2021年5月29日土曜日

フィリップ・ホセ・ファーマー作「シャーロック・ホームズの更なる冒険 / 無双の貴族」(The further adventures of Sherlock Holmes / The Peerless Peer by Philip Jose Farmer) - その3

「ストランドマガジン(The Strand Magazine)」の
1917年9月号に掲載された
コナン・ドイル作「最後の挨拶」の挿絵(その1) -
ドイツ人のスパイであるフォン・ボルク(Von Bork)に情報を提供する
アイルランド系米国人のスパイであるアルタモント(Altamont)は、
背後からフォン・ボルクにクロロホルムを嗅がせて眠らせると、
彼を縛り上げた。
アルタモントは、シャーロック・ホームズが変装した姿であった。


読後の私的評価(満点=5.0)


(1)事件や背景の設定について ☆☆☆半(3.5)

シャーロック・ホームズとジョン・ワトスンの敵役には、サー・アーサー・イグナティウス・コナン・ドイル(Sir Arthur Ignatius Conan Doyle:1859年ー1930年)の原作「最後の挨拶(His Last Bow)」(1917年)に登場したフォン・ボルク(Von Bork)を、また、彼らの味方には、米国の小説家エドガー・ライス・バローズ(Edgar Rice Burroughs:1875年ー1950年)が創造したキャラクターであるターザン(Tarzan - 本名:グレイストーク 卿ジョン・クレイトン(John Clayton, Lord Greystoke))を配して、アフリカを舞台に、フォン・ボルクが英国から奪ったある重要な化学式を、ホームズとワトスンが取り戻すべく、奮闘する。


(2)物語の展開について ☆☆半(2.5)

マイクロフト・ホームズ(Mycroft Holmes)の指示に基づいて、シャーロック・ホームズとジョン・ワトスンの二人は、英国を含む連合軍が手配した飛行機で、英国からフランスのマルセイユを経由して、エジプトのカイロへと向かう。本作品は、実質的には、110ページ程しかない長さであるが、ホームズとワトスンが機上でドイツ人のスパイに命を狙われたり、あるいは、嵐の中でドイツ軍のツェッペリン飛行船(Zeppelin)に遭遇して戦闘に巻き込まれたる等の過程に翻弄され、ストーリー全体の半分以上が費やされ、ホームズ達が活躍できる余地がほとんどない。また、本作品のもう一人の主人公であるターザンが登場する場面は、ストーリー後半のみで、彼が活躍する場面が非常に少なく、残念である。そういった意味では、ホームズとワトスンがターザンと出会うまでに、やや時間をかけ過ぎたきらいがあり、肝心のストーリーが駆け足になってしまった気がする。


(3)ホームズ/ワトスンの活躍について ☆☆半(2.5)

本作品における舞台設定の時点(1916年)で、ホームズとワトスンの二人は、既に60歳を過ぎており、本作品のような冒険活劇物風の話で、彼らを活躍させるのは、若干無理があるように思える。実際、ストーリーの前半において、彼らの活躍をほとんど描けていない。コナン・ドイル原作の「最後の挨拶」のようなスパイ物に特化するのであれば、もっと面白かったのではないか?ただし、その場合、本作品のもう一人の主人公であるターザンは、ホームズとワトスンの二人にとって、やや異質であり、彼の出番は不要になってしまう。


(4)総合評価 ☆☆半(2.5)

ストーリーとしては、かなり短めであったこともあるが、非常に読み易かったものの、「最後の挨拶」の続編となるスパイ物とターザンという冒険活劇物という異質な二つのものを組み合わせようとしたところに、物語の設定上、最初からやや無理があったように感じられる、既に60歳を過ぎているし、フランス経由、英国からエジプトへと向かう途中、二度も機上で大変な目に遭っているため、仕方はないが、ホームズが偏屈な老人のようになっていて、我々が考えるホームズのイメージにあまり合致していない。


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