2016年1月24日日曜日

ロンドン ミデルトンスクエア(Myddelton Square)

紅葉が映えるミデルトンスクエア内の住宅街外壁

本作品は、アガサ・クリスティーの商業デビュー作であり、そして、エルキュール・ポワロシリーズの長編第1作目、かつ、ポワロの初登場作品に該る。

なお、本作品は、第一次世界大戦(1914年ー1918年)中の1916年に執筆され、米国の Jane Lane 社から、1920年(10月)に発表されている。英国本国の場合、Jane Lane 社の英国会社である The Bodley Head 社から、1921年(1月)に出版された。



第一次世界大戦(1914年ー1918年)中に負傷したアーサー・ヘイスティングス大尉(Captain Arthur Hastings - 30歳)は、英国に帰還する。旧友であるジョン・キャヴェンディッシュ(John Cavendish - 45歳)の招きで、エセックス州(Essex)にあるスタイルズ荘(Styles Court)を訪れたヘイスティングス大尉であったが、到着早々、事件に巻き込まれるのであった。


ミデルトンスクエアを囲む住宅街(その1)

ジョン・キャヴェンディッシュの義母で、スタイルズ荘の持ち主である老婦人エミリー・イングルソープ(Emily Inglethrop - 70歳を超えている)は、20歳も年下のアルフレッド・イングルソープ(Alfred Inglethrop)と再婚して、屋敷で暮らしていた。屋敷内には、他には、


(1)ジョン・キャヴェンディッシュ → エミリーの義理の息子(兄)

(2)メアリー・キャヴェンディッシュ(Mary Cavendish)→ ジョン・キャヴェンディッシュの妻

(3)ローレンス・キャヴェンディッシュ(Lawrence Cavendish - 40歳)→ エミリー・イングルソープの義理の息子(弟)

(4)シンシア・マードック(Cynthia Murdoch)→ エミリー・イングルソープの友人の孤児で、現在は、彼女の養子

(5)エヴリン・ハワード(Evelyn Howard - 40歳位)→ エミリー・イングルソープの話相手(住み込みの婦人)


が住んでいた。


ミデルトンスクエアを囲む住宅街(その2)

7月18日(水)の朝、エミリー・イングルソープがストリキニーネで毒殺されているのが発見された。


エミリー・イングルソープの前夫の遺言書によると、スタイルズ荘については、エミリー・イングルソープの死後、ジョン・キャヴェンディッシュが相続することになっていた。

一方、エミリー・イングルソープが保有する現金資産に関しては、彼女が毎年更新する遺言書の内容に従って分配されることになっており、彼女が作成した最新の遺言書によると、現在の夫であるアルフレッド・イングルソープが相続する内容だった。

前日の7月17日(火)、エミリー・イングルソープが、夫のアルフレッド・イングルソープか、義理の息子のジョン・キャヴェンディッシュとの間で、言い争いをしていたようだった。その後、彼女は遺言書を書き替えたが、その新しい遺言書は、どこにも見当らなかった。


エミリー・イングルソープの死により、最も大きな利益を得ることになる夫のアルフレッド・イングルソープが、まず容疑者として疑われる。

ただ、彼女が毒殺された日の夜、彼はスタイルズ荘を不在にしていたが、何故か、居所を明らかにしようとしない上に、村の薬局において、ストリキニーネを購入したしたのは、自分ではないと強く否定する。

エミリー・イングルソープの話相手であるエヴリン・ハワードは、アルフレッド・イングルソープの従妹であるにもかかわらず、以前から彼のことを憎んでいるようで、エミリー・イングルソープを毒殺した人物は、彼で間違いないと言う出張を崩さなかった。


スタイルズ荘の近くのスタイルズセントメアリー村(Styles St. Mary)にベルギーから戦火を避けて亡命していた旧友ポワロと再会したヘイスティングス大尉は、ポワロに対して、この難事件の捜査を依頼する。


スコットランドヤードのジェイムズ・ジャップ警部(Inspector James Japp)が、エミリー・イングルソープの毒殺犯人として、アルフレッド・イングルソープを逮捕しようとするが、ポワロは、ストリキニーネ購入時における薬局の記録上の署名が彼の筆跡ではないことを証明して、アルフレッド・イングルソープの逮捕を思いとどまらせた。


そのため、スコットランドヤードのジェイムズ・ジャップ警部が、アルフレッド・イングルソープの次に疑ったのは、エミリー・イングルソープの死により利益を得る上に、事件当夜のアリバイがないジョン・キャヴェンディッシュであった。

ストリキニーネ購入時における薬局の記録上の署名が彼の筆跡に酷似していること、また、アルフレッド・イングルソープとよく似た付け髭と鼻眼鏡が発見されたことが決め手となり、ジョン・キャヴェンディッシュは逮捕されてしまう。


果たして、スコットランドヤードのジェイムズ・ジャップ警部による捜査通り、ジョン・キャヴェンディッシュが、義母であるエミリー・イングルソープを、ストリキニーネで毒殺したのであろうか?

ポワロの灰色の脳細胞は、どのような結論を導き出すのか?


ミデルトンスクエアを囲む住宅街(その3)

英国のTV会社ITV1で放映されたポワロシリーズ「Agatha Christie's Poirot」の「スタイルズ荘の怪事件」(1990年)の回では、アーサー・ヘイスティングスの旧友で、スタイルズ荘の持ち主エミリー・イングルソープの義理の息子であるジョン・キャヴェンディッシュが妻のメアリーと一緒に暮らすロンドンの住居として、ミデルトンスクエア(Myddelton Square)が撮影に使用された。

ミデルトンスクエアガーデンズ内に建つ
セントマーク教会(St. Mark Church)

ミデルトンスクエアは、ロンドン・イズリントン区(London Borough of Islington)のフィンズベリー地区(Finsbury)内にあり、セントパンクラス駅(St. Pancras Station)/キングスクロス駅(King's Cross Station)からリヴァプールストリート駅(Liverpool Street Station)へ向かうペントンヴィルロード(Pentonville Road)の中間辺りに位置している。ペントンヴィルロードからそれて、アムウェルストリート(Amwell Street)を少し南下した東側にミデルトンスクエアはある。最寄駅は、ノーザンライン(Northern Line)が通る地下鉄エンジェル駅(Angel Tube Station)。

ミデルトンスクエアガーデンズ内から見た
セントマーク教会の裏側

南北に延びるアムウェルストリート沿いには、パブ、カフェ、花屋、雑貨屋や不動産エージェント等が建ち並び、ハイストリートのようになっているが、ミデルトンスクエアの場合、中央に建つ St. Mark Church やミデルトンスクエアガーデンズ(Myddelon Square Gardens)を囲むように、四方が住宅街となっていて、日中でも人通りはあまりなく、閑静な場所である。ミデルトンスクエアは、北側のペントンヴィルロード、東側のセントジョンストリート(St. John Street)、南側のローズベリーアベニュー(Rosebury Avenue)、そして、西側のアムウェルストリートを繫ぐ広場なので、通り抜けに使う人が多いようである。

ミデルトンスクエアガーデンズ内から見た
ミデルトンスクエアの住宅街

ポワロシリーズの「スタイルズ荘の怪事件」の時代設定である第一次世界大戦時(1914年ー1918年)と比べても、通りに駐車してある車を除けば、大きくは変わっていないのではないかと思われる。

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