2018年12月9日日曜日

ロンドン ヴィクトリアエンバンクメント通り(Victoria Embankment)

ヴィクトリアエンバンクメント通り沿いに建つ
シティー・オブ・ロンドンと
シティー・オブ・ウェストミンスター区の境界線
→ 画面奥がシティー・オブ・ロンドン

米国のペンシルヴェニア州(Pennsylvania)に出生して、英国人のクラリス・クルーヴス(Clarice Cleaves)との結婚後、1932年から1946年にかけて英国のブリストル(Bristol)に居を構えていた米国の推理作家で、「不可能犯罪の巨匠」とも呼ばれているジョン・ディクスン・カー(John Dickson Carr:1906年ー1977年)が1934年に発表した推理小説で、ギディオン・フェル博士(Dr. Gideon Fell)シリーズの長編第4作目に該る「盲目の理髪師(The Blind Barber)」では、大西洋を横断して、米国のニューヨークから英国のサウサンプトン(Southampton)へと向かう外洋航路船クイーンヴィクトリア号(ocean liner Queen Victoria)上において、(1)米国人の外交官であるカーティス・G・ウォーレン(Curtis G. Warren)が携帯していた政治的失脚や国際問題にまで発展しかねない恐れがあるフィルムと(2)スタートン子爵が所有するエメラルドの象のペンダントの盗難事件が発生する。それらに加えて、(3)瀕死の女性がある船室から突然姿を消す事件も起きる。錯綜する事件の謎に頭を痛めた英国人の探偵小説家であるヘンリー・モーガン(Henry Morgan)は、「剣の八(The Eight of Swords)」事件で知り合ったギディオン・フェル博士(Dr. Gideon Fell)に助けを求めるべく、サウサンプトンに入港したクイーンヴィクトリア号からいち早く下船して、ギディオン・フェル博士が住むロンドンへと急ぐ。原作上、ギディオン・フェル博士は、テムズ河(River Thames)に近いアデルフィテラス1番地(1 Adelphi Terrace→2018年11月25日付ブログで紹介済)に住んでいるという設定になっており、アデルフィテラスからは、テムズ河の他に、ヴィクトリアエンバンクメント通り(Victoria Embankment)を眼下に望むことができる。

ウォータールー橋の下を潜るヴィクトリアエンバンクメント通り

ヴィクトリアエンバンクメント通りは、テムズ河の北岸に建設されたヴィクトリアエンバンクメントと呼ばれる堤防に沿って延びる通りで、西側はウェストミンスター橋(Westminster Bridge)から始まり、チャリングクロス駅(Charing Cross Station→2014年9月20日付ブログで紹介済)を出入りする鉄道用の橋であるハンガーフォード橋(Hungerford Bridge)とその両側にある歩行者用の橋であるゴールデンジュビリー橋(Golden Jubilee Bridge)の下を通り、左手に見えるヴィクトリアエンバンクメントガーデンズ(Victoria Embankment Gardens→2018年12月2日付ブログで紹介済)を過ぎ、ウォータールー橋(Waterloo Bridge→2014年10月24日付ブログで紹介済)の下を潜り、そして、ブラックフライアーズ橋(Blackfriars Bridge)まで至っている。

ヴィクトリアエンバンクメント通り沿いに建つ
サマセットハウス(Somerset House)

ヴィクトリアエンバンクメント通りを下で支える堤防であるヴィクトリアエンバンクメントは、1865年から1870年にかけて、英国の土木技師で、公共事業庁(Metropolitan Board of Works)の主任技術者だったサー・ジョーゼフ・ウィリアム・バザルゲット(Sir Joseph William Bazalgette:1819年ー1891年)によって、ウェストミンスター橋とブラックフライアーズ橋に挟まれたテムズ河北岸に建設された。
ヴィクトリアエンバンクメントが建設されたのは、ロンドンに近代的な下水処理設備を導入するためで、ヴィクトリアエンバンクメント通りが敷設されたのは、北側に延びるストランド通り(Strand→2015年3月29日付ブログで紹介済)やフリートストリート(Fleet Street→2014年9月21日付ブログで紹介済)における交通渋滞を解消するためである。

サマセットハウスの外壁(その1)

サマセットハウスの外壁(その2)

ヴィクトリアエンバンクメント建設工事の他に、当時、アルバートエンバンクメント<Albert Embankmentーランベス橋(Lambeth Bridge→2018年2月4日付ブログで紹介済)とヴォクスフォール橋(Vauxhall Bridge→2017年9月16日付ブログで紹介済)に挟まれたテムズ南岸の堤防>とチェルシーエンバンクメント<Chelsea Embankmentーチェルシー橋(Chelsea Bridge)とバタシー橋(Battersea Bridge)に挟まれたテムズ河北岸の堤防>の2つが建設され、サー・ジョーゼフ・ウィリアム・バザルゲットは、総計で 1,800 ㎞ にも及ぶ下水道を敷いたことにより、ロンドン内の公衆衛生問題を解決したため、「ロンドン下水道の父」と呼ばれている。

英国の技師である
イザムバード・キングダム・ブルネル
(Isambard Kingdom Brunel:1806年ー1959年)の
ブロンズ像

イザムバード・キングダム・ブルネルは、
パディントン駅(Paddington Station)を初めとするグレートウェスタン鉄道の施設や車輌等を設計した

ヴィクトリアエンバンクメント通りは、1878年12月に英国で最初にガス灯から電気灯へと切り替えられたが、電気灯では効率が良くないとの理由で、1884年6月にガス灯が再度導入されている。



テムズ河北岸沿いに延びるヴィクトリアエンバンクメント通りの北側には、以下の地下鉄の駅が並んでおり、サークルライン(Circle Line)とディストリクトライン(District Line)が通っている。
(1)地下鉄ウェストミンスター駅(Westminster Tube Station)
(2)地下鉄エンバンクメント駅(Embankment Tube Station)
(3)地下鉄テンプル駅(Temple Tube Station)
(4)地下鉄ブラックフライアーズ駅(Blackfriars Tube Station)

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