2024年8月20日火曜日

ミス・マープルの世界<ジグソーパズル>(The World of Miss Marple )- その8

英国の Orion Publishing Group Ltd. から2024年に発行されている「ミス・マープルの世界(The World of Miss Marple)」と言うジグソーパズル内に散りばめられているミス・ジェイン・マープル(Miss Jane Marple)シリーズの登場人物や各作品に関連した68個の手掛かりについて、前回に引き続き、順番に紹介していきたい。


(15)サー・ヘンリー・クリザリング(Sir Henry Clithering)


ジズソーパズルのやや左上の位置で
右手に紅茶カップを、そして、左手に受け皿を持って、
歩いている背広姿の男性が、サー・ヘンリー・クリザ・リングである。

サー・ヘンリー・クリザリングは、スコットランドヤード(ロンドン警視庁)の元警視総監(retired head of Scotland Yard)でミス・マープルの友人でもある。

サー・ヘンリー・クリザリングの登場作品は、以下の通り。

<長編>

*「書斎の死体(The Body in the Library)」(1942年)

*「予告殺人(A Murder is Announced)」(1950年)


<短編>

*「火曜クラブ / 火曜ナイトクラブ(The Tuesday Night Club)」(1927年)→ 実質的には、本編が、ミス・マープルの初登場作品である。

*「アスタルテの祠 / アスターテの祠(The Idol House of Astarte)」(1928年)

*「金塊事件 / 金塊(Ingots of Gold)」(1928年)

*「舗道の血痕 / 血に染まった敷石(The Bloodstained Pavement)」(1928年)

*「動機対機会(Motive v Opportunity)」(1928年)

*「聖ペテロの指のあと / 聖ペテロの指の跡(The Thumb Mark of St Peter)」(1928年)

*「青いゼラニウム / 青いジェラニウム(The Blue Geranium)」(1929年)

*「二人の老嬢 / お相手役(The Companion)」(1930年)

*「四人の容疑者(The Four Suspects)」(1930年)

*「クリスマスの悲劇(A Christmas Tragedy)」(1930年)

*「毒草 / 死の草(The Herb of Death)」(1930年)

*「バンガロー事件(The Affair at the Bungalow)」(1930年)

*「溺死(Death by Drowning)」 (1931年)


サー・ヘンリー・クリザリング自身は登場しないが、ミス・マープルシリーズの長編第6作目「ポケットにライ麦を(A Pocket Full of Rye)」(1953年)の終盤において、ミス・マープルは、ニール警部(Inspector Neele)に対して、「総監のサー・ヘンリー・クリザリングは、昔からの私の友人でしてね。」と話している。


サー・ヘンリー・クリザリングは、ミス・マープルシリーズの長編第4作目「予告殺人」(1950年)と長編第7作目「パディントン発4時50分(4:50 from Paddington)」(1957年)、そして、短編「教会で死んだ男(Sanctuary)」(1954年)に登場するスコットランドヤード犯罪捜査課(CID)のダーモット・エリック・クラドック警部(Inspector Dermot Eric Craddock)の名付け親である。なお、ダーモット・エリック・クラドック警部は、ミス・マープルシリーズの長編第8作目「鏡は横にひび割れて(Mirror Crack’d from Side to Side)」(1962年)に登場した際には、主任警部(Chief Inspector)に昇進している。


ミス・マープルシリーズの長編第9作目「カリブ海の秘密(A Carribean Mystery)」において、前の冬に罹患した肺炎のため、ここのところ、体調を崩していたミス・マープルは、甥のレイモンド・ウェスト(Raymond West → 2024年8月12日付ブログで紹介済)の手配により、カリブ海のサントノーレ島(St. Honore)にあるリゾートホテル「ゴールデンパーム(Golden Palm)」で転地療養中、殺人事件に遭遇する。いつもとは異なり、味方が一人も居ない状況下に置かれたミス・マープルは、サー・ヘンリー・クリザリングやダーモット・エリック・クラドック警部のことを懐かしく思い出している。


(16)スラック警部(Inspector Slack)


ジズソーパズルのやや右上の位置で
右手を右頬に当てて、
ヘイドック医師(Dr. Haydock → 2024年8月18日付ブログで紹介済)と
話をしている背広姿の男性が、スラック警部である。

スラック警部は、ラドフォードシャー州(Radfordshire)警察の本部長(Chief Constable)を務めるメルチェット大佐(Colonel Melchett)の部下である。


ミス・マープルシリーズ長編第1作目に該る「牧師館の殺人(The Murder at the Vicarage → 2022年10月30日 / 10月31日付ブログで紹介済)」(1930年)において、ロンドン郊外のセントメアリーミード(St. Mary Mead)という小さな村にある英国国教会の司祭(vicar)で、物語の語り手を務めるレナード・クレメント牧師(Reverend Leonard Clement → 2024年8月18日付ブログで紹介済)は、スラック警部のことを、


・彼ほど、怠慢(slack)と言う名が体を表さないように頑張っている人間は居ないだろう。浅黒い肌の警部は、一瞬たりともじっとしていることがなく、エネルギッシュに動き回り、黒い目を絶えず光らせていた。彼の態度は、非常に無礼で居丈高だった。

・彼は、非常に不快で、訳もなく無礼だった。

・彼は、礼儀と言う社交術とは無縁だった。


と、手厳しく評している。


また、ヘイドック医師も、レナード・クレメント牧師を前にして、スラック警部を「自惚れや」と呼んでおり、これもまた手厳しい。


ただし、スラック警部の上司であるメルチェット大佐は、レナード・クレメント牧師に対して、「スラックは、頭の良い男だ。非常に頭が切れる。例えれば、フェレットみたいな男ですよ。いずれ、事件の真相を嗅ぎ付けるでしょう。これまでにも、いつくか、良い成果を挙げており、今回が彼の代表的な事件となるだろう。」と述べており、スラック警部のことを高く評価している。一方で、レナード・クレメント牧師は、スラック警部に対して、強い反感を抱いているので、メルチェット大佐の評価を聞いて、正直、彼は快く思えなかった。


スラック警部の登場作品は、以下の通り。


<長編>

*「牧師館の殺人(The Murder at the Vicarage)」(1930年)

*「書斎の死体」(1942年)


          

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