2020年6月14日日曜日

F・W・クロフツ作「ホッグズ・バックの怪事件」(The Hog’s Back Mystery by Freeman Wills Crofts)

大英図書館(British Library)が発行する
British Library Crime Classics の一つに加えられている
F・W・クロフツ作「ホッグズ・バックの怪事件」の表紙

「ホッグズ・バックの怪事件(The Hog’s Back Mystery)」は、英国の推理作家であるフリーマン・ウィルス・クロフツ(Freeman Wills Crofts:1879年ー1957年)が1933年に発表した推理小説で、スコットランドヤードのジョーゼフ・フレンチ警部(Inspector Joseph French)(後に、主席警部→警視→主席警視に昇進)が登場するシリーズ10作目の長編に該る。


物語は、英国サリー州(Surrey)ノースダウンズ(North Downs)内にあるホッグズバック(Hog’s Back)という場所で始まる。なお、ホッグズバックの東側には、ギルフォード(Guildford)が、そして、西側には、ファーナム(Farnham)が所在している。

ホッグズバック内にある「St. Kilda」というコテージには、引退した医師のジェイムズ・アール(Dr. James Earle)と彼の妻のジュリア・アール(Julia Earle)の二人が、4年前から住んでいた。
ジュリアの姉で、文筆業で生計を立てているマジョリー・ローズ(Majorie Lawes)は、冬はエジプト、春と秋はフランスのリヴィエラ、そして、夏はスイスかイタリア北部と、生活の拠点を転々としていたが、今回、英国で、つまり、ホッグズバックにおいて、2~3週間を過ごすこととなった。その日程に合わせるように、ジュリア・アールは、学生時代の友人で、現在、バース(Bath)に住むウルスラ・ストーン(Ursula Stone)を、ホッグズバックへと招待したのである。

ジュリア・アールとマジョリー・ローズの二人が用事で外出した日曜日、ウルスラ・ストーンは、「The Red Cottage」というコテージに住む旧友のアリス・キャンピオン(Alice Campion)を訪ねた。
ウルスラ・ストーンが、アリス・キャンピオンと彼女の兄で、ジェイムズ・アールと共同で診療所を営むハワード・キャンピオン医師(Dr. Howard Campion)に車で送ってもらい、「St. Kilda」へと戻ると、ジュリア・アールが戸口から出て来て、「暫く前から、夫のジェイムズの姿が見当たらない。」と心配していた。

ジュリア・アールとマジョリー・ローズの話によると、午後8時頃から、ジェイムズを含めた三人で夕食を食べ始め、食べ終わったのが、午後8時半頃。ジュリアとマジョリーの二人が皿洗いを済ませた後、マジョリーが居間を覗くと、ジェイムズは暖炉の側で椅子にくつろいで新聞を読んでいた。ところが、その2~3分後に、マジョリーが居間を再度覗くと、ジェイムズの姿はなく、椅子の上に新聞が置かれたままだった。心配したジュリアとマジョリーの二人がコテージ内を見て回ったが、ジェイムズはどこにも居なかったのである。全く説明がつかない謎の失踪だった。

地元警察からの要請を受けて、スコットランドヤードのフレンチ警部が現地へと派遣される。
ジェイムズ・アールは、何故、失踪したのだろうか?誘拐なのか、それとも、数日前に彼が密かに会っていた女性と一緒に駆け落ちしたのか?
フレンチ警部が捜査を進めるが、また、謎の失踪者が...

「ホッグズ・バックの怪事件」の舞台となる
ホッグズ・バックの地図

作者のフリーマン・ウィルス・クロフツは、1879年にアイルランド島のダブリンに出生。英国陸軍の軍医だった地父親の死後、母親の再婚相手が住むアイルランド島の北東部アルスター地方ダウン州で育つ。
その後、F・W・クロフツは、当地で鉄道義姉となるが、40歳(1919年)の時に病で入院。その療養中に構想した処女作「樽(The Cask)」を1920年に発表、好評を博して、推理作家への仲間入りを果たしたである。「樽」は、F・W・クロフツの処女作であるとともに、彼の代表作の一つである推理小説となっている。また、同作は、推理小説におけるアリバイ崩しを確立させたとも評されている。
F・W・クロフツは、5作目の長編「フレンチ警部最大の事件(Inspector French’s Greatest Case)」(1925年)から、シリーズ探偵として、フレンチ警部を起用し、以降の全長編にフレンチ警部が登場する。

なお、「ホッグズ・バックの怪事件」は、1983年に東京創元社の創元推理文庫から初版が発行されているが、残念ながら、現在、「在庫なし」の状態である。

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