2015年1月16日金曜日

ロンドン セントレオナルズテラス18番地(18 St. Leonard's Terrace)

セントレオナルズテラス18番地の全景

「吸血鬼ドラキュラ(Dracula)」(1897年)を執筆したブラム・ストーカー(Bram Stoker)こと、アブラハム・ストーカー(Abraham Stoker:1847年ー1912年)は、アイルランドのダブリンで、アイルランド政庁の公務員の父母の下に、7人兄弟の3人目として出生。1846年に16歳でダブリンのトリニティーカレッジ(Trinity College)に入学し、1870年までそこで勉学に勤しんだ。7歳頃までは非常に病弱であったが、大学時代は 'University Athlete' と呼ばれる程の競技選手にまで成長したのである。
大学卒業後、ストーカーは次第に演劇に興味を抱き、劇評を書き始め、大学の先輩であるジョーゼフ・シェリダン・レ・ファニュ(Joseph Sheridan Le Fanu:1814年ー1873年/女吸血鬼小説「カーミラ(Carmilla)」(1871年)の作者として有名)が発行していた新聞「ダブリン・イーブニング・メール(Dublin Evening Mail)」に寄稿。1876年12月にダブリンのシアターロイヤル(Theatre Royal)でウィリアム・シェイクスピア(William Shakespeare)作「ハムレット(Hamlet)」を上演していたサー・ヘンリー・アーヴィング(Sir Henry Irving:1838年ー1905年)の劇評をストーカーが書き、それが縁でアーヴィング卿と親しい友人になる。
1878年にストーカーはオスカー・ワイルド(Oscar Wilde:1854年-1900年)の恋人だったフローレンス・バルコム(Florence Balcombe)と結婚する。偶然ではあるが、ストーカーは大学時代からワイルドと知り合いであった。

チェルシー地区内で真っ赤に咲き誇る薔薇の花々

その後、ストーカー夫妻はロンドンに移り住み、ライシアム劇場(Lyceum Theatreー2014年7月12日付ブログで紹介済)を拠点としていたアーヴィング卿の依頼に応じて、ストーカーはアーヴィング劇団の世話人兼ライシアム劇場の支配人に就任し、27年間にわたって務めた。ライシアム劇場では、ストーカーの功績を讃えて、同劇場の外壁にアーヴィング卿と一緒に彼の名前もプレートとして掲げられている。
この期間を通じて、ストーカーはロンドンの上流階級に知られるようになる。その中の一人が、シャーロック・ホームズシリーズの作者であるサー・アーサー・コナン・ドイルである。実際、「四つの署名(The Sign of the Four)」(1890年)において、彼はライシアム劇場を物語の舞台として使用している。

ライシアム劇場の外壁に刻まれている
ブラム・ストーカーの名前

1890年に英国北東部の港街ウィットビー(Whitby)を訪れた際、ストーカーは「吸血鬼ドラキュラ」の構想を得たと言われている。ウィットビーは、「吸血鬼ドラキュラ」において、トランシルヴァニア(Transylvania)からやって来たドラキュラ伯爵(Count Dracula)が上陸する英国での最初の場所である。
その後、図書館で「串刺し公ヴラド・ツェペシュ(Vlad Tepes the Impaler)」と呼ばれたワラキア公ヴラド3世(Vlad III Dracula of Wallachia:1431年ー1476年)の記述を見つけたストーカーは自分の構想をまとめ、1897年に「吸血鬼ドラキュラ」を出版。アーヴィング卿がこれをただちに演劇化したため、彼の小説は非常に大きな反響を得たとのこと。なお、一般に、ドラキュラのモデルは、ワラキア公ヴラド・ツェペシュとされているが、実際のモデルはアーヴィング卿だったという説も存在している。

セントレオナルズ18番地の外壁に架けられている
イングリッシュヘリテージ管理のブループラーク

そのブラム・ストーカーがロンドンで住んでいた家が、高級住宅地の一つチェルシー地区(Chelsea)内に所在している。具体的な住所は「18 St. Leonard's Terrace, Chelsea SW3 4QG」。地下鉄のスローンスクエア駅(Sloane Square Tube Station)からテムズ河(River Thames)方面に向かって南西に延びるキングスロード(King's Road)を南側に入ったところで、非常に静かな住宅街内にある。
家の外壁には、ブラム・ストーカーがここに住んでいたことを示すイングリッシュヘリテージ(English Heritage)管理のブループラーク(Blue Plaque)が架けられている。

0 件のコメント:

コメントを投稿