2016年6月11日土曜日

ロンドン ケニントンロード(Kennington Road)

地下鉄ランベスノース駅から始まるケニントンロード

サー・アーサー・コナン・ドイル作「六つのナポレオン像(The Six Napoleons)」は、ある夜、スコットランドヤードのレストレード警部(Inspector Lestrade)がベーカーストリート221Bのシャーロック・ホームズの元を訪れるところから、物語が始まる。
最近、ロンドンの街中で何者かが画廊や住居等に押し入って、ナポレオンの石膏胸像を壊してまわっていたのだ。そのため、レストレード警部はホームズのところへ相談に来たのである。レストレード警部が発した「強盗」という言葉に興味を覚えたホームズのために、彼は警察手帳を取り出して、事の経緯について説明を始めるのであった。


「最初の事件が報告されたのは、4日前です。」と、彼(レストレード警部)は言った。「モース・ハドソンの店で発生しました。モース・ハドソンはケニントンロードで画廊を営んでいます。店員が店の売り場をちょっと離れた時、何かが砕ける音が聞こえました。それで、店員が急いで売り場に戻ってみると、カウンターの上に他の美術品と一緒に置いてあったナポレオンの石膏胸像が粉々に砕けて、破片が床の上に散らばっていたのです。店員が店から通りへ飛び出しましたが、『一人の男が店から駆け出して来るのに気付いた。』と証言する通行人が数名居たものの、店員はナポレオンの石膏胸像を壊した犯人を見つけることはできず、犯人の身元を特定する方法もありませんでした。これは散発する無差別の破壊行為と思われたので、付近を巡回中の巡査には、そのように被害が届けられたのです。壊された石膏像の値段は数シリングに過ぎず、特別な捜査を行うには、事件全体としてあまりにも子供じみているようでした。」

地下鉄ランベスノース駅の入口
通りを挟んで、
地下鉄ランベスノース駅の反対側に建つ教会

'The first case reported was four days ago,' said he. 'It was at the shop of Morse Hudson, who has a place for the sale of pictures and statues in the Kennington Road. The assistant had left the front shop for an instant when he heard a crash, and hurrying in he found a plaster bust of Napoleon, which stood with several other works of art upon the counter, lying shivered into fragments. He rushed out into the road, but although several passer-by declared that they had noticed a man run out of the shop, he could neither see anyone nor could he find any means of identifying the rascal. It seemed to be one of those senseless acts of hooliganism which occur from time to time, and it was reported to the constable on the beat as such. The plaster cast was not worth more than a few shillings, and the whole affair appeared to be too childish for any particular investigation.'

ケニントンロード(その1)
ケニントンロード(その2)

ケニントンロード(Kennington Road)はテムズ河(River Thames)の南岸にあるロンドン・ランベス区(London Borough of Lambeth)内の南北に走る約1マイルの大通りで、北は地下鉄ランベスノース駅(Lambeth North Tube Station)の前を通るウェストミンスターブリッジロード(Westminster Bridge Road)から始まり、南は地下鉄エレファント・アンド・キャッスル駅(Elephant and Castle Tube Station)から延びてくるケニントンパークロード(Kennington Park Road)に突き当たる。

ケニントンロード(その3)
ケニントンロード(その4)

元々、この一帯は開けた土地であったが、1750年にテムズ河に架かるウェストミンスターブリッジ(Westminster Bridge)が正式に開通した翌年の1751年、ウェストミンスターブリッジとテムズ河の南側の交通を改善するために、ケニントンロードは敷設された。18世紀後半に入り、リゾート地としてブライトン(Brighton)の人気が高まるとともに、多くのロンドン市民がこのケニントンロードを通って、英国南部の海岸へと出かけたのである。

ケニントンロード沿いに建つ戦争博物館

ケニントンロード沿いの地下鉄ランベスノース駅寄りのところに、戦争博物館(Imperial War Museum)がある。
「ひまわり」等の絵画で知られるオランダ出身で後期印象派の画家であるフィンセント・ファン・ゴッホ(Vincent Willem van Gogh:1853年ー1890年)は、1874年の8月から10月までと1874年12月から1875年5月までの2回、ケニントンロード395番地にあるアイヴィーコテージ(Ivy Cottage)に滞在していた。

レスタースクエア(Leicester Square)に設置されている
チャーリー・チャップリンのブロンズ像ー
同像を制作したのは、
地下鉄ベーカーストリート駅前のホームズ像の作者でもある
ジョン・ダブルデイ(John Doubleday)

また、「黄金狂時代」、「街の灯」、「モダンタイムス」や「ライムライト」等で知られる英国の映画俳優/映画監督であるチャールズ・スペンサー・”チャーリー”・チャップリン("Charlie" Chaplin:1889年ー1977年)が、ケニントンロード287番地で子供時代を過ごしている。 

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