2015年6月13日土曜日

ロンドン ヴィクトリア駅(Victoria Station)

ウィルトンロード(Wilton Road)側に面したヴィクトリア駅の入口

サー・アーサー・コナン・ドイル作「最後の事件(The Final Problem)」の冒頭、ベーカーストリート221Bを突然訪れた犯罪界のナポレオンと呼ばれるジェイムズ・モリアーティー教授(Professor James Moriarty)に、自分から手を引くように告げられたシャーロック・ホームズは、これをキッパリと断る。そのため、ホームズはモリアーティー教授配下の者に命を狙われることになった。


1891年4月24日の昼間、オックスフォードストリート(Oxford Street)へ出かけたホームズであったが、最初は、ベンティンクストリート(Bentinck Street)とウェルベックストリート(Welbeck Street)の角で、突然暴走して来た二頭立て馬車に危うく轢き殺されそうになった。二度目は、ヴェアストリート(Vere Street)を歩いていると、ある家の屋根からレンガが落ちてきて、ホームズの足下で粉々に砕け散ったのであった。
スコットランドヤードがモリアーティー教授を含めた一味を一網打尽するまでの間、ホームズはジョン・ワトスンと一緒に欧州大陸へと身を隠すことにした。彼らはヴィクトリア駅(Victoria Station)から欧州大陸へ向かう計画をたてた。翌朝、ワトスンはホームズの指示に従って、行動を開始する。

ヴィクトリア駅の構内

翌日の朝、私はホームズの指示に忠実に従った。我々を待ち伏せしている馬車を避ける用心のために、ハンサム型馬車(二人乗り一頭立て二輪の辻馬車)を一台確保した。朝食後、私は直ぐにロウザーアーケードへ向けて出発し、道中全速力で走るよう、御者を急かした。アーケードの反対側には、黒いマントに身を包んだ非常にガッチリした体格の御者がブルーム型馬車(一頭立て四輪箱馬車)を停めて、私を待っていた。私が馬車に乗り込んだ瞬間、御者は馬に鞭を当て、ヴィクトリア駅へ向かって疾走した。ヴィクトリア駅で私が馬車から降りると、御者は馬車を返し、私の方を一瞥もしないで、再び走り去って行った。
ここまでのところは、全て非常にうまく事が運んだ。私の荷物は無事駅に到着していた。ホームズが指定した客車を見つけるのは全く難しくなかったし、客車の内で「予約済」と表示された客室はたった一つだけだったので、困ることはなかった。私の唯一の心配事は、ホームズが姿を見せないことだった。駅の時計は、我々の列車の発車時刻まであと7分を示した。私は旅行者や見送りの集団の中にホームズを探したが、彼の姿は影も形もなかったのである。

列車の発着ホーム
天井から吊り下げられている構内表示板

In the morning I obeyed Holmes's injunctions to the letter. A hansom was procured with such precaution as would prevent its being one which was placed ready for us, and I drove immediately after breakfast to the Lowther Arcade, through which I hurried at the top of my speed. A brougham was waiting with a very massive driver wrapped in a dark cloak, who, the instant that I had stepped in, whipped up the horse and rattled off to Victoria Station. On my alighting there he turned the carriage, and dashed away again without so much as a look in my direction.
So far all had gone admirably. My luggage was waiting for me, and I had no difficulty in finding the carriage which Holmes had indicated, the less so as it was the only one in the train which was marked 'Engaged'. My only source of anxiety now was the non-appearance of Holmes. The station clock marked only seven minutes from the time when we were due to start. In vain I searched among the groups of travellers and leave-takers for the little figure of my friend. There was no sign of him.

ターミナスプレイス(Terminus Place)側に面した駅ビル—
インフォメーションセンター等が入っている
手前では、2018年竣工を目指して、駅の改修工事が進められている
ヴィクトリア駅の正面入口—
手前は、ロンドン市内用バスが発着するバスターミナルになっている

ヴィクトリア駅(Victoria Station)はベルグラヴィア地区(Belgravia)内にあり、ロンドン市内ではウォータールー駅(Waterloo Station)に次いで2番目に列車の発着が多い駅である。1860年に建設された当初は、グローヴナーターミナス(Grosvenor Terminus)と呼ばれていたが、当時のヴィクトリア女王(Queen Victoria:1819年ー1901年)に因んで、現在の名前となったものと思われる。

ヴィクトリアストリート(Victoria Street)沿いに建つ
ヴィクトリアパレス劇場(Victoria Palace Theatre)—
映画でもヒットした「ビリー・エリオット(Billy Elliot—
日本題:リトルダンサー)の講演が行われている

当駅からは、ロンドン南部、サセックス州(Sussex)やサリー州(Surrey)等へ向かうサザンライン(Southern Line)、ロンドン南東部やケント州(Kent)等へ向かうサウスイースタンライン(Southeastern Line)、そして、ガトウィック空港(Gatwick Airport)へ向かうガトウィックエクスプレス(Gatwick Express)等が出ている。
ヴィクトリア駅の正面入口前は、ロンドン市内用バスが発着するバスターミナルになっており、長距離バスが発着するヴィクトリアコーチステーション(Victoria Coach Station)は駅の裏手にある。

ヴィクトリア駅の近くにあるロウワーグローヴナーガーデン
(Lower Grosvenor Garden)内に設置されているオブジェ

また、駅の下には地下鉄ヴィクトリア駅(Victoria Tube Station)があり、サークルライン(Circle Line)、ディストリクトライン(District Line)とヴィクトリアライン(Victoria Line)の3線が乗り入れている。

0 件のコメント:

コメントを投稿