2020年5月3日日曜日

ジョン・ディクスン・カー作「三つの棺」(The Three Coffins by John Dickson Carr)–その1

英国の Orion Books 社から出版されている
ジョン・ディクスン・カー作「三つの棺」の表紙
(Cover design & illustration : obroberts)

「三つの棺(The Three Coffins 英題: The Hollow Man)」は、米国のペンシルヴェニア州(Pennsylvania)に出生して、英国人のクラリス・クルーヴス(Clarice Cleaves)との結婚後、1932年から1946年にかけて英国のブリストル(Bristol)に居を構えていた米国の推理作家で、「不可能犯罪の巨匠」とも呼ばれているジョン・ディクスン・カー(John Dickson Carr:1906年ー1977年)が1935年に発表した推理小説で、ギディオン・フェル博士(Dr. Gideon Fell)が登場するシリーズ第6作目に該る。本先品は、彼による数ある密室ミステリーの中でも、最高峰と評されている不朽の名作である。

シャルル・ヴェルネ・グリモー(Charles Vernet Grimaud)が英国で暮らし始めて、約30年が経っていた。彼は、大学の教授を務めた後、現在は、大英博物館(British Museum)において、無給のポストに着いていた。彼は、フランスから英国にやって来た時点で、既に充分裕福な状態だったので、生活に困ることはなかったのである。ただし、英国へとやって来る前の彼の経歴は、ハッキリとしていなかった。

シャルル・グリモー教授は、大英博物館が所在するロンドンのブルームズベリー地区(Bloomsbury)内にあるラッセルスクエア(Russell Square)の西側に建つ住宅に居を定めていた。シャルル・グリモー教授邸には、他に以下の人物が同居していた。

(1)ロゼット・グリモー(Rosette Grimaud): シャルル・グリモー教授の娘
(2)エルネスチーヌ・デュモン(Ernestine Dumont): グリモー家の家政婦
(3)ステュアート・ミルズ(Stuart Mills): シャルル・グリモー教授の秘書
(4)ヒューバート・ドレイマン(Hubert Drayman): 元教師で、グリモー家の居候
(5)アニー(Annie): グリモー家のメイド

毎週、土曜日と日曜日を除くほぼ毎晩、シャルル・グリモー教授は、大英博物館の近くのミュージーアムストリート(Museum Street)沿いにあるパブ「ウォーリックタヴァーン(Warwick Tavern)」へと出かけて、私的な集まりで語らうことを日課にしていた。この私的な集まりには、シャルル・グリモー教授を除くと、以下の人物が恒常的に参加していた。

(1)ステュアート・ミルズ
(2)アンソニー・ペチス(Anthony Pettis): 怪談蒐集家
(3)ボイド・マンガン(Boyd Mangan): 新聞記者
(4)ジェローム・バーナビー(Jerome Burnaby): 芸術家

2月6日(水)の晩、いつものように、パブ「ウォーリックタヴァーン」において、シャルル・グリモー教授達が吸血鬼について語り合っていると、突然、一人の男がその話に割り込んできたのである。その男は、シャルル・グリモー教授に対して、「棺の中から抜け出すことができる人間がいる。自分もその一人だ。自分の弟は、それ以上のことができる上に、教授にとって、非常に危険な存在である。自分の弟は、教授の命を狙っていて、近々、教授を訪問する予定だ。」と話すと、それに加えて、「三つの棺(Three Coffins)」という謎の言葉を告げた。そして、その男はシャルル・グリモー教授に名刺を渡すと、パブを去って行った。その名刺には、「カリオストロストリート2B(2B Cagliostro Street)に住む奇術師(illusionist)のピエール・フレイ(Pierre Fley)」と書かれていた。

シャルル・グリモー教授達の話に突然割り込んできたピエール・フレイという人物は、一体何者で、どういった目的があったのだろうか?

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