2019年12月8日日曜日

北原尚彦作「シャーロック・ホームズの蒐集」(’The Collection of Sherlock Holmes’ by Naohiko Kitahara)–その1

「シャーロック・ホームズの蒐集」の創元推理文庫版の表紙
カバーイラスト: 鈴木 康士 氏
           カバーデザイン: 岩郷 重力 氏+K.K

「シャーロック・ホームズの蒐集(The Collection of Sherlock Holmes)」は、日本のミステリー/SF/ホラー小説家、翻訳家で、古書研究家でもある北原尚彦氏(1962年ー)が、2014年11月に東京創元社から刊行したシャーロック・ホームズのパスティーシュ(連作短編集)である。
当作品は、2015年に第68回日本推理作家協会賞(長編および連作短編集部門)の候補となり、2018年3月に文庫化されている。

「シャーロック・ホームズの蒐集」には、以下の6編が収録されており、サー・アーサー・イグナティウス・コナン・ドイル(Sir Arthur Ignatius Conan Doyle:1859年ー1930年)が執筆した正典(長編:4+短編:56)における「語られざる事件」を題材にしている。

(1)遅刻しがちな荷馬車事件
「独身の貴族(The Noble Bachelor→「シャーロック・ホームズの冒険(The Adventure of Sherlock Holmes)」(1892年)に収録)」において、「例のグローヴナースクエア(Grosvenor Square→2015年2月22日付ブログで紹介済)の家具運搬事件」として言及されている事件を題材にしている。

(2)結ばれた黄色いスカーフの事件
「金縁の鼻眼鏡(The Golden Pince-Nez→「シャーロック・ホームズの帰還(The Return of Sherlock Holmes)」(1905年)に収録)」において、「アドルトンの悲劇」として言及されている事件を題材にしている。

(3)ノーフォークの人狼卿の事件
「恐怖の谷(The Valley of Fear)」(1915年)において、「スコットランドヤードのアレック・マクドナルドがまだ一介の若手刑事だった頃に、ホームズが彼に協力して解決した事件」と言及されている話を題材にしている。

(4)詮索好きな老婦人の事件
「五つのオレンジの種(The Five Orange Pips→「シャーロック・ホームズの冒険」に収録)」において、「パラドール・チェンバーの怪事件」として言及されている事件を題材にしている。

(5)憂慮する令嬢の事件
「孤独な自転車乗り(The Solitary Cyclist→「シャーロック・ホームズの帰還」に収録)」において、「煙草王として知られる百万長者ジョン・ヴィンセント・ハーデンに対して、奇怪な迫害が加えられた事件」と言及されている話を題材にしている。

(6)曲馬団の秋分の事件
「サセックスの吸血鬼(The Sussex Vampire→「シャーロック・ホームズの事件簿(The Case-Book of Sherlock Holmes)」(1927年)に収録」において、「サーカスの美女ヴィットリアが関わった事件」として言及されてる話を題材にしている。

北原尚彦氏は、日本シャーロック・ホームズクラブの会員で、世界中のシャーロック・ホームズ関連の書籍収集でも有名な日本有数のシャーロキアンである。また、彼は、サー・アーサー・コナン・ドイル作品やホームズ関連のアンソロジーを数多く編纂/翻訳している。
それもあって、「シャーロック・ホームズの蒐集」は、ホームズのパスティーシュとして、サー・アーサー・コナン・ドイルによる正典の雰囲気にかなり近づけられており、正典に引けを取らない位、出来が良く、上質なパスティーシュである。

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