2016年5月1日日曜日

ロンドン マウントストリートガーデンズ(Mount Street Gardens)

マウントストリートガーデンズ内は、市内の中心部にあるとは思えない程、
緑に溢れ、静かな空間に満ちている

アガサ・クリスティー作「エッジウェア卿の死(Lord Edgware Dies)」(1933年)は、エルキュール・ポワロとアルゼンチンから一時帰国したヘイスティングス大尉が、米国からロンドン/パリ公演ツアーに来ている女芸人カーロッタ・アダムズ(Carlotta Adams)の舞台を観たところから、その物語が始まる。背景や衣装等を必要としない彼女の「人物模写演技」は完璧で、一瞬で顔つきや声音等を変えて、その人自身になりきるのであった。男爵であるエッジウェア卿(Lord Edgware)と結婚している米国出身の舞台女優ジェーン・ウィルキンソン(Jane Wilkinson)の物真似に関しても見事の一言で、ポワロは深く感銘を受ける。


その夜、ポワロの元をジェーン・ウィルキンソン本人が訪れる。彼女から「離婚話に応じない夫を説得してもらいたい。」という依頼を受けたポワロがエッジウェア卿を訪問したところ、彼は「6ヶ月も前に、離婚に同意する旨を彼女宛に手紙で既に伝えた。」と答えるのであった。話のくい違いに納得がいかないポワロであったが、そのまま帰宅せざるを得なかった。

南側からマウントストリートガーデンズ内に入ったところ

その後、エッジウェア卿が自宅において何者かに鋭利な刃物で刺され、他殺体となって発見される。事件当夜、犯行現場の屋敷で姿を目撃されたジェーン・ウィルキンソンが有力な容疑者となるが、その犯行時刻、彼女は離れた場所で行われていた晩餐会に出席しており、犯行現場に行く時間がないという鉄壁のアリバイがあった。非常に難解な謎に、ポワロの灰色の脳細胞が挑む。


英国のTV会社 ITV1 で放映されたポワロシリーズ「Agatha Christie's Poirot」の「エッジウェア卿の死」(2000年)の回では、エッジウェア今日が何者かに刺殺された後、ポワロとジェーン・ウィルキンソンが事件のことを話しながら歩く場面に、マウントストリートガーデンズ(Mount Street Gardens)が使用されている。


マウントストリートガーデンズは、ロンドンの中心部シティー・オブ・ウェストミンスター区(City of Westminster)の高級地区メイフェア(Mayfair)内にあり、北側はマウントストリート(Mount Streetーポワロが登場する「ヒッコリーロードの殺人(Hickory, Dickory, Dock)」で紹介済→2015年7月12日付ブログを御参照)、東側はバークリースクエア(Berkeley Squareーシャーロック・ホームズが登場する「高名な依頼人(The Illstrious Client)」で紹介済→2014年11月29日付ブログを御参照)、南側はサウスストリート(South Street)/ファームストリート(Farm Street)、そして、西側はサウスオードリーストリート(South Audley Street)に囲まれている。

マウントストリートガーデンズ内に設置されている馬の首のオブジェ

マウントストリートガーデンズ内に置かれている水飲み場

現在、マウントストリートガーデンズがある土地は、1723年に第4代イートン准男爵リチャード・グロヴナー(Sir Richard Grosvenor, 4th Baronet of Eaton:1689年ー1732年)がハノーヴァースクエア(Hanover Square)にあるセントジョージズ教会(St. George's Churchーホームズが登場する「独身の貴族(The Noble Bachelor)」で紹介済→2015年2月28日付ブログを御参照)に対して教会用墓地として売却したが、ロンドン市民の健康面への影響が考慮され、1854年の法改正に伴い、ロンドン市内での埋葬ができなくなってしまった。

マウントストリートガーデンズを東へ進むと、
奥には教会(Church of the Immaculate Conception Farm Street)がある

そのため、1889年に教会用墓地から公共のガーデンへと変わったのである。清教徒革命(Puritan Revolution:1642年ー1649年)において、議会軍を率いて王党派を破り、英国王チャールズ1世(Charles I:1600年ー1649年 在位期間:1625年ー1649年)を処刑して、護国卿となったオリヴァー・クロムウェル(Oliver Cromwell:1599年ー1659年)が築いた要塞があった場所マウントフィールド(Mount Field)に因んで、マウントストリートガーデンズと呼ばれるようになった、とのこと。

ナショナルポートレートギャラリー
(National Portrait Gallery)で販売されている
オリヴァー・クロムウェルの肖像画の葉書
(Robert Walker / 1649年頃 / Oil on panel
1257 mm x 1016 mm) 

周囲をフラット、オフィスや商業店舗等に囲まれているが、
都会の喧騒とは全く無関係である

マウントストリートガーデンズの場合、近くにあるグロヴナースクエア(Grosvenor Squareーホームズが登場する「独身の貴族(The Noble Bachelor)」で紹介済→2015年2月22日付ブログを御参照)、ハノーヴァースクエアやバークリースクエアとは異なり、四方をフラット、オフィスや商業店舗等に囲まれた内にあり、すぐ近くにホテルやショッピング街等の騒々しい場所があるとは思えない程、静かな空間が広がっている。マウントストリートガーデンズ内の遊歩道には、ベンチが数多く並べられており、その多くが千香君グロヴナースクエアにある米国大使館や米国政府系機関等に勤務するスタッフや家族が寄付したものである。彼らに限らず、日中を通して、近くのフラット住民、オフィス/商業店舗のスタッフ、買物客や観光客等が多くやって来て、ベンチや芝生で休憩/休息をとっている。

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