2018年5月5日土曜日

ジョン・ディクスン・カー作「帽子収集狂事件」(The Mad Hatter Mystery by John Dickson Carr)−その2

ルイス・キャロル作「不思議の国のアリス」に登場する
「いかれ帽子屋」(その1)
Illustration by Sir John Tenniel and coloured by Diz Wallis

至急、現場のロンドン塔(Tower of London→2018年4月8日 / 4月15日 / 4月22日付ブログで紹介済)へと駆け付けるギディオン・フェル博士(Dr. Gideon Fell)達であったが、深い霧が立ち込めるロンドン塔内で足止めされている証言者の中には、(1)ウィリアム・ビットン卿(Sir William Bitton)の弟レスター・ビットン(実業家)の妻で、殺害されたフィリップ・ドリスコル(Philip Driscoll)と不倫関係にあったと思われるローラ・ビットン、(2)米国人の実業家かつ古書収集家で、ウィリアム・ビットン卿の屋敷に滞在していたジュリアス・アーバーや(3)フィリップ・ドリスコルが住むタヴィストック荘の向かいの部屋に暮らす未亡人アマンダ・ラーキン等、不思議なことに、フィリップ・ドリスコルの関係者が多く含まれていた。
また、妻ローラとフィリップ・ドリスコルの不適切な関係を疑う夫のレスター・ビットンも、容疑者の一人であった。
ロンドン塔の副長官メイスン将軍の秘書で、ウィリアム・ビットン卿の娘シーラ・ビットンの婚約者でもあるロバート・ダルライは、当初、フィリップ・ドリスコルとロンドン塔で会う約束をしていたが、当日、フィリップ・ドリスコルの名を語った電話によって、タヴィストック荘に呼び出されており、ロンドン塔を不在にしていたことが判った。

ルイス・キャロル作「不思議の国のアリス」に登場する「いかれ帽子屋」(その2)
Illustration by Sir John Tenniel and coloured by Diz Wallis

果たして、フィリップ・ドリスコルを殺害した犯人は誰で、その動機は?そして、「いかれ帽子屋(The Mad Hatter)」との間に、一体どのような繋がりがあるのだろうか?

ルイス・キャロル作「不思議の国のアリス」に登場する「いかれ帽子屋」(その3)
Illustration by Sir John Tenniel and coloured by Diz Wallis

米国の推理作家で、「不可能犯罪の巨匠」とも呼ばれているジョン・ディクスン・カー(John Dickson Carr:1906年ー1977年)の作品には、特に密室を中心とした不可能犯罪をテーマにしたものが多いという特徴があるが、「帽子収集狂事件(The Mad Hatter Mystery)」では、密室を超える不可能犯罪トリックが使用されている。
明智小五郎シリーズ等で有名な日本の推理作家である江戸川乱歩(1894年ー1965年)は、これを非常に高く評価して、カーの作品の中では、ベスト1に、また、黄金時代のミステリーベスト10の中では、第7位に推している。また、金田一耕助シリーズ等で著名な日本の推理作家である横溝正史(1902年ー1981年)も、「黒死荘の殺人(The Plague Court Murders→カーター・ディクスン名義)」等と共に、「帽子収集狂事件」をベスト3の一作として評している。

ルイス・キャロル作「不思議の国のアリス」に登場する「いかれ帽子屋」(その4)
Illustration by Sir John Tenniel and coloured by Diz Wallis

「いかれ帽子屋(mad hatter)」と言うと、英国の数学者、論理学者、写真家、作家で詩人でもあったルイス・キャロル(Lewis Carroll:1832年ー1898年→ちなみに、本名はチャールズ・ラトウィッジ・ドジソン(Charles Lutwidge Dodgson))作「不思議の国のアリス(Alice’s Adventures in Wonderland)」(1865年)に登場するキャラクターに由来すると思われがちであるが、英語には古くから「as mad as hatter」という慣用句が存在しており、これはフランス語の慣用句である「fou comme un chapelier」が英語に転じたものである。昔、フェルト帽を作る際に、帽子屋の職人は硝酸第一水銀を使用しており、この硝酸第一水銀が原因で、彼らの多くが水銀中毒に罹ったため、「帽子屋のように狂っている」という慣用句が生まれた、とのこと。

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