2020年5月9日土曜日

ロンドン ドッグ島(Isle of Dogs)–その2

ドッグ島内にあるミルウォール内ドック(Millwall Inner Dock)ーその1

ドッグ島(Isle of Dogs)は、元々、湿地帯(沼地)であることに加えて、三方をテムズ河(River Thames)に囲まれている関係上、テムズ河の氾濫による洪水に昔から悩まされてきた歴史がある。
17世紀にオランダ人技師の協力の下、排水作業が行われた後、地域の開発が始まる。
ドッグ島の西側は、以前、「Marsh Wall(湿地帯の壁)」と呼ばれていたファ、排水作業のため、数多くの風車小屋(Windmill)が建てられたことに伴い、「Millwall(風車小屋の壁)」と呼ばれるようになった。

ドッグ島内にあるミルウォール内ドックーその2

ドッグ島の近代化は、19世紀に入ってから、具体化される。
1802年、ドッグ島の北側に「西インドドック(West India Dock→2020年3月28日 / 4月4日付ブログで紹介済)」が、そして、1806年に「東インドドック(East India Dock)」が建設された後、1868年、ドッグ島の中央に「ミルウォールドック(Millwall Dock)」が建設されると、造船所 / 修理ドックで働く労働者が集まるようになる。サー・アーサー・イグナティウス・コナン・ドイル(Sir Arthur Ignatius Cona Doyle:1859年-1930年)が1890年に発表したシャーロック・ホームズシリーズ長編第2作目の「四つの署名(The Sign of the Four)」事件が発生したのは、1888年なので、ミルウォールドックが建設された20年後に該る。

ドッグ島内にあるミルウォール内ドック
ーその3

ただ、デットフォード水域(Deptford Reach→2020年4月11日 / 4月25日付ブログで紹介済)においても述べたように、

(1)デットフォード(Deptford)で造られた大型の船がテムズ河を航行することが困難であったこと
(2)デットフォードに対抗する造船所 / 修理ドックが英国南岸のプリマス(Plymouth)やポーツマス(Portsmouth)等に建設されたこと
(3)1815年に対ナポレオン戦争(Napoleonic Wars)が終わり、戦艦を造船したり、修理する必要性が少なくなったこと

等から、ドッグ島の対岸にあるデットフォードにおける造船業が既に衰退を迎えつつあった頃で、1869年に王立造船所 / 修理ドック(Deptford Dockyard / 1st Royal Navy Dockyard)が閉鎖されてしまう。
1909年にロンドン港湾局(Port of London Authority)が、西インドドック、東インドドックとミルウォールドックの3つを管理下に置くが、時代の流れには勝てなかった。

ミルウォーク内ドックの近くにある劇場ーその1
ミルウォーク内ドックの近くにある劇場ーその2

第二次世界大戦(1939年ー1945年)中、ドイツ空軍による重度の空襲を受けて、造船所 / 修理ドックや倉庫群は大きく破壊され、甚大な被害を蒙った。
第二次世界大戦後に復興するものの、港湾産業自体が衰退し始めていた。その当時、海運業では、コンテナ輸送が中心となっており、ロンドン中心部に近い港湾施設の重要性が下がっていたのである。その結果、この地域における造船所 / 修理ドックは、1970年代に次々と閉鎖され、残った西インドドックとミルウォールドックについても、1980年代に遂に閉鎖されてしまう。

カナリーワーフとして再発展している西インドドックーその1
カナリーワーフとして再発展している西インドドックーその2

その後、この地域は廃墟と化していたが、保守党初の女性党首(在任期間:1975年ー1990年)で、英国初の女性首相(在任期間:1979年ー1990年)となるサッチャー女男爵マーガレット・ヒルダ・サッチャー(Margaret Hilda Thatcher, Baroness Thatcher)が率いる保守党政権によって、この地域を再活性化する計画が発足され、西インドドックがあった一帯に、シティー・オブ・ロンドン(City of London→2018年8月4日 / 8月11日付ブログで紹介済)に対抗する金融センターとして、「カナリーワーフ(Canary Wharf)」が構築された。そして、ミルウォールドックがあった場所では、カナリーワーフで働く人々のための住宅街としての整備が進められた。以前、造船所 / 修理ドックとして発展したドック島は、今、カナリーワーフとして、大規模なウォーターフロント再開発地域として再発展しているのである。

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