2015年1月31日土曜日

ロンドン ロンバードストリート(Lombard Street)

地下鉄バンク駅の入口辺りからみたロンバードストリート

サー・アーサー・コナン・ドイル作「株式仲買店員(The Stockbroker's Clerk)」において、バーミンガム(Birmingham)へ向かう一等車の内で、今回の事件の依頼人であるホール・パイクロフト(Hall Pycroft)によるシャーロック・ホームズとジョン・ワトスンへの説明は続く。

ロンバードストリートの先には、
「20 フェンチャーチストリート」ビルが聳えている

「ついに、私はロンバードストリートにある大手株式仲買店モーソン・アンド・ウィリアムズ商会に欠員を1名見つけたのです。あなた方はEC地区のことをあまりよく御存知ではないかと思いますが、モーソン・アンド・ウィリアムズ商会はロンドンでも最も資金力がある会社です。欠員への応募は郵送のみになっていたため、私は(前の店主のコクソンさんに書いてもらった)推薦状と申込書を送りました。ただし、採用されるとは露程にも思っていませんでした。ところが、折り返し返事が来ました。もし私が次の月曜日に商会を訪問して、面接で何も問題がなければ、私をすぐにでも採用してくれると言うのです。こうしたことがどうなっているのか、良く判りません。社長自身が応募の手紙の山に手を突っ込んで、一番最初につかんだ申込書の人を採用すると言う人も居ます。とにかく、今度は私にツキが巡ってきた訳で、これ以上嬉しいことはありません。給料はコクソン商会に勤務していた時よりも週に1ポンド多いのですが、仕事の内容はコクソン商会に居た時と全く同じです。」
'At last I saw a vacancy at Mawson & Williams's, the great stockbroking firm in Lombard Street. I dare say E.C. is not much in your line, but I can tell you that this is about the richest house in London. The advertisement was to be answered by letter only. I sent in my testimonial and application, but without the least hope of getting it. Back came an answer by return, saying that if I would appear next Monday I might take over my new duties at once, provided that my appearance was satisfactory. No one knows how these things are worked. Some people say that the manager just plunges his hand into the heap and takes the first that comes. Anyhow it was my inning that time, and I don't ever wish to feel better pleased. The screw was a pound a week rise, and the duties just about the same as at Coxon's.'

ロンバードストリートの中間辺りから
地下鉄バンク駅の方を望む

パイクロフト氏が欠員を見つけたモーソン・アンド・ウィリアムズ商会があるロンバードストリート(Lombard Street)は、彼が以前勤務していたコクソン・アンド・ウッドハウス商会があったドレイパーズガーデンズ(Drapers' Gardens)と同じく、ロンドンの金融街シティー(City)内に所在している。ロンバードストリートは、イングランド銀行(Bank of England)が上に建つ地下鉄バンク駅(Bank Tube Station)から東方面へ延びる通りで、南北に走るグレースチャーチストリート(Gracechurch Street)を横切ると、以前に紹介したフェンチャーチストリート(Fenchurch Street)へと名前を変える。

ロンバードストリートの両側には、前にあった店舗の看板が
未だに数多く残っている

ロンバードストリートは銀行通りで、エドワード2世(Edward II:1284年ー1327年<在位期間 1307年ー1327年>)の治世以前からここにイタリア商人が集まっていた。当時、イタリア北部のロンバルディア地方出身の商人がヨーロッパの商業を独占していたため、この通りはロンバードストリートと呼ばれるようになった。「ロンバード」とは、「ロンバルディア」の英語読みである。

細長いロンバードストリートを
ブラックキャブ(ロンドンタクシー)が走り抜けて行く

近年、不動産再開発の波がシティー内にも押し寄せてはいるものの、ロンバードストリートの両側の建物はその波に抗って、いまだに昔のままである。

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