2024年9月7日土曜日

ミス・マープルの世界<ジグソーパズル>(The World of Miss Marple )- その14B

ビル・ブラッグ氏Mr. Bill Braggが描く
ミス・マープルシリーズの長編第6作目である
「ポケットにライ麦を」の一場面


ビル・ブラッグ氏によるイラストには、

投資信託会社の社長であるレックス・フォーテスキューが、

オフィスにおいて、朝の紅茶を飲んだ後、急逝する前のシーンが描かれている。

床に伸びた影は、彼の個人秘書である

アイリーン・グローヴナー(Miss Irene Grosvenor)だと思われる。

Harper Collins Publishers 社から出版されている

「ポケットにライ麦を」のペーパーバック版の表紙には、

ビル・ブラッグ氏によるイラストが、

紅茶が入ったポットの形に切り取られているものが使用されている。


ロンドンにある投資信託会社の社長であるレックス・フォーテスキュー(Rex Fortescue)が、オフィスにおいて、朝の紅茶を飲んだ後、急逝したため、スコットランドヤードのニール警部(Inspector Neele)が、捜査に入った。


検死解剖の結果、レックス・フォーテスキューの体内から、イチイの木(yew tree)から抽出される毒性のアルカロイド(toxic alkaloid)であるタキシン(taxine)が見つかり、死因は、タキシンによる中毒であることが判明した。レックス・フォーテスキューは、朝食でとったマーマレードと一緒に、タキシンを摂取したものと思われた。

更に、レックス・フォーテスキューの着衣を調べたところ、不思議なことに、上着のポケットから、大量のライ麦(rye)が出てきたのである。


当然のことながら、スコットランドヤードによって、レックス・フォーテスキューの後妻であるアディール・フォーテスキュー(Adele  Fortescue)が、第一容疑者と見做された。

ケニア(Kenya)において結婚したばかりの次男のランスロット・ フォーテスキュー(Lancelot Fortescue - 愛称:ランス(Lance))と妻のパトリシア・フィーテスキュー(Patricia Fortescue - 愛称:パット(Pat))の二人は、レックス・フォーテスキューの招待に応じて、丁度、ケニアからロンドンへと向かっている最中で、「翌日、英国に帰国する。」という電報がパリから入ったので、警察が空港まで彼らを出迎えに行った。


ランスロットが、妻のパトリシアをロンドンに残して、サリー州(Surrey)ベイドンヒース(Baydon Heath)にあるフォーテスキュー家の邸宅イチイ荘(Yewtree Lodge)に到着した正にその日、義理の母親アディールが、青酸カリ(cyanide)が混入された紅茶を飲んで、死亡した。

更に、その数時間後、メイドのグラディス・マーティン(Gladys Martin)が、イチイ荘の庭において、絞殺死体で発見された。しかも、彼女の鼻には、洗濯バサミが付けられていたのである。


ニール警部は、ヘイ巡査部長(Sergeant Hay)と一緒に、捜査を進めるものの、残念ながら、何の進展も得られなかった。

そこへ、3件の殺人事件の記事を新聞で読んだミス・マープルが、イチイ荘を訪れる。不思議な縁で、亡くなったメイドのグラディスは、以前、マープルの家でメイドとして働いていたからである。


(37)マーマレードの瓶(marmalade jar)



投資信託会社の社長であるレックス・フォーテスキューは、事件当日の朝、自宅(イチイ荘)において、「ベーコン、煎り卵(スクランブルエッグ)、マーマレード付きのトーストとコーヒー」の朝食をとったが、彼が食べたマーマレードの瓶の中に、イチイの木から抽出された毒性のアルカロイドであるタキシンが、何者かによって、混入されていたのである。

タキシンが仕込まれたマーマレードの瓶は、イチイ荘の庭にある植え込みの中から発見される。何者かが、タキシンが仕込まれたマーマレードの瓶をハンカチに包んで、裏窓から外へ放ったと思われた。その代わりに、タキシンが仕込まれていないマーマレードの瓶が、元の場所に戻されていたのである。


(38)スコーンと蜂蜜(scone with honey)



タキシンで毒殺されたレックス・フォーテスキューの次男であるランスロット・ フォーテスキューがフォーテスキュー家の邸宅であるイチイ荘に到着した後、図書室において、彼は、アディール・フォーテスキュー(レックス・フォーテスキューの後妻)、ジェニファー・フォーテスキュー(Jennifer Fortescue:レックス・フォーテスキューの長男であるパーシヴァル・フォーテスキュー(Percival Fortescue)の妻)とエレイヌ・フォーテスキュー(Elaine Fortescue:レックス・フォーテスキューの娘)の3人と一緒に、午後のお茶をとる。

暫くして、ランスロット・ フォーテスキューは、エフィー・ラムズボトム(Miss Effie Ramsbottom:レックス・フォーテスキューの先妻であるエルヴァイラ(Elvira)の姉)に挨拶をするため、また、ジェニファー・フォーテスキューは、手紙の続きを書くために、図書室を後にする。その後、エレイヌフォーテスキューも、図書室を去る。

午後6時少し前に、フォーテスキュー家の家政婦であるメアリー・ダヴ(Mary Dove)が図書室の様子を見に行ったところ、アディール・フォーテスキューが、ソファーのクッションに首を埋めたまま、死んでいるのが発見される。食べかけのスコーンが、蜂蜜を塗ったまま、彼女の側におちていた。半分残っていた紅茶を調べたところ、シアン化合物(青酸カリ)が仕込まれていたのである。


(39)黒鶫<クロツグミ>(blackbird)



レックス・フォーテスキューが毒殺される1ー2ヶ月前、彼の書斎の机の上に、黒鶫の死骸が4羽置いてある出来事が発生している。黒鶫の死骸は、庭師が撃って、軒に吊し乾していたものであった。庭師の子供による悪戯と疑われたが、本人は強く否定した。

また、つい最近の日曜日の晩餐で、コールドパイが一つ余った。それを戸棚に収っておいたところ、誰かがそのパイの皮を除け、中の肉やハムをきれいに取り出した後、庭師の小屋から盗み出した黒鶫の死骸が入れられていたと言う出来事も発生している。


          

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