2016年6月18日土曜日

ロンドン ピットストリート131番地(131 Pitt Street)


サー・アーサー・コナン・ドイル作「六つのナポレオン像(The Six Napoleons)」は、ある夜、スコットランドヤードのレストレード警部(Inspector Lestrade)がベーカーストリート221Bのシャーロック・ホームズの元を訪れるところから、物語が始まる。
最近、ロンドンの街中で何者かが画廊や住居等に押し入って、ナポレオンの石膏胸像を壊してまわっていたのだ。そのため、レストレード警部はホームズのところへ相談に来たのである。最初の事件は、4日前にモース・ハドソン氏(Mr Morse Hudson)がテムズ河(River Thames)の南側にあるケニントンロード(Kennington Road)で経営している画廊で、そして、2番目の事件は、昨夜、バーニコット博士(Dr Barnicot)の住まい(ケニントンロード)と診療所(ロウワーブリクストンロード(Lower Brixton Road))で発生していた。これで、ナポレオンの石膏胸像が合計で3体壊されたことになる。続いて、3番目の事件が起きたのであった。


私の友人(ホームズ)が依頼していた展開は、彼が想像していた以上に速く、そして、非常に悲劇的な形でやって来た。翌朝、私が寝室でまだ服を着ていたところ、寝室のドアがノックされ、ホームズが電報を手にして入って来た。彼は電報の内容を読み上げた。「ケンジントンのピットストリート131番地へ至急来られたし。 レストレード」
「何が起きたのかな?」と、私が尋ねた。
「判らない。ー多分、何かが起きたんだろう。しかし、あの胸像の話の続きでないかと、僕は思っている。そうだとすると、あの偶像破壊者は、ロンドンの別の地区で犯行を開始したことになるな。ワトスン、テーブルの上にコーヒーがあるよ。既に家の前に辻馬車を呼んである。」
30分で私達はピットストリートに到着した。そこは、ロンドンの生活の最も活発な流れの一つのすぐ脇にある静かで水が澱んだような場所だった。131番地の建物は、屋根の低い、立派ではあるものの、あまり夢のない家並みの一つであった。私達が辻馬車で131番地へ近づくと、家の前の手摺りは野次馬で溢れかえっているのが見えた。ホームズは口笛を吹いた。


The development for which my friend had asked came in a quicker and an infinitely more tragic form than he could have imagined. I was still dressing in my bedroom next morning when there was a tap at the door and Holmes entered, a telegram in his hand. He read it aloud: 'Come instantly, 131 Pitt Street, Kensington. Lestrade.'
'What is it, then?' I asked.
'Don't know - may be anything. But I suspect it is the sequel of the story of the statues. In that case our friend, the image-breaker, has begun operations in another quarter of London. There's coffee on the table, Watson, and I have a cab at the door.'
In half an hour we had reached Pitt Street, a quiet little backwater just beside one of the briskest currents of London life. Number 131 was one of a row, all flat chested, respectable, and most unromantic dwellings. As we drove up we found the railings in front of the house lined by a curious crowd. Holmes whistled.



レストレード警部から受け取った電報の要請を受けて、ホームズとジョン・ワトスンが辻馬車で向かったピットストリート(Pitt Street)は実在の通りで、ロンドンの高級住宅街の一つであるケンジントン&チェルシー王立区(Royal Borough of Kensington and Chelsea)のケンジントン地区(Kensington)内にある。ピットストリートは、北側の地下鉄ノッティングヒルゲート駅(Notting Hill Gate Tube Station)、東側のケンジントンガーデンズ(Kensington Gardens)、南側の地下鉄ハイストリートケンジントン駅(High Street Kensington Tube Station)、そして、西側のホーランドパーク(Holland Park)に囲まれている。地下鉄ノッティングヒルゲート駅の前を通るノッティングヒルゲート通り(Notting Hill Gate)と地下鉄ハイストリートケンジントン駅の前を通るケンジントンハイストリート(Kensington High Street)を南北に結ぶケンジントンチャーチストリート(Kensington Church Street)があり、この通りの南寄りのところから西へ入った通りがデュークスレーン(Dukes Lane)で、これが途中でピットストリートと名前を変え、ホーントンストリート(Horntorn Street)に突き当たる。



ピットストリートはそれ程長い通りではなく、残念ながら、ホームズとワトスンが向かったピットストリート131番地は架空の住所で実在しない。

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