2015年6月28日日曜日

ロンドン イングランド銀行(Bank of England)ーその2

スレッドニードルストリートに面した
イングランド銀行本店建物の正面

イングランド銀行の正式名称は「Governor and Company of the Bank of England」で、英国の中央銀行である。イングランド銀行の本店は、英国の経済活動の中心地であるシティー(City)内にあり、スレッドニードルストリート(Threadneedle Street)に面していることから「スレッドニードルストリートの老婦人(The Old Lady of Threadneedle Street)」と呼ばれることがある。

イングランド銀行裏手角—
手前の通りがプリンシズストリート(Princes Street)で、
左手奥の通りがロスベリー通り(Lothbury)

名誉革命(Glorious Revolution:1688年)の後、ステュアート朝のウィリアム3世(William Ⅲ:1650年ー1702年 在位:1689年ー1702年)とメアリー2世(Mary Ⅱ:1662年ー1694年 在位:1689年ー1702年)の共同統治下にあったイングランドは、神聖ローマ帝国のプファルツ選定侯の継承戦争に端を発した大同盟戦争(War of the Grand Alliance:1688年ー1697年)に参戦していた。膨張政策を採るフランス国王ルイ14世対アウグスブルグ同盟に結集した欧州諸国の戦いであった。1690年、ビーチーヘッドの海戦(Battle of Beachy Head)において、フランス艦隊に敗北を喫したイングランドは、海軍増強のため、早急に軍事費を手当てする必要があった。名誉革命間もないため、市場から軍事費を調達することは不可能に近かった。そこで、スコットランド人のウィリアム・パターソン(William Paterson:1658年ー1719年)と財務長官で、初代ハリファックス伯爵チャールズ・モンタギュー(Charles Montagu, 1st Earl of Halifax:1661年ー1715年)によって、1694年にイングランド銀行が創設され、同年7月27日にウィリアム3世とメアリー2世により認可された。

イングランド銀行裏手全景—建物が増築されていることが判る

イングランド銀行は、当初シティー内のウォルブルック(Walbrook)に創設されたが、1734年に現在地に移転し、その後、次第に敷地を拡張して、現在に至っている。
英国の古典主義を代表する建築家であるサー・ジョン・ソーン(Sir John Soane:1753年ー1837年)は、1788年にロバート・テイラー(Robert Taylor:1714年ー1788年)の後を継いで、イングランド銀行の建築家に就任し、その後、1833年まで45年間にわたり、その任を務めた。

プリンシズストリート側からロスベリー通りを望む—
右手奥にサー・ジョン・ソーンの像が見える

その後、イングランド銀行が敷地を拡張する過程で、英国の建築家ハーバート・ベーカー(Herbert Baker:1862年ー1946年)によって、サー・ジョン・ソーンが設計したオリジナル部分はほとんど失われてしまい、「シティーにおける20世紀最大の建築上の罪(the greatest architectural crime, in the City of London, of the twentieth century)」と言われている。
その代わり、イングランド銀行の裏手ではあるが、ロスベリー通り(Lothbury)に面した建物の外壁内に、サー・ジョン・ソーンの像が彼の栄誉を称えるために設置されている。

サー・ジョン・ソーン像(その1)
サー・ジョン・ソーン像(その2)

1998年に制定されたイングランド銀行法(Bank of England Act 1998)により、イングランド銀行は、現在、以下の機能を有している。
(1)イングランドとウェールズにおける通貨発行権
(2)政府の銀行+「最後の貸し手」としての銀行のの銀行
(3)外国為替と金準備の管理
(4)政府の証券(国債)の登録
(5)政府統合基金の運営
イングランド銀行は、以前、銀行業界の規制・監督権も有していたが、同法に基づき、これは金融サービス機構(FSA)に移管されている。

プリンシズストリートからロスベリー通りへの
ショートカットの外壁にある装飾(その1)
プリンシズストリートからロスベリー通りへの
ショートカットの外壁にある装飾(その2)

アガサ・クリスティー作「百万ドル債券盗難事件(The Million Dollar Bond Robbery)」をベースにして、英国のTV会社 ITV1 が放映したポワロシリーズ「Agatha Christie's Poirot」は、アガサ・クリスティーの原作に概ね沿っているが、以下のような差異や追加が行われている。
(1)TV版では、フィリップ・リッジウェイ(Philip Ridgeway)とヴァヴァソア氏(Mr Vavasour)の血縁関係(原作では、甥と伯父の関係)は特に言及されていない。また、フィリップはヴァヴァソア氏の秘書エズミー・ダルリーシュ(Esmess Dalgleish)と婚約している設定となっている上、ギャンブルにのめり込んで、借金で首がまわらない状況に陥っている。
(2)原作では、ショー氏(Mr Shaw)がロンドン&スコティッシュ銀行(London and Scottish Bank)の支店長で、ヴァヴァソア氏が副支店長であるが、TV版では、立場が逆転して、ヴァヴァソア氏の方がショー氏の上司のようになっている。
(3)TV版では、元々、ショー氏が1百万ドルの自由公債をニューヨークへ運搬する任に就く予定で、フィリップはショー氏がニューヨークへ行けなくなった場合の代替要員である。朝の通勤途上、ショー氏が謎の赤い車に轢き殺されそうになったり、オフィスで飲んだ紅茶にストリキニーネが入っていて重態になったため、運搬の任がフィリップに回ってきたという流れになっている。
(4)原作では、1百万ドルの自由公債が盗難された後に、ポワロは事件の相談を受けているが、TV版では、ポワロとヘイスティングス大尉は、フィリップの護衛と1百万ドルの自由公債の盗難防止のため、彼と一緒にニューヨーク行きの汽船に乗船している。
(5)原作では、フィリップが乗船した汽船はリヴァプール(Liverpool)発ニューヨーク行きのオリンピア(Olympia)であるが、TV版では、クイーンメアリー(RMS Queen Mary)の処女航海(サザンプトン(Southampton)発ニューヨーク行き:1936年5月27日)が舞台となっている。
(6)ストーリーの重要な部分に該るが、原作では、フィリップが乗船したオリンピアでは、隣のキャビンに、メガネをかけた中年の男性が居て、航海中一歩も外に出なかったことになっている。しかし、TV版では、フィリップの隣のキャビンには、ヘイスティングス大尉も心引かれたミランダ・ブルックス(Miranda Brooks)と呼ばれる謎の女性が滞在していた。

0 件のコメント:

コメントを投稿