2021年3月28日日曜日

アガサ・クリスティー作「死との約束」<英国 TV ドラマ版>(Appointment with Death by Agatha Christie

第61話「死との約束」が収録された
エルキュール・ポワロシリーズの DVD コレクション No. 7 の表紙


アガサ・メアリー・クラリッサ・クリスティー(Agatha Mary Clarissa Christie:1890年ー1976年)作「死との約束(Appointment with Death → 2021年3月13ひ

付ブログで紹介済)」(1938年)の TV ドラマ版が、英国の TV 会社 ITV 社による制作の下、「Agatha Christie’s Poirot」の第61話(第11シリーズ)として、2009年12月25日に放送されている。英国の俳優であるサー・デイヴィッド・スーシェ(Sir David Suchet:1946年ー)が、名探偵エルキュール・ポワロを演じている。ちなみに、日本における最初の放送日は、2010年9月16日である。


「死との約束」が収録されている
ITV 社制作「Agatha Christie's Poirot」の DVD 版の裏表紙

アガサ・クリスティーによる原作では、エルサレム(Jersalem)にあるキングソロモンホテル(King Solomon Hotel)とヨルダン(Jordan)の古都ペトラ(Petra)にある遺跡が、物語の舞台となっている。英国 TV ドラマ版では、シリア(Syria)にあるホテルコンスタンティン(Hotel Constantine)と遺跡発掘現場が、物語の舞台に変更されている。


英国 TV ドラマ版における主な登場人物(エルキュール・ポワロとカーバリー大佐(Colonel Carbury)を除く)は、以下の通り。


(1)グレヴィル・ボイントン卿(Lord Greville Boynton)

(2)セオドラ・ボイントン卿夫人(Lady Theodora Boynton)

(3)レオナルド・ボイントン(Leonard Boynton): ボイントン卿の長男

(4)レイモンド・ボイントン(Raymond Boynton): ボイントン卿夫人の(義理の)次男

(5)キャロル・ボイントン(Carol Boynton): ボイントン卿夫人の(義理の)長女

(6)ジネヴラ・ボイントン(Ginevra Boynton): ボイントン卿夫人の(義理の)次女

(7)ジェファーソン・コープ(Jefferson Cope): ボイントン卿夫人の養子だった人物

(8)サラ・キング(Sarah King): 女医

(9)テオドール・ジェラール(Theodore Gerard): 麻酔科医

(10)セリア・ウエストホルム(Dame Celia Westholme): 紀行作家

(11)シスター アグニエスカ(Sister Agnieszka): 修道女

(12)ナニー テイラー(Nanny Taylor): 保母


(1)ボイントン卿は、英国 TV ドラマ版用のキャラクターで、アガサ・クリスティーの原作には登場しない。彼は、シリアにおいて、遺跡の発掘調査を行っている。

(2)ボイントン卿夫人は、英国 TV ドラマ版において、ボイントン卿の後妻で、米国で上場している大企業を経営しており、夫であるボイントン卿の遺跡発掘調査に多額の資金を援助している。夫との間に子供ができなかった彼女は、レイモンド、キャロルやジネヴラを養子としたものの、彼らの幼少期から、ナニー テイラーと一緒になって、虐待を繰り返していた。

(3)レオナルド・ボイントンは、ボイントン卿の先妻の子で、ボイントン卿夫人の実子ではない。通常は、ドーセット州(Dorset)に所在する屋敷の管理をしているが、今回、父親であるボイントン卿の遺跡発掘調査を手伝っている。アガサ・クリスティーの原作では、レノックス・ボイントン(Lennox Boynton)となっているが、英国 TV ドラマ版では、名前が変更されている。また、原作では、結婚しているが、英国 TV ドラマ版では、結婚しておらず、そのため、原作のネイディーン・ボイントン(Nadine Boynton)は、登場しない。

(6)ジネヴラ・ボイントンは、アガサ・クリスティーの原作では、ボイントン夫人の実子であるが、英国 TV ドラマ版では、ボイントン卿夫人の養子の上、彼女から虐待を受けていた設定に変更されている。

(7)ジェファーソン・コープは、アガサ・クリスティーの原作では、ネイディーン・ボイントンの友人である米国人という設定であったが、英国 TV ドラマ版では、ネイディーン・ボイントンが登場しないため、別の役割が与えられ、ボイントン卿夫人の養子だった過去があり、彼も彼女から虐待を受けていたことから、彼女へ復讐すべく、経済的な損害を与える計画をしている。

(9)テオドール・ジェラールは、アガサ・クリスティーの原作では、フランス人の精神科医という設定であったが、英国 TV ドラマ版では、スコットランド出身の麻酔科医という設定に変更されている。

(10)セリア・ウエストホルムは、アガサ・クリスティーの原作では、ウエストホルム卿夫人(Lady Westholme)という英国下院議員という設定であったが、英国 TV ドラマ版では、紀行作家という設定に変更されている。

(11)シスター アグニエスカは、英国 TV ドラマ版用のキャラクターで、実は、中東において、白人女性の人身売買を生業とする裏の顔を有している。

(12)ナニー テイラー(Nanny Taylor)も、英国 TV ドラマ版用のキャラクターであるが、アガサ・クリスティーの原作における保母のアマベル・ピアス(Amabel Pierce)に相当するものと思われる。ただし、英国 TV ドラマ版では、ボイントン卿夫人と一緒になって、彼女の養子であるレイモンド、キャロルやジネヴラ達を虐待していた過去がある設定となっている。


カーバリー大佐は、アガサ・クリスティーの原作では、現地の警察署長という設定であるが、英国 TV ドラマ版では、中東における白人女性の人身売買組織を捜査および壊滅するために、現地へとやって来ている。


また、ボイントン卿夫人を殺害する犯人は、アガサ・クリスティーの原作通りであるが、殺害動機については、自分の過去(犯罪歴)がボイントン夫人によって暴露されることを防ぐためという原作とは異なり、英国 TV ドラマ版では、物語性を強めるためか、ボイントン卿夫人やナニー テイラーによって虐待されていた実子を守るための復讐という内容へと大きく変更されている。それもあって、犯人には、もう一人の親である人物が、共犯者として加わっているが、これも、アガサ・クリスティーの原作とは、大きく異なる点である。


BBC 制作「シャーロック」において、
シャーロック・ホームズの兄であるマイクロフト・ホームズを演じたマーク・ゲイティス(画面右端)が、
ボイントン卿の長男であるレオナルド・ボイントン役で出演してる。

「シャーロック(Sherlock)」<サー・アーサー・イグナティウス・コナン・ドイル(Sir Arthur Ignatius Conan Doyle:1859年ー1930年)原作のシャーロック・ホームズシリーズを翻案して、舞台をヴィクトリア朝時代のロンドンから21世紀のロンドンに置き換え、自称「コンサルタント探偵」のシャーロック・ホームズが、同居人かつ相棒であるジョン・ヘイミッシュ・ワトスンと一緒に、スマートフォンやインターネット等の最新機器を駆使して、事件を解決する様を描くTVドラマで、英国 BBC が制作の上、2010年7月から BBC1 で放映>において、シャーロック・ホームズの兄であるマイクロフト・ホームズ(Mycroft Holmes)を演じている英国の俳優かつ脚本家で、小説家でもあるマーク・ゲイティス(Mark Gatis:1966年ー)が、レオナルド・ボイントンを担当している。


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