2016年1月31日日曜日

ロンドン ロイドスクエア(Lloyd Square)

ロイドスクエアの北側に建つ住宅

本作品は、アガサ・クリスティーの商業デビュー作であり、そして、エルキュール・ポワロシリーズの長編第1作目、かつ、ポワロの初登場作品に該る。

なお、本作品は、第一次世界大戦(1914年ー1918年)中の1916年に執筆され、米国の Jane Lane 社から、1920年(10月)に発表されている。英国本国の場合、Jane Lane 社の英国会社である The Bodley Head 社から、1921年(1月)に出版された。



第一次世界大戦(1914年ー1918年)中に負傷したアーサー・ヘイスティングス大尉(Captain Arthur Hastings - 30歳)は、英国に帰還する。旧友であるジョン・キャヴェンディッシュ(John Cavendish - 45歳)の招きで、エセックス州(Essex)にあるスタイルズ荘(Styles Court)を訪れたヘイスティングス大尉であったが、到着早々、事件に巻き込まれるのであった。


アムウェルストリートからロイドスクエアを望む―
アムウェルストリートとロイドスクエアを結ぶ画面縦の通りが
ロイドベイカーストリート(Lloyd Baker Street)

ジョン・キャヴェンディッシュの義母で、スタイルズ荘の持ち主である老婦人エミリー・イングルソープ(Emily Inglethrop - 70歳を超えている)は、20歳も年下のアルフレッド・イングルソープ(Alfred Inglethrop)と再婚して、屋敷で暮らしていた。屋敷内には、他には、


(1)ジョン・キャヴェンディッシュ → エミリーの義理の息子(兄)

(2)メアリー・キャヴェンディッシュ(Mary Cavendish)→ ジョン・キャヴェンディッシュの妻

(3)ローレンス・キャヴェンディッシュ(Lawrence Cavendish - 40歳)→ エミリー・イングルソープの義理の息子(弟)

(4)シンシア・マードック(Cynthia Murdoch)→ エミリー・イングルソープの友人の孤児で、現在は、彼女の養子

(5)エヴリン・ハワード(Evelyn Howard - 40歳位)→ エミリー・イングルソープの話相手(住み込みの婦人)


が住んでいた。


ロイドベイカーストリーム経由、
アムウェルストリートからロイドスクエアへ入って来たところ

7月18日(水)の朝、エミリー・イングルソープがストリキニーネで毒殺されているのが発見された。


エミリー・イングルソープの前夫の遺言書によると、スタイルズ荘については、エミリー・イングルソープの死後、ジョン・キャヴェンディッシュが相続することになっていた。

一方、エミリー・イングルソープが保有する現金資産に関しては、彼女が毎年更新する遺言書の内容に従って分配されることになっており、彼女が作成した最新の遺言書によると、現在の夫であるアルフレッド・イングルソープが相続する内容だった。

前日の7月17日(火)、エミリー・イングルソープが、夫のアルフレッド・イングルソープか、義理の息子のジョン・キャヴェンディッシュとの間で、言い争いをしていたようだった。その後、彼女は遺言書を書き替えたが、その新しい遺言書は、どこにも見当らなかった。


エミリー・イングルソープの死により、最も大きな利益を得ることになる夫のアルフレッド・イングルソープが、まず容疑者として疑われる。

ただ、彼女が毒殺された日の夜、彼はスタイルズ荘を不在にしていたが、何故か、居所を明らかにしようとしない上に、村の薬局において、ストリキニーネを購入したしたのは、自分ではないと強く否定する。

エミリー・イングルソープの話相手であるエヴリン・ハワードは、アルフレッド・イングルソープの従妹であるにもかかわらず、以前から彼のことを憎んでいるようで、エミリー・イングルソープを毒殺した人物は、彼で間違いないと言う出張を崩さなかった。


スタイルズ荘の近くのスタイルズセントメアリー村(Styles St. Mary)にベルギーから戦火を避けて亡命していた旧友ポワロと再会したヘイスティングス大尉は、ポワロに対して、この難事件の捜査を依頼する。


スコットランドヤードのジェイムズ・ジャップ警部(Inspector James Japp)が、エミリー・イングルソープの毒殺犯人として、アルフレッド・イングルソープを逮捕しようとするが、ポワロは、ストリキニーネ購入時における薬局の記録上の署名が彼の筆跡ではないことを証明して、アルフレッド・イングルソープの逮捕を思いとどまらせた。


そのため、スコットランドヤードのジェイムズ・ジャップ警部が、アルフレッド・イングルソープの次に疑ったのは、エミリー・イングルソープの死により利益を得る上に、事件当夜のアリバイがないジョン・キャヴェンディッシュであった。

ストリキニーネ購入時における薬局の記録上の署名が彼の筆跡に酷似していること、また、アルフレッド・イングルソープとよく似た付け髭と鼻眼鏡が発見されたことが決め手となり、ジョン・キャヴェンディッシュは逮捕されてしまう。


果たして、スコットランドヤードのジェイムズ・ジャップ警部による捜査通り、ジョン・キャヴェンディッシュが、義理の母であるエミリー・イングルソープを、ストリキニーネで毒殺したのであろうか?

ポワロの灰色の脳細胞は、どのような結論を導き出すのか?


ロイドスクエア中央にある庭園(その1

ロイドスクエア中央にある庭園(その2

英国のTV会社ITV1で放映されたポワロシリーズ「Agatha Christie's Poirot」の「スタイルズ荘の怪事件」(1990年)の回では、物語の最後、ロンドンにあるジョン・キャヴェンディッシュの家を辞去した後、ポワロとヘイスティングスが連れ立って歩いている場面があるが、このシーンはロイドスクエア(Lloyd Square)で撮影された。

ロイドスクエアの西側に建つ住宅

ロイドスクエアは、前回(2016年1月24日付ブログを御参照)紹介したミデルトンスクエア(Myddelton Square)と同様に、ロンドン・イズリントン区(London Borough of Islington)のフィンスベリー地区(Finsbury)内にあり、セントパンクラス駅(St. Pancras Station)/キングスクロス駅(King's Cross Station)からリヴァプールストリート駅(Liverpool Street Station)へ向かうペントンヴィルロード(Pentonville Road)の中間辺りに位置している。ペントンヴィルロードからそれて、アムウェルストリート(Amwell Street)を少し南下した西側にロイドスクエアはある。なお、ミデルトンスクエアは、アムウェルストリートを挟んで、ロイドスクエアの反対側にある。最寄駅は、ノーザンライン(Northern Line)が通る地下鉄エンジェル駅(Angel Tube Station)。

ロイドスクエアの南側に建つ住宅

南北に延びるアムウェルストリート沿いには、パブ、カフェ、花屋、雑貨屋や不動産エージェント等が建ち並び、ハイストリートのようになっているが、ロイドスクエアの場合、ミデルトンスクエアと同じように、中央にある小振りの庭園を囲むように、四方が住宅街になっていて、外観が統一された建物が並んでいる。日中でも人通りはあまりない閑静な場所である。ポワロシリーズの「スタイルズ荘の怪事件」の時代設定である第一次世界大戦時(1914年ー1918年)と比べても、通りに駐車してある車を除けば、大きくは変わっていないのではないかと思われる。

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