2019年12月21日土曜日

山本周五郎作「シャーロック・ホームズ」–その2

時代小説で知られる山本周五郎(1903年ー1967年)作
「ちいさこべ」を含む中編4編が収録された新潮文庫
(カバー装画: 横田 美砂緒氏)

警察庁の村田刑事課長からの依頼に基づいて、彼と一緒に、殺害現場である丸の内仲通りの五号館の3階の部屋に赴いたシャーロック・ホームズは、早速、現場検証を行うと、

(1)被害者である婦人は、殺害現場であるこの部屋へ一人でやって来たこと
(2)この部屋には、背の高さが180cm近くの相当な老人で、灰色の外套を着た肥った男が既に待っていたこと
(3)婦人と老人の両名は、この部屋で烈しく口論を行なったこと
(4)その後、老人は、婦人をこの部屋に残したまま、出て行ったこと
(5)老人が部屋から去った後、3階の窓から奇怪な小男が部屋の中に侵入して来て、吹き矢で毒矢を吹き付け、婦人を殺害したこと
(6)婦人を殺害した後、小男は侵入して来た窓から逃げ去ったこと

を忽ち看破するのであった。

五号館の前で村田刑事課長と別れたホームズが、一旦、ホテルへ帰ろうとしたところ、ホームレスの少年である凡太郎に声をかけられる。彼がこの事件の発見者であることを知ったホームズは、凡太郎に協力を求め、一緒に事件の捜査を進めることになる。

ホームズが密かに英国から来日した目的は、英国と日本が正当な所有権を有する「モンゴール王の宝石」を探し出すためであった。「モンゴール王の宝石」の隠し場所を知るためには、四つに分割された地図を全て手に入れる必要があった。

丸の内仲通りにある五号館の3階の部屋で殺害されたのは、男爵家を継いでいる真田市治郎氏の妹の八重子で、ある事務官に嫁いで満州へ行き、夫と死別した後も、18年の間、満州に留まり、昨年の春、日本に戻ったばかりだった。
一昨日の朝、彼女は、市治郎氏の金庫から、二人の父親である真田信吉氏(約40年前の日清戦争(1894年ー1895年)の際、奥蒙古地方で特殊任務に従事)の遺品で、銀製の小さなケースを勝手に持ち出していたのである。実は、この銀製の小さなケースの中に、「モンゴール王の宝石」の隠し場所を示す地図の 1/4 が入ったいたのである。

丸の内仲通りにある五号館において、八重子が殺害された事件の裏では、灰色外套の老人(寒石麒)、そして、四つの地図の独占を目論むロンドン警視庁のお尋ね者で、英国の犯罪王であるディック・ドノベンと彼の部下であるヒギンスが暗躍していた。

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