返って二人に気付くと、羽織っていた丈の長いコートのポケットから、その日の夕方質屋で購入した例の拳銃(アイヴァー・ジョンソン38口径リヴォルヴァー)を取り出して、そのまま四阿のドアを開け、中へと侵入した。そして、ホワイトは、左手にあるモートレイク元判事の書斎のドアへと向かった。


ペイジ警部のずっと前を走るボーデン部長刑事の大声が、モートレイク元判事を書斎の窓辺へと引き寄せた。モートレイク元判事は、四阿の正面玄関のドアに近い方の窓のカーテンを開け、窓を少し押し開くと、外を見た。
その時、ホワイトが、廊下から書斎に入るドアを開けて、中に飛び込むなり、ドアの鍵を閉めた。ボーデン部長刑事は、タッチの差でホワイトを捕まえそこなかったのである。

ボーデン部長刑事の後を追うペイジ警部が、一番の近道となった半開きの窓へと向かった正にその時、最初の銃声が聞こえた。半開きとなった窓から書斎の中を覗き込んだペイジ警部は、非常に不可解な現場を目撃するのであった。

0 件のコメント:

コメントを投稿