2020年8月16日日曜日

ロンドン ロングヤード(Long Yard) / カリオストロストリート(Cagliostro Street)の候補地−その1

ロングヤードの近くにある
グレートオーモンドストリート(東側)の両側に建つ住宅街(その1)

米国のペンシルヴェニア州(Pennsylvania)に出生して、英国人のクラリス・クルーヴス(Clarice Cleaves)との結婚後、1932年から1946年にかけて英国のブリストル(Bristol)に居を構えていた米国の推理作家で、「不可能犯罪の巨匠」とも呼ばれているジョン・ディクスン・カー(John Dickson Carr:1906年ー1977年)が1935年に発表した長編で、ギディオン・フェル博士(Dr. Gideon Fell)が登場するシリーズ第6作目に該る「三つの棺(The Three Coffins 英題: The Hollow Man→2020年5月3日 / 5月16日 / 5月23日 / 6月13日 / 6月20日付ブログで紹介済)」では、2月9日(土)の午後10時10分頃、シャルル・ヴェルネ・グリモー教授(Professor Charles Vernet Grimaud)邸の最上階(3階)にある書斎内において、教授が拳銃で胸を撃たれて、瀕死の状態で倒れているのが発見される。書斎は密室状態で、教授と一緒に書斎内に居た仮面を付けた謎の男の姿は、完全に消え失せていた。また、グリモー邸の周囲には、午後9時半頃に降り止んだ雪が積もっていたが、雪の上には、謎の男が逃げた足跡は、全くなかったのである。


ジョン・ディクスン・カーの原作では、グリモー邸以外に、ラッセルスクエア(Russell Square)を挟んで、同スクエアの西側に建つグリモー邸とは反対側にあるカリオストロストリート(Cagliostro Street)の路上において、もう一つの事件が発生する。
2月6日(水)の晩、大英博物館(British Museum→2014年5月26日付ブログで紹介済)の近くのミュージアムストリート(Museum Street)沿いにあるパブ「ウォーリック タヴァーン(Warwick Tavern)」において、シャルル・グリモー教授達の話に突然割り込んできて、教授を脅した奇術師のピエール・フレイ(Pierre Fley)が、カリオストロストリートの真ん中辺りで、拳銃で射殺されたのである。ピエール・フレイは、カリオストロストリート2B(2B Cagliostro Street)に住んでいた。

グレートオーモンドストリート(東側)の両側に建つ住宅街(その2)

カリオストロストリートは、先が行き止まりの200ヤード程の通りで、バーミンガム(Birmingham)からやって来たジェス・ショート(Jesse Short)とR・G・ブラックウィン(R. G. Blackwin)の二人が、通りの奥に住む友人のところを訪ねようとしていた。また、ヘンリー・ウィザース巡査(PC Henry Withers)が巡回中で、ちょうどカリオストロストリートの入口に達した時だった。
「二発目は、お前にだ。(The Second Bullet is for you.)」という声とともに、銃声が鳴り響いた。カリオストロストリートの奥へと向かっていたジェス・ショートとR・G・ブラックウィンが通りの入口の方へ振り返り、ヘンリー・ウィザース巡査が通りの入口の方から駆け寄って来た。カリオストロストリートの真ん中、宝石商のショーウィンドの灯りに照らされた路上に、ピエール・フレイが倒れていたのである。ヘンリー・ウィザース巡査がピエール・フレイの身体を調べたところ、ピエール・フレイは、背中を至近距離から拳銃で撃たれて、死亡していた。通りは暗かったものの、現場の路上には、ジェス・ショート / R・G・ブラックウィンの二人とヘンリー・ウィザース巡査以外には、誰も居なかった。また、現場は、身を隠せる建物から数メートルも離れており、銃声が鳴り響いてから、彼らが現場に駆け付ける間に、身を隠せる時間的な余裕はなかった。目撃者である彼らによると、午後10時25分とのことだった。

グレートオーモンドストリート(東側)の両側に
建つ住宅街(その3)

司法解剖の結果、ピエール・フレイの背中の致命傷は、自分で拳銃を撃つには無理な場所にあり、「自殺」とは考えられず、「他殺」と判断せざるを得なかった。ところが、ピエール・フレイの殺害現場であるカリオストロストリートの路上で、ジェス・ショート / R・G・ブラックウィンの二人とヘンリー・ウィザース巡査の誰も、ピエール・フレイを拳銃で撃った加害者を見ていない上に、現場周辺の雪の上には、被害者であるピエール・フレイ以外の足跡は全くなかったのである。また、ピエール・フレイの傍らに落ちていた拳銃は、グリモー邸において、シャルル・グリモー教授を射殺した凶器であると鑑定された。

グレートオーモンドストリート(東側)の両側に
建つ住宅街(その4)

ジェス・ショート / R・G・ブラックウィンの二人とヘンリー・ウィザース巡査に挟まれたカリオストロストリートの路上において、犯人は、被害者であるピエール・フレイの背中を至近距離から拳銃で撃った後、どのようにして姿を隠したのだろうか?グリモー邸の書斎において発生した密室状況の事件に加えて、カリオストロストリートの路上における事件も、不可能状況と言えた。

グレートオーモンドストリート(東側)の両側に建つ住宅街(その5)

奇術師のピエール・フレイが拳銃で射殺されたカリオストロストリートは、一体どこにあるのか?
現在の住所表記上、残念ながら、カリオストロストリートは存在していない。
それでは、現在の住所表記上、どの通りがカリオストロストリートの候補地として最適なのかについて、ジョン・ディクスン・カーの原作から読み解きたいと思う。

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